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光の温かみの秘密|LED電球と白熱球の違い


照明の色温度の違いは気にしよう。

若手スタッフと一緒にクライアントのところへ打ち合わせにいった時のこと。

自社で設計したそのオフィスのエントランスには、サインを当てこむダウンライトと、ロゴの形状を装飾にした壁面の間接照明、2種類の照明器具が設定されています。

この記事のヘッダー画像がそれです。
この2種類の照明器具を選定するとき、どちらも同じ色温度であることを確認して採用したのですが、実際に設置してみると、微妙に色温度が違っていました。

サインを照明している方が、若干赤味が強くみえませんか?

数値上は同じだけど、違って見える。
クレームを出して器具交換をし、色温度を揃えたかったところですが、それぞれの照明器具を製造しているメーカーが別であったため、それは叶いませんでした。

クライアントに引き渡し時に細かく説明したところ、目くじらを立てるほど気になるものでもないし、合わせることが難しいのであればこのままで仕方がないとフィードバックを頂いたので、そのままの状態になています。

このような経緯をスタッフに説明し、
「微妙に違うやろ?この違いを気持ち悪いと思わなあかんで」
と先輩らしくのたまいました。

それと同時に「昔は色温度が同じやのに違った色に見えるなんてことはなかってんけどなぁ。」とつぶやいた。

その原因は何だろう?
照明の光源が近年、白熱からLEDに変わったことを引き合いにざっくり説明したところ、「そういったところまで考えたことがなかった。」という反応がありました。

なるほど、今の20代の人たちには、LED照明が主流だし、インテリアデザイナーを目指す人でも、照明に深く興味を持たない限りこういった知識は得られないのか。

自分の感覚では「光」とは温かさの象徴であったのに、LEDの普及とともにその感覚が失われてきているようで少し寂しさを覚えました。

熱が生み出す光を知らない世代に、あたたかい光とはどういうものなのかを伝えるのは難しそうです。

しかし、「昔は良かったんだぜ」と年寄りが言う懐古主義とは違い、人間の根源的な感覚の違いの話だと思ったので、LED電球と白熱電球の違いを解説する記事を書く次第です。

いつもながら前置きが長くなりましたが、以下に解説いたします。


1. LED電球の仕組み


LEDは英語の"Light Emitting Diode"(発光ダイオード)の略で、半導体を使って光を出します。

1993年に中村修二氏が青色LEDを発明するまで、一般照明の分野でLEDが採用されることはありませんでした。

それはなぜかというと、青色LEDが発明されるまでは、赤と緑の光を発するLEDしかなかったからです。

白色の光を作るには、赤(R)・緑(G)・青(B)の3色の光が必要です。
青色LEDが発明されるまでは、そのうちの1色が欠けた状態でしたが、発明がなされたことで、照明器具への展開ができるようになった訳です。

左は光の3原色の加算混合、右はインクの3原色、減算混合。
光は3色混ぜると白になり、インクは(光でない色は)3色混ぜると原理的には黒になる。


青色LEDの発明といういう技術革新には、特許にまつわる様々なエピソードがあったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。

当時中村修二氏が勤務していた会社が特許の権利を保有していたため、発明者である本人には当初十分な利益が還元されない状況がありました。(当時、報奨金は2万円だったとどこかの記事で見た記憶があります。安すぎる。)

この問題はその後の訴訟を経て、発明者の権利や特許制度に関する議論を巻き起こしました。

特許の権利が正しく発明者に還元されることは、ものづくりのモチベーションを高め、さらなる技術革新につながると思います

私たちデザイナーも同様に、クリエイティブな仕事の成果が正当に評価されることで、より高いレベルの作品を生み出せる環境が得られるのではないかと、この出来事を通して感じました。

本筋から外れたので戻します。


2.白熱電球の仕組み

白熱電球は、細い金属線(フィラメント)を高温に熱して得られる光を利用しています。

この時の温度が高いほど光は白っぽく、低いほど赤っぽい光になります。

白熱電球の光は実際に「熱」を伴うので、私たちが火や太陽のような自然な光だと感じる理由の一つです。


3. 色温度って何?

冒頭から出てくる用語「色温度」についても説明しておきます。
色温度とは、光の色を表す数字で、単位はケルビン(K)です。

  • 白熱電球は約2700K(暖かい黄色っぽい光)

  • ハロゲン電球は約3000K(黄色〜少し白っぽい光)

  • 蛍光灯は約3000K〜6500K(少し白っぽい光から少し青っぽい光)

  • 昼の空は約5500K~7500K(白〜青っぽい光)

  • 晴天の青空は10000K(青い光)

数値が大きいほど、暖色から寒色になるという指標です。


4. LED電球の色温度が、同じ数値でも違って見える理由


冒頭の話の回答です。
LED電球の仕組みの項で、光の三原色の話をしましたが、これが回答を導く大きなヒントです。

白熱電球やハロゲン球などは、入力された電流に、電熱線や封入されたガスが反応して生まれる熱エネルギーが光となりますが、LED電球は、3色の光の強度を「調整」して色を「つくって」います。(※)

※三原色から調色する方法とは別に、蛍光体方式という青色LEDの光を蛍光体で変換して白い光を作る方法もある。

つまり「この金属線が(あるいはガスが)何度になるときに発する光」というような、定性的な光ではなく、色温度〇〇KというのはRGBそれぞれの数値がこれくらいだ、というように開発する人の手で決める数値の組み合わせなので、同じ指標をターゲットにしても、人によって(会社の方針によって)若干の差異が生まれる、ということなのです。

5. 白熱電球に温かみを感じる理由

一般的に「温かみ」を感じる色温度というのは2700K〜3000Kくらいの赤味〜黄色味の光です。

LED電球でもこの色温度は作れるので、白熱電球の方が温かみを感じられる、というのは論理的におかしいのではないか?と思うかもしれません。

しかし「温かみ」を感じる理由は、色温度の違いだけではないのです。
どのような理由があるのでしょうか?

理由1:光の特性

白熱電球の特性
・光の波長が連続していて、太陽光に近い自然な光を放出する。
・暖かい赤っぽい成分が多く含まれている。

LED電球の特性
特定の波長を組み合わせて作られた人工的な光で、完全に自然な光ではない。

理由2:心理的認知

白熱電球の「温かみ」を感じるもう一つの理由は、その光が熱を伴い、「火」や「太陽」を思い起こさせるからです。

一方、LED電球は熱をほとんど出さないため、同じ暖色系でも心の中で感じる印象が違う。


このような理由から、LED電球よりも白熱電球の方に温かみを感じるのです。


6. まとめ

LED電球の色温度が、数値では同じだけどメーカーによって差異がある理由、そしてLED電球より白熱電球の方が「温かい印象」になる理由を述べてきました。

これから先の時代において、LED電球より白熱電球の生産が上回ることはないでしょう。

そもそも、LED電球がこれだけ普及したのは、同じ照度を得るのに必要な電力が桁違いに小さくなったからです。

ですから、CO2の削減を世界規模でやっていこうという時代に、電気代が高い=より多くの電力が必要な=CO2を多く排出する、白熱電球の生産量が増えることはないでしょう。

しかし、白熱電球にはLED電球にない、人間が根源的に好む「温かさ」がある。

LED電球の光しか知らなくなったもっと後の世代が、アンティークを探して白熱電球に出会った時、その時に得るだろう感激は、想像に難くありません。
きっと虜になるはずです。

火の怖さ、刃物の怖さ、を教える機会が減るように、白熱球の良さを体感する機会も減ると思いますが、空間デザインを志す人には、数値だけでは表せない「空気感」を自分の感覚に体得して、ここぞというときに使えるようにしてもらえたら幸いです。


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笹岡 周平 |空間デザイナー/建築・インテリア
建築・インテリアなど空間デザインに関わる人へ有用な記事を提供できるように努めます。特に小さな組織やそういった組織に飛び込む新社会人の役に立ちたいと思っております。 この活動に共感いただける方にサポートいただけますと、とても嬉しいです。