逆噴射小説大賞2021ピックアップ「不思議な味わいがある！」編

前回に引き続き、今回は「不思議な味わいがある！」編です。

が、その前に。前回、大事なことを書き忘れていました……！　このピックアップはあくまでも僕の主観にもとづくチョイスであり、そもそも僕は逆噴射小説大賞ではなんの結果も出してない、言ってしまえばHUNTER×HUNTERの最序盤、ハンター試験編に出てくるベテラン受験者みたいなもんですからね。だからピックアップされてなくても「しゅげんじゃマジで見る目がないな」と鼻で笑うぐらいが大正解だと思います。

それになによりも……あなたが楽しんで（もしくは苦しんで）書いたのであれば、その行為自体がとてつもなく尊いものだし、書いて、他人に読んでもらった時点であなたは勝利している。「あ、この人楽しんで書いたんだな」「苦しみながらも書いたんだな」というのを感じたとき、僕はそこにものすごくキラキラとした美しいものを感じてしまう。だからこのピックアップに限らず、人からチョイスされたりされなかったりということは、あくまでもキラキラと輝く創作の喜びの、ほんの余禄程度に思ってしまってよいと思います。

あ、あと前回72本をチョイスしたと書きましたが、嘘でした。数え直したら73本ありました……。

では、やっていきます。番号は前回からの連番です。

前回

不思議な味わいがある！

46. 金のアルティメットメカ鵞鳥、或いは絶対に笑わないお姫様のハッピーエンド

タイトルからしてすでにヤバい。元ネタは中国の周王朝の滅亡原因（とされる）褒姒の逸話なんだと思うんですけど、タイトルには「お姫様のハッピーエンド」とあり、全体的にコミカルで明るい雰囲気がみなぎっている！　めちゃくちゃテンポが良く、流れるような筆致がすごく巧みだなと思いました。

47. スノウマンズ

リボルバーでリボ払い。え、リボ払いってそういう……！？　お、おもしろい！　ここからドタバタしたコメディタッチのアクションになるのかな、と想像したんですが、よくよく見ると記事につけられたタグには「ハードボイルド」とあるのだ……！　マジですか……。

48. 輪郭線上のアリア

「コ、コラーッ！　剥がすなーーッ！」と思わず声をあげたくなるドライブ感。シュールな状況をたしかな筆致でグイグイと読ませる。これはすごい……これはすごいぞ！　これからどうなっちゃうんだ。めちゃくちゃ続きが気になってしまう……！　最終的に宇宙を剥がしちゃうところまで行って欲しい！

49. 正義のロボット「オマワリ」さん

登場人物全員狂人！　展開の明暗がはっきりしていて、かつそこでオチてなくて、ちゃんと先の展開につながっていくのだろう、と感じさせるのがとてもいいなと思いました。会話もテンポ良くこなれていて心地よい！

50. ザ ラスト ジェネラル マスト ダイ

三国志最序盤のクソ雑魚キャラ、何進大将軍さまが主人公。何進の一人称が「僕」……！　無邪気で無知な何進がどことなくかわいく、哀れでもある……。董卓くん、来ないで！　焼肉パーティが焼肉パーティ（）になってしまうう！

51. Last contract

スピード感があり、こぎみよいアクション描写でテンポ良く読めてしまう！　「積荷ちゃん」という響きがかわいい。がしかし、か、核兵器人間だってー！？

52. 『一寸の虫』

世界の理ことわりの脆弱性やバグをハックして脱獄！　主人公がいぶし銀という感じがしてかっこいい。その手口やロジックもちょっと想像がつかないものがあり、ワクワクさせられる……！

53. 余命3ヶ月の親友のグローリーロード

100日後に死ぬ親友（アクティオンゾウカブト）！

ホビーアニメっぽさを漂わせつつ、なにやら不穏な空気も感じさせる。果たして芥田君は生き残り、元の姿へと戻れるのか……？　続きが気になる！

54. 7777777年の揺らぎ

これは内容がどうこう以前に文字数数えたらきっちり777文字で「バカだな～（褒めてる）」と思いました。

55. 人魚姫Ⅱ ～今度は戦争だ！～

「今度は戦争だ！」じゃあないんだよ！　タイトルにキャッチコピーつけるのはやめなさい！　屈強な女漁師たちに虐げられながらも生きている主人公（実は貴種）、その目の前に現れる美少年剣士！　作者のフェチをめちゃくちゃ感じる……！

56. バレたら最後! 文系3人で作る、タキオン通信機

これはヤバい！　めちゃくちゃおもしろい。「ポワワ…ワ…ワ…」「シュバー」という音のチョイス、テンポ感、しっかり振らないと飛びださない銃（炭酸ですか！？）、そしてとぼけた三人組が素材を集めて通信機をつくるという設定、これはもう確実におもしろくなるわけで、「すごい！」と思いました。

57. あわいのデバッガーズ

上で取りあげた「一寸の虫」にもちょっと似てるけど、こちらは「世界のバグで異能力を身につけちゃった！」という物語。軽妙なテンポ、会話劇が心地よい！　無邪気に、しかし確実に残機を減らしていく赤鬼ちゃんの明日はどっちだ！

58. チャーチワード氏の花嫁蒐集

タイトルの「チャーチワード氏」含め、胡乱なキーワードがこれでもかと放りこまれてくる。なにがどうなってるの！？　「始皇帝のサングラス」がきっちり役立っているのには笑ってしまいました……！

59. センパイ・スクランブル

すべてがシュールすぎておもしろすぎる……！　不条理劇なんですが、それが学園恋愛ものとしてまとめあげられているという点がおもしろいし、よいなと思いました！　というか犯人お前だろ！

60. 妖怪諜報部

独特のテンポ感と、どことなくいい意味でのんびりとした雰囲気が全編に漂っているのが印象的。そういう描写は特にないのに、読んでいてなぜか「かわいい」という感覚を抱いてしまう！　なんとなくなんだけど、手触りが「児童書」なんですね、これは（褒めてます）。ものすごくクセになりそうな味わい……！　これは好きですね。好きです。って……最後のセリフー！

61. 充足証明/*望まぬままに描いて

今回取りあげたなかでは、ちょっとだけ毛色が違う作品。これはある意味フォーマット芸ではあるんですが、それがとてもいい味を出してるな、と思いました。妙に印象に残ります。

62. レンズ越しのおっさん

これはなぜだか、ものすごく印象に残ってしまった……。シュールでとぼけた雰囲気がとてもよい。続きを最後まで読みたい、という感覚がなんとなく湧いてきてしまう……！

次回予告！

次回はラスト、「僕のなかに強烈な印象を残した！」編です。今回の逆噴射小説大賞2021を振りかえった時、僕の脳内に真っ先に浮かぶ印象深い作品を集めてみました。お楽しみに！

最後に自作の紹介

えー、実は僕も3本投稿しているんですよ。
気がむいたら読んでみてください……！

1. いとしき祈りのグロビュール

壮大な宇宙神話。

2. 絶界のスティグマ

ゆくあてのない少年少女たちの壮絶な物語。

3. 逆賊令嬢ライジング

とにかく明るく元気になれる、パワーにあふれた作品を目指しました！

【つづく】