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企業分析 財務諸表から読み解く任天堂

今回は、恐らく誰もが知っている任天堂について、財務諸表から企業分析を行いたいと思います。
言うまでもないとは思いますが、任天堂について簡単に説明をします。

それでは、財務諸表を読み解いていきます。
対象としたのは、2018年~2022年分の財務諸表と2023年第3四半期までの財務諸表です。
初めに基本的な用語について、資料を用意しましたので、必要な方はご参照下さい。



それでは、まず貸借対照表を見ていきます。

2018年からの貸借対照表ですが、順調に資産が増加しています。
この要因として、純資産が順調に伸びたことが主な要因です。
一方、負債は資産の伸びに比べ、微増となっています。

これで分かる通り、純資産>負債の財務状況で、超健全な財務体質となっています。

では、実際に2021年と2022年の貸借対照表の数字を見ていきましょう。

流動資産>固定資産の状況で、かつ固定資産536,172(百万円)に対し、流動資産は、2,126,212(百万円)とほぼ4倍となっています。
かなりの現金及び預金が資産に計上されており、このあたりからも任天堂の事業・財務の強さが伺えます。

続いて、負債を見ていきます。
先程グラフを見て頂きましたが、資産に比べ、だいぶ規模は小さい状況です。

詳細を見て頂くと分かるのですが、実は任天堂は、有利子負債などの外部からの資金調達をしていないのです。
これは、この後純資産を見て頂くと分かるのですが、内部留保が潤沢にあるため、資金を純資産から運用しているのです。

これは、本当に驚くべき財務状況です。

では、純資産はどうなっているのでしょうか。

利益剰余金をご確認ください。
過去の利益の積み重ねが、ここに表れています。
2022年3月時点で、2,198,706(百万円)あることが見て取れます。
グラフでも一目瞭然でしたが、負債をはるかに超える利益剰余金を蓄えています。

以上、貸借対照表から、いかに任天堂が超健全な財務体質かがお分かり頂けたかと思います。

では、稼ぐ力の秘密はどこにあるのでしょうか。
次に、損益計算書を通じて、その秘密を探っていきましょう。

コロナウィルスの影響があったにも関わらず、2018年~2021年までの売上高は、順調に伸びていました。
しかし、2022年に陰りが見られました。

任天堂といえど、やはりこのコロナウィルスの影響による半導体部品の供給不足により、売上高が減少しました。

続いて、先程触れた利益について見ていきます。

本業の儲けである営業利益、経常的な儲けである経常利益も2021年まで順調に伸びていました。
2022年は、売上高減少に伴い、それぞれ減少しましたが、任天堂の強い収益力が垣間見えた部分でもありました。

注目は、点線の丸印です。
営業利益が減少していますが、経常利益が盛り返しています。
そのおかげで、当期純利益が前期と比べ、ほぼ同水準となっています。

これはなぜなのでしょうか。
実際に数値を見ていきましょう。

経常利益に反映される営業外利益が、主な要因です。
この部分は、任天堂の巧みな経営が見て取れます。
ここも任天堂の稼ぐ力の強さを表していると思われます。

では、次にキャッシュフロー計算書を見ていきましょう。
タイプ別キャッシュフロー計算書の資料を用意しましたので、必要な方はご参照下さい。

それでは、2018年から2022年までのキャッシュフロー計算書の推移をご覧ください。

2022年は、イレギュラーというと語弊がありますが、先に示した3種類のタイプに当てはまらない状態となりました。

実際に数値を見ていきましょう。
まずは、営業キャッシュフローからです。

前期に比べ、支出が増えたため、営業キャッシュフローは減少しました。

続いて、投資キャッシュフローです。

内容を見ると、投資による売却益が結果として投資キャッシュフローをプラスにしました。

最後に、財務キャッシュフローを見てみます。

先にも触れた通り、借入は行っていないため、財務キャッシュフローの支出増加は返済ではなく、自己株式取得や配当金の支払いによるものです。

財務キャッシュフローは、ここ数年に比べ支出が増加しましたが、それを上回る営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの増加で、結果として現金及び現金同等物の期末残高は、前期に比べ、増加しました。

以上、キャッシュフロー計算書を見てきましたが、
営業キャッシュフローは、プラス、
投資キャッシュフローもプラス、
財務キャッシュフローは、マイナスでした。

この場合、通常は、営業キャッシュフローによる現金が不足しているため、投資キャッシュフローによって現金を確保し、それらを財務キャッシュフローによって、借入を返済するというのが、通常のパターンです。

しかし、任天堂は借入を行っていないため、通常のパターンには当てはまらない特殊な結果となりました。

では、最後に2023年第3四半期の進捗を見ていきましょう。
直近の財務状況は、どうなっているのでしょうか。

資産、純資産は順調に伸びているようです。

では、損益計算書はどうでしょうか。

現状、まだコロナウィルスの影響による半導体部品の供給不足に悩まされていることが分かります。

そのため、2023円3月決算の着地予測は、下方修正となりました。

2023年第3四半期 決算説明資料より引用

これが、そのまま予想通り着地するのか、それとも半導体部品の供給不足が解消され、見込みを上回るのか、半導体4月が間近となり、もうまもなく任天堂の決算が発表されます。

以上、財務諸表から任天堂を読み解いてきました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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