パラレル中学数学_全体像(#11)
1.はじめに
この記事は自分の考える、大学を「講義、実験、研究、議論が行える地域の図書館」のような存在にするという考えが実現したパラレルワールドを前提として作成しました。
このパラレルワールドのキーは大学です。
企業との関係性を再定義することで、社会人が大学に通うようになります。
多くの世代が同じ場所に集まることによって、地域の中心を大学としたいという意図もあります。
これはヨーロッパなどでは教会が地域コミュニティの核となりますが、日本にはそれに該当するものがない(小学校は若干その性質を持ちます)のでそれを大学にしたいという考えもあります。
また私たちの大学へのとらえ方として研究だけではなく、もう少し教育に目を向けるべきだと思います。
日本は低学歴社会とも言えます。大学名にこだわるので一見すると学歴社会ですが、学部卒の人が多く、他の国からみると低学歴に認識されます。
(海外の仕事では博士号を要求しているケースがよくあります。)
大学に入るまでをゴールに設定しすぎているので、その力配分をもう少し大学での教育というものに向けたほうがいいと思います。大体高校レベルの数学は1800年代位までのものがメインで、そこまでの習得具合の高さで優秀さを判断するということには無理があると思います。
2.現行カリキュラムとのパラレル中学の差
(1)小学算数との差
基本的にそこまで差はありません。気になる点は以下の2点くらいです。
① 小数は分数の一種なので、先に分数をやったほうがいいのではないか。
② 図形や統計に関しては少し覚えるべき知識を多くしすぎているように感じる。
興味を持ってもらおうと工夫するのはいいですが、子供心に結局何が言いたいんだろうということが多くなる可能性があります。
教えることは、最小限に絞り実際の生活とのリンクを強調するほうがよいのではないかと考えています。
(2)中学数学の差
昔は使われていた代数、解析、幾何という言葉を復活させたいと感じました。学んでいることを分類するということは頭を整理するうえで有効です。代数とはまさしく数の代わりに文字を使うという点でイメージがわきやすいです。
さらに解析という言葉も高校レベルでさらに「解析感」が増します。
そのため昔の言葉のほうがよいのではないかと思っています。
また現行の中学数学のカリキュラムについては、いくつか不満に感じている点があります。
① 代数・解析分野についてはそこまで不満はありません。そのため少ししか内容を変更していません。
② 幾何の分野は正直多くの不満があります。私が中学時代感じたのは「なんで急に二等辺三角形の話が出たんだろう」、「平行線と比の考え方は相似のほうが広い考えなのになぜ今更学ぶんだろう」という点です。
これはユークリッドの「原論」の流れを知ることで理解できました。
「合同を使って二等辺三角形に関する性質を言いたいのではなく、二等辺三角形の性質をつかって三角形の合同条件を証明していました。
平行線と比の考えが先にあり、それを使って相似を導入していました。」
このように逆転現象が起きています。分かりやすさを重視しすぎるのもどうかなと思います。
また平行四辺形の5つの性質や接弦定理など、ちょっとボリュームも多いなと感じており、このパラレルワールドでは平行四辺形の3つの性質に絞り、接弦定理はカットしています。
➂ 統計・確率の分野はほとんど現行のものを採用しませんでした。
四分位数は言葉だけの話で習得が楽だと思っているので中学数学に持ってきました。
また現行のものと同様に確率の概念には触れるようにしました。
そして最終学年にはベン図と二元表を持ってきて、高校の集合という分野との接続を考えました。
現行では標本調査について3年で簡単に言葉だけ触れているようですが、あまりにも中途半端なので正直ここで学習することに共感を持てませんでした。
3.進路とカリキュラムのつながり
小学数学までは全ての人に理解してほしいと考えています。
それは日常生活において、人の悪意やミスからは逃れられないからです。
例えばかけ算やわり算ができない人をだますのは簡単で、変なものを得だといって売りつけられる可能性があります。もちろん計算ができればだまされないということはありませんが、だまされていることを誰かに言われてもその話を自分で検証できないという弊害があります。
またスマホで計算すればよいというかもしれませんが、自分が何を計算しているか理解しないといけませんし、例えば入力のケタが間違えているということに気づくチャンスもなくなります。
このパラレルワールドでは15歳までは、学校に通うことを義務づけています。ですが進捗に関する制限は、「まだ大学レベルの教育を受けれない」ということ以外ありません。
そのため算数が苦手な人は15歳までかけて算数を習得してもらえればと考えています。
次に中学数学の習得と大学レベルの教育を受けるために必要な単位について考えます。
(1)理系分野をあまり必要としない分野を受講する場合
「中2_代数と解析」までの単位を必要としたいと思います。さすがに方程式や関数というものが存在し、どういったものかは把握しておいてもらったほうがよいと考えています。
ただ「中2_幾何」や「中2_統計と確率」に出てくる言葉(定理、確率等)くらいは知っておいても損はないと思います。
(2)理系分野と理系分野の知識が必要な分野を受講する場合
もちろん中3までの全ての範囲を習得している必要があります。ただ数学を専門とする分野を受講する場合とは視点が異なります。
「定理・公式」を知り、それがどういうものか理解し、簡単な問題に関して適用できることが習得の意味することとなります。
三角形の合同条件を例にすると、以下のようなことが習得に当たります。
① 3つの合同条件を知っている
② 合同条件を満たせば三角形が合同であるといえると理解している
➂ 簡単な問題について2つの三角形について仮定を見ていき、どれかの合同条件を満たしていると判断し、適用できる
(3)数学を専門とする分野を受講する場合
数学を専門とする分野を受講する場合も、単位を認定するテストは「習得」までしか問いません。
そのため自分で、その定理や公式がなぜ成立しているかという点に興味があるかどうかを見極める必要があると思います。
三角形の合同条件を例にすると、合同条件を満たしていればなぜ合同と言えるのかという点に興味を持てるかどうかということです。
私が今回、「中2_幾何」や「中3_幾何」で書いた部分のほとんどが「なぜ」について書いています。そのため「理系分野と理系分野の知識が必要な分野を受講する場合」には、半分近く読み飛ばしてよい部分になります。
そのためこの読み飛ばしてよい部分に興味を持った場合、数学を専門とする分野を受けてみてもよいかもしれません。
現行のカリキュラムでは多くの学生が数学が得意だから数学を専攻して失敗しています。これは現行のテストでも「習得」にのみフォーカスが当たっており、学生も「習得」とその先への興味を区別できていないためだと思います。(現行の高校数学のテストで点が取れて得意という人は、統計学系に進んだほうがよいかもしれません。)
また現行では学部ミスはかなり進路に影響を及ぼし、かつ変更も容易ではありません。
このパラレルワールドのカリキュラムは、自分の興味が数学を志すための深さにあるのか見極められるように作りたいと思っています。また制度として学部ではなく単位なので変更する場合も、容易な設計となっています。