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Dapper LabsのCEOが語る、NBA Top Shotの裏側とNFTの可能性
最近聞いた2つのPodcastエピソード↓で、Dapper Labs のCEO(Roham Gharegozlou氏)が語っていた NBA Top Shot におけるNBAや選手との契約内容、そしてNFT x スポーツリーグの可能性についてまとめました。
*NBA Top Shotとは、デジタルなバスケットボールカードで、ゲームのワンシーン(モーメント)をカードにしたものです。一般的な物理スポーツカードと同じように、収集目的や投機目的のほか、ゲームに使ったり、あるいはデジタルアート的にディスプレイに映し出すなどさまざまな使い方があります。
*Dapper Labsとは、NBA Top Shotの開発等を行っているスタートアップで、NFTに2017年頃から本格的に取り組んでいます。独自ブロックチェーン技術であるFlowの開発元でもあります。
お金の流れや数字
Packs(カードが複数枚が入っているパック)の売上はDapper Labsに入り、そこからNBAとPlayers Associationに分配される(%は非公開)
NBA Top Shotの入手方法としては、公式サイトからカードパックを購入するか、マーケットプレイスと呼ばれるeBayのような取引所で個人間売買をするかの2つがあります。
Players Association(NBPA)はNBA選手を代表する労働組合のようなもの。そこと、NBA(リーグ)それぞれに売上の一定割合が配分される仕組みのようです。そして選手へはPlayers Associationからシェア(カット)が渡ります。
マイケル・ジョーダンなどは特殊で、Players Association外で独自で権利を管理しているのでDapper Labsが直接個々に対応
現役選手は全員Players Associationに加入しているそうですが、引退した選手などは別管理で、ジョーダンクラスになるとDapper Labsと個々の契約をしているそうです。
ジョーダンは現時点ではカード化されているかは不明(非公開)、ただし彼はDapper Labsに出資はしています。(なのでたぶん今後ジョーダンのカードもでてくると思われる。)
トレーディングマーケットプレイスの手数料は5%、それがDapper Labsに入り、そこからNBA、Players Associationにシェアが分配される
マーケットプレイスからの手数料売上も、カードパックの売上同様、Dapper Labs、NBA、Players Associationで分配されるようです。もちろんこちらも%は非公開。
現在までのPacksの売上が$40M、そしてマーケットプレイスでの個人間トレーディングの Transaction volume(流通総額)が$500M以上
公式サイトからのカードパックの売上の10倍以上二次流通の売買額があるようです。マーケットプレイス上での個人間トレーディングで動く金額の大きさがすごい。
トレードの上限が$200,000(2200万円)、上限で売買されるものも含めて$100,000以上でトレードされているカードのほとんどがレブロン、あと少しザイオンなど
現在の取引上限額の2200万円でカードが売れたら、マーケットプレイス手数料(5%)として100万円超入ってくるということになります。1000万円で売れたら、50万円。
NBAや選手にとっては、今まで二次流通に関してはまったくうまみがなかったのが、NFTだとそこから永続的に収益を得られる可能性がでてきます。これはデジタルだからこそ、そしてスマートコントラクトだからこそなし得るゲームチェンジャー。
まだベータ版ながら、登録ユーザーは100万人近く、うち40万人が最低ひとつは購入、そしてその多くが3つ以上のTop Shotを保有
NBAのNFTカードで登録ユーザーが100万人、アクティブユーザーが40万人というのは一つの指標となりそうです。もちろんここからも伸びるとは思いますが。今まで物理カードを集めていたコレクターが、今後どれだけデジタルに進出してくるかで、ユーザー数やマーケットサイズは大きく変わりそうです。
保有するTop Shotをshow offできる(見せびらかせる)場所やアプリケーションが今後どんどん増えれば、それだけ他の人の目にとまることになるので、新規ユーザーも増えそうです。
テクノロジーや開発について
CryptoKittiesで(当時の)Ethereumのスケーラビリティーの壁に当たったこともあり、独自ブロックチェーンのFlowを設計
Dapper Labsでは当初Ethereum上でサービスを開発していましたが、スケーラビリティーを考慮した独自のFlowにシフトした経緯があります。
Dapper LabsはNBAとしっかりとした信頼関係を築き、チームオーナーの何人かはDapper Labsへ出資も
NBAには30のチームがありますが、"many of them"がDapper Labsに出資(投資)もしているそうです。
*NBAでは「オーナー」という単語を使わない動きもあるようですが、ここではわかりやすさのために使います。
NBA Top Shotの開発チームは70人、開発期間はおよそ1年
1年くらいでNBA Top Shotを開発できるのはすごい。
Dapper Labsは、ブロックチェーンのユースケースやアプリケーションを検討するチーム、決済などUXを担当するチーム、そしてスケーラビリティ(独自ブロックチェーンFlowの開発含む)を担当するチームの3つで構成
サイトの表記含め、ユーザー体験にブロックチェーンやNFTなどの言葉を使わず、より一般層にリーチできるように設計・配慮
調べたところ、確かにNBA Top Shotの公式サイトのトップページには、NFTという単語も、Blockchainという単語もゼロでした。
NBA Top ShotがほかのNFTプロジェクトすべてを合わせたよりも多いユーザーと流通総額があるのは、ゲームデザイン、エコノミーデザイン、Go To Market戦略、コミュニティー、コンプライアンスと規制スタック、様々な要因がある
Flowはオープンソースなのでだれでもテクノロジー自体は真似できる、という意味でCEOは発言されていました。まあNBAのブランディングというか知名度がTop Shot成功の要因としてはやはり大きい、というのが個人的な見解ではあります。
NBA Top Shotの上で(向けの)アプリケーションを開発している企業や開発者がおよそ30あり、そのうち資金調達している企業もあり
Flowがオープンシステム(オープンソースでコードもデータもすべてパブリック)なので、誰でもNBA Top Shot向けのアプリケーションを開発することができます。そしてすべてオープンなので開発者にとってはFacebookやApp Storeのようなプラットフォームリスクが非常に少ない、というメリットがあります(Flowはアプリをリジェクトしたりコントロールできない)。
これはまさしくエコシステムとして、サードパーティーも含めてユーザーに価値提供ができることを意味します。
NFT市場など (その他)
Top Shotはただの写真データではなく、音声や3D、そしてAR/VRもサポートして今後より深いユーザー体験を提供するものとなっていく
Top Shot自体の提供するUXも、サポートするフォーマットやメディアが増えるにつれて進化していく、と。
物理カードではできないデジタルカードこその価値提供、ここからの発展に注目です。
デジタルカードをトレードできるというのはまだまだ表面的なユースケースで、インターネットで言えばWebサイト(ホームページ)レベル。もっとトークンエコノミーやスマートコントラクトという文脈でのアプリケーションの進化はこれから
AR/VR含め、今後どんどんデジタルカードを使ったアプリケーションやユースケースは増えていくと思われます。
NFTはニッチな市場にも相性がいい
NBAのようなビッグプロスポーツリーグはもちろん、今後世界的に比較的小規模のスポーツリーグなどもNFTを使ったデジタルカードやデジタルアセットを展開する、というのは十分にあり得ます。
IP自体はNBAが持つので、ユーザーが自由になんでもできるわけではない(物理カードと同じ)
単にそのカードの所有権がある、というだけなので、例えば保有するカードでTシャツを作って販売する、とかはできません。
もしカード所有者がそれをYouTubeにあげても、NBAが必要と判断すればtake downできます。