完全リモートでも居住地によって給与を調整しないBasecamp社

先日、BasecampのCEOであるJason FriedがこんなTweetをしていました。

Basecampは、従業員の居住地に関係なく、給与は一定という方針です。

住んでいる国や都市によって物価や平均所得は異なるので、複数の国で従業員を雇用している企業の場合、同じ役職や職種であっても国や都市に応じて給与の額を調整している会社も少なくないと思います。また、Gitlabのようにそれを非常にオープンな形で公表している企業もあります。

Basecampの場合は「その人の能力に対して報酬を払っているので、その人がどこに住もうがその能力に変化はなく、したがってそれに対する報酬も変わるべきではない」というロジックです。

これは確かに一理あるように思います。

ちなみにBasecampの場合、給与は実際の居住地に関係なく、その役職/職種におけるサンフランシスコのトップ10%に入るような金額に設定されているそうです。(ただ実際にサンフランシスコ在住のスタッフは一人もいない模様。)

まあソフトウェア関係でサンフランシスコのトップ10%に入る給料をもらえれば、たぶん世界どこでもほぼ不自由なく生活できるかとは思います。(もちろん例外も一部ありますが。)

Basecampのようにしっかりそれを支払えるだけの体力のある経営ができる会社であれば、このような給与システムも十分理解できる選択肢でしょう。

ただ、全社員にサンフランシスコのレートを基準とした報酬を支払う体力のない会社の方が多いと思いますし、そういった場合はどこか基準を別の国や都市で設定することが考えられます。日本企業であれば東京を基準とする、など。その場合はやはり必然的に東京よりも平均所得が高い海外の都市に住む人を雇うハードルは高くなります。

個人的にこの固定システムの問題点として最初思う浮かんだのは、居住地によって給与が変わらないのであれば、より物価の低い国や都市に住むことを選択する方が良い、そういった人に有利なシステムではないのか、ということでした。

確かにその傾向はあるような気がしますが、住む場所というのは人生において非常に重要な決定項目のひとつであり、単純に物価が低いからという理由だけで住む場所を変える人は多くはないはずです。独身ならまだしも、家族がいれば自分だけのことではないですし、子供がいれば子供の教育や環境なども考慮するはずです。また、独身であっても都会のソーシャルライフが好きな人であれば簡単に田舎に移住はしないでしょうし、ましてや海外だと言語やビザなどの問題もあります。

なので仮に物価の低い国や都市に移住してアービトラージ的なメリットを得ることができるシステムになっていたとしても、それを実際に決断して実行する人は少ないかもしれません。

またQoLでいうと、必ずしも物価の低い都市に住んで可処分所得を増やすことがその人のQoL向上に直結はしないはずです。やはり物価の高い都市はその都市なりの良さがありますし、物価の低い他の都市に移ればその点は我慢しなければならない事になります。結局はCity mouseかCountry mouseかという、その人の性に合った生活スタイルが一番QoLがいいわけです。

もちろんこの給与固定システムによって恩恵を受けることができそうな人はいるはずで、独身で都会より田舎、先進国より発展途上国が好きな傾向にある人などはそれに当たるかもしれません。ただ、給与固定システムの会社で働いていて、自分と同じ役職でだいたい同じ給料をもらっている同僚が仮に地方や果ては物価の低い海外に移り住んだとしても、それを妬んだりする人は少ないような気が(個人的には)します。

「自分はここが好きだから住んでいる」というようにその決定にある程度みんなが満足しておれば、給与固定システムでの有利不利のような問題はあまり起こらないのでは、というのが自分としての仮説です。ひとはひと、自分は自分的な。

余談ですが、Googleで働いている方がロンドンから東京に移ったら給料が十数%下がったとツイートしていたので、Googleは住む都市によって給与額を変えているようです。また、Facebookも社員がリモートワークを選択する場合は給与カットを検討しているとニュースになっていました。

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思いついたハイブリッドシステム

仮に企業側の決定として、居住地によって給与額を調整するシステムであったとしても、ベースの給与と持ち株に対する配当を両方支払えるケースだと、ベースの給与は調整された額であっても配当は居住地に関係なく固定額でもらえる、というようにできるように思います。

前提として社員にも自社株を与える、ちゃんと純利益を上げる、という2つの重要な条件がありますが。