【アクズメ・ザ・キラー】 #AKBDC
ガンギマリ一家のドン、ガガンボの邸宅は騒然としていた。伝説の殺し屋にして国際指名手配犯の殺人鬼、アクズメ・ザ・キラーによる襲撃予告が届いたためだ。
ガガンボは襲撃予告を握りつぶし、怒りをこめて叫んだ。
「ドンヅマリ・シティを影から支配する、このオレ様を殺すだと? 理由は『お前の犬がうちの前でクソしたから』だと? 抵抗する奴は皆殺しだと!? なめくさりやがってドグサレがァッ!」
そのまるまると太った体がわなわなと震えている。こめかみには怒りのあまり血管が浮かび上がっている!
手に手に自動小銃を持って武装したファミリーの構成員たちが、その周囲を取り巻いている。ガガンボは唾を飛ばしながら激高を繰り返す!
「バカがッ! やれるもんなら、やってみやがれッてんだ!」
──直後、ガガンボは走馬灯を見ることになる。
ズガーンッ!
凄まじい衝撃音とともに豪邸の壁が崩壊。もうもうと土煙がたちこめ、その中から巨大な影が現れたのだ。
ギュルンギュルン、グォングォン!
「な、なんだとーッ!?」
唸りをあげ現れたそれは全長7.5メートル! 全幅2.7メートル、全高2.23メートル! 恐るべき重量は、な、なんと22トン! それこそは! 台湾軍が誇る最新鋭装甲車、CM-32雲豹!
……ではなくて、アクズメがCM-32雲豹をパクって改造を施したそれは……
『フルアーマー・アクズメ・スペシャルである!』
装甲車の拡声器が高らかに名乗った。ガガンボは叫ぶ。
「装甲車なのにフルアーマーってなに!?」
パムパムパム!
ポムポムポム!
直後、装甲車銃塔に備え付けられた91式グレネードマシンガンが容赦なき歌声をあげた。銃塔には誰もいない。つまり、リモートによるオートマチック射撃なのだ!
【注意!】しゅげんじゃはまったく軍事兵器に疎く「グレネードってなんか凄そうだね」ぐらいの気分だけで書いています。
射出されたグレネード弾が地獄を描き出していく。ファミリー構成員たちは次々と爆散! 豪邸が瞬く間に炎に包まれていく。そして……ガガンボは目を見開いていた。まっすぐに、自分へと向かって迫りくるグレネード弾を見つめながら、死の予感の中で時間がスローモーションのように鈍化していく。
(おいおいおい、死んだわこれ……)
脳内に走馬灯が流れた……虫取りに夢中になった少年時代……憧れの女の子に手ひどくフラれた10代の夏……そして……ファミリーのボスに昇り詰め、他人を踏みにじり、酷薄に笑う自分の姿が……浮かびあがり、過ぎ去っていった。ガガンボは手を合わせ、己の人生を懺悔した。
(あぁ……バチが当たったんだわ……神様……)
しかし、その時である!
ゆらりゆらりと、ゆらめく陽炎のように、グレネード弾とガガンボとの間に一人の男が立ちはだかった。白い長袍を着たその男は、左手を腰に回した姿勢で地獄のような状況の中でも静かに落ち着き払っている。ゆっくりと、その右腕が動き出す。その動きは優雅にして華麗であった。男の右腕が清らかな水の流れのように緩やかな弧を描いていく。
刹那!
ガガンボの主観時間が回復! 高速飛来したグレネード弾が……ギュンッ! 男の右腕の動きによって逸らされ、右後方へと飛んだ! 一瞬遅れて、凄まじい爆発音、そして背後からの爆風がガガンボの周囲を吹き抜けていった。
「せ、先生……マスターZ先生ッ!」
男は静かにほほ笑んだ。
「フッ、ガガンボさん。こういう時のために私を……このマスターZを雇ったんだろう?」
その男……マスターZは装甲車を前にしても揺らぐことはなかった。不敵な笑みを浮かべ、手を前へと突き出す。そして手の甲を装甲車へと向け……クイクイと手招きをした。
「来いよ、アクズメ・ザ・キラー」
「おおおおお……」ガガンボは拳を握り締めた。勝てる! 伝説の拳士マスターZであれば、この状況であっても……必ず! 「勝てる!」
ギュルンギュルン、グォングォン!
フルマーマー・アクズメ・スペシャルが唸りをあげた! マスターZの背後、拳を握り、体を震わし、猛るガガンボの眼前いっぱいに、迫りくる装甲車の悪夢のようなフォルムが広がっていく。
「は?」
轢ーーーーーッ!!!
「「うぎゃー!」」
マスターZ、ガガンボ圧殺死! 二人は装甲車に潰され、無惨な肉塊と化した!
『これがアクズメ流戦闘術の真骨頂であるッ!』
かくして、今宵の宴は終わりを告げた。アクズメ・ザ・キラーの平穏を乱す悪は滅ぼされたのだ。フルマーマー・アクズメ・スペシャルが歓喜のエンジン音をあげ、燃え上がる豪邸を後にして、穏やかなる我が家へと帰投していく。
「フンフンフン~♪」
ハンドルを握るアクズメ・ザ・キラーは鼻唄まじりに呟いていた。
「あー、帰ってアイカツ見よ」
【劇終】
✨🎁✨アクズメさん、✨🎁✨
✨🎁✨お誕生日おめでとうございます!✨🎁✨