財務諸表から読み解く企業分析 住友電気工業
住友電気工業は、電線に強みをもち、国内首位の企業です。
特にワイヤーハーネスは、世界トップ級です。
ちなみにワイヤーハーネスとは、機器の動力となる電力と機器制御を行う電気信号を伝える役割をもった部品の集合体です。
具体的には、電気を伝える電線と周辺機器に接続して電気を伝える端子やコネクタを組み立てたものです。
身近な例でいうと、自動車のボンネットを開けるとワイヤーハーネスだらけなのがわかります。
それだけ私たちの生活に欠かせない電線を生産している企業となります。
ちなみに電線は銅から作られ、銅電線の製造技術をもとにケーブルやワイヤーに活用されています。
事業は5つあり、
①環境エネルギー
②情報通信
③自動車
④エレクトロニクス
⑤産業素材
①環境エネルギー
各国で再生エネルギーの需要が増え、電気自動車も普及していく中で、環境エネルギーに関する住友電気工業の技術が必要とされています。
②情報通信
AI活用の増加やデータセンタの大型化、ネットワーク高速化のカギとなる5G時代の到来により、こうした需要に応えていきたいとしています。
③自動車
CASEが加速的に進展していく中で、自動車業界は変革期を迎えており、その中でモビリティの進化に貢献していきたいとしています。
ちなみにCASEとは、
C : Connected(つながる)
A : Autonomous(自動運転)
S : Shared(シェアリング)
E : Electric(電動化)
それぞれの頭文字をとったものです。
④エレクトロニクス
ニーズが増えているモバイル端末、自動車、航空機器のさらなる進化を支えるとしています。
⑤産業素材
産業や社会インフラを支えるために、高性能・高機能製品のグローバルサプライヤーを目指すとしています。
まさに住友電気工業は、我々の生活やインフラを支えている重要な企業といえます。
こういった重要な企業の財務諸表はどうなっているのでしょうか。
まずは、貸借対照表から確認していきます。
2024年3月期の貸借対照表のイメージ図は下図の通りです。
見ての通り、盤石な財務状況です。
負債が少なく、流動資産>流動負債+固定負債というすばらしい財務状況です。
負債が少ないということは、逆に純資産が多いということです。
つまり他人から借りてくる負債である他人資本は少なく、自己資本が充実している状況です。
これだけ財務状況がよいと業績もよい状況と想像できます。
それでは次に損益計算書を見ていきます。
まず売上高です。
順調に売り上げを拡大していっています。
海外比率を高めていって、そのグローバル化が好調要因です。
売上の内訳も確認してみます。
セグメント(事業)別の売上は下の表のとおりです。
自動車が特筆して高い構成率です。
電気自動車の増加や自動運転技術の向上に伴い、さらに売上を伸ばす可能性があると思います。
続いて、企業の稼ぐ力を示す経常利益です。
こちらも順調に右肩上がりに伸びています。
最後に当期純利益はどうなっているでしょうか。
こちらも確実に純利益を増加させています。
社会のニーズにしっかりと応え、経営も健全に行われている証拠だと思います。
最後にどれだけ自己資本のみを活用し利益を出しているのか、自己資本利益率を確認してみます。
業種にもよりますが、一般的に8%を超えるのが理想とされています。
確実に効率的に自己資本を活用し、利益を生み出していることがわかります。
続いて、現金のみに焦点をあてたキャッシュフローを見ていきます。
2020年の財務キャッシュフローは数値が小さすぎて、表に表れていませんが(赤丸部分)、-1,277(百万円)となっています。
2022年だけイレギュラーですが、他の年度は
営業キャッシュフロー:プラス
投資キャッシュフロー:マイナス
財務キャッシュフロー:マイナス
と理想のキャッシュフローとなっています。
本業でしっかりと儲け、成長のために投資をし、借りた借入金をしっかりと返済しているという成長企業のあるべき姿です。
最後に「中期経営計画2025」では、成長をけん引するエネルギー、情報通信、モビリティの注力3分野において、脱炭素化社会の進展、情報社会の進化で広がる事業機会を捉えて成長していきたいとしています。