第49話「激突する不屈と最強」 #死闘ジュクゴニア
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<前回>
見開かれたそのバガンの瞳を見つめ、ハガネは言葉を失った。
その右の眼には「最」!
その左の眼には「強」!
バガンの瞳には刻まれていた。黄金に輝く「最強」の二字が!
『あらためて知るがいい! そして理解せよ! 我こそは全てを圧倒する者! 我こそは全ての力の頂点! 我はバガン! ジュクゴニア帝国大元帥、最強のバガンである!!』
「うわあぁ……うわぁああ……!」
ライはかすれる声で叫んでいた。全身全霊で、残る力を振り絞るように。それはライの底から沸き上がってきた叫びだった。許すことはできない。この怪物を倒さなければならない。一瞬にして死んでいった人々、その仇を絶対にとらなければならない。この想像を絶する化け物を、今ここで滅ぼさなければならない!
そのライの叫びに呼応するかのように、それは現れた。その羽ばたきは大破壊によって立ち込めた土煙を貫き、燦然と天空に輝きを放っていた。それはまるで炸裂する火山のように、バチバチと火の粉を撒き散らしていた。それはまるで猛る爆炎のように轟々と渦を巻き、燃え上がっていた。
それは空を貫く四字の翼。熱く輝くそれこそはまさしく──
不 撓 不 屈 !!
ハガネは吠えた。
「俺は……決して許しはしない。俺は決して……お前を許しはしないっ!」
その両眼。不屈の二字が燃えるように輝いている!
『ふははは! ようやく来たか! 我と同じ、両眼にジュクゴを刻みし者! 瞳に〈極限概念〉を宿す者よ!』
バガンの双眼、最強の二字がギラリと輝く。天空に浮かぶ霊長類最強の五字が強烈な閃光を放ち、世界を切り裂く。その光のなかに浮かびあがる巨大な人型のシルエット。それはまるで世界終末の光景であった。大気を震わせながら、巨人はゆっくりとその両手を広げていく!
『貴様の力がどの程度のものか……見せてみよ、このバガンに!』
刹那! 「うぉぉおおお!」
ゴウッ!
吠える突風! 輝ける翼が翻り、巨人の胴を横薙ぎに切り裂いた!
『ふはははっ! 面白い!』
ハガネはその身をさらに捩じる。不撓不屈の翼が回転し、爆炎のごとき光を巻き散らしていく! ハガネは上昇した。光の渦と化し。その渦巻く光は天空できらりと輝きを放つと、直後、急降下。それはまさしく輝ける弾丸であった。高速に回転するドリルのごとき不屈の弾丸! 弾丸は大気を切り裂き向かっていく。巨人の上半身へと向けて!
「うぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!」
ハガネの向かう先! そこには巨人の中に浮かぶバガンの姿があった! 『ふはは! 来い!』バガンを覆う光の膜、高速で回転するハガネの翼。それらが激突し、耀きがバチバチと煮えたぎる溶岩のように撒き散らされていく! ハガネは吠えた! 「バガーッンっ!」
ブチンッ!
何かが弾ける音。それとともにハガネは飛び込んだ──バガンを覆う光の中へと。
『ふはははは! そうだ、それでよい! 我に見せてみよ! お前の不屈の力とやらを!』
光の中でハガネは躍りかかる。拳を振り上げ、バガンに向けて。それを受け入れるかのようにバガンは両の手を広げ、獰猛な笑みを浮かべて待ち構えている。ハガネの不屈とバガンの最強がバチリと輝き、二人の視線の間、バチバチと稲妻のごとき閃光が貫いていく。
「うぉおお!」
ハガネの右拳がバガンの顔面を撃ち抜く!
『ふふは! なるほど!』
バガンは笑った。そして喜びに目を見開きハガネを見た。なおもハガネは止まらない!
「俺は!」左拳が唸りをあげてバガンの鼻先を貫く! 「お前を!」右拳、強烈なるアッパー! 「許しはしないっ!」
ハガネは己の全てを叩き込んだ。バガンの顔面に、不屈の力を込めた強烈なる頭突きを!
『ふははは……!』光の中、たたらを踏むようにバガンは後ずさった。その鼻から、たらりと垂れる鮮血。『やりおる……』バガンは荒々しく笑みを浮かべると、べろりと舌で血を拭った。
『だが……』
バガンの双眸がギンッと見開かれた。
『非力であるっ!』
「!?」
衝撃がハガネの腹を貫き、その肺からすべての空気が吐き出された。
「……かっ……はっ……?」
身を折りながら、ハガネは理解した。バガンの握りしめる右拳。それが己の腹に叩き込まれたのだと。
『ふはは……どうした。どうした。我はちょっと撫でてみた、ただそれだけなのだが?』
さらにバガンは左手をハガネにかざし、握りしめていく。
「ぐっ………ぐあぁぁ……!」
不可視の力! ハガネの体が凄まじい力で締め上げられていく。
『ふはは……こんなものか。我は理解したぞ。我以外の〈極限概念〉などこんなもの。呆気ない。実に呆気ない!』
「俺は……」体を締め上げられながらも、なおもハガネは言葉を吐き出していた。「……屈しはしない」
『ぬぅ……?』
「俺は……」
ハガネの双眸がカッと見開かれた。
「決して屈しはしないっ!」
その瞳に燃えるは不屈の二字! バチンっ! 凄まじい音とともに、ハガネは不可視の力を引きちぎる。そして再びバガンに躍りかかる!
『ふはは……楽しませてくれる!』獰猛に笑うバガンの右拳!
「うぉおおぉおおお!」吠えるハガネの左拳!
閃光とともに、二人の拳が交錯した。
【第50話「決して立ち止まるな」に続く!】