世界を揺るがす天才CEO亜嵐慶__3_

世界を揺るがす天才CEO 亜嵐慶

 その時、男は得意の絶頂だった。

 話題のベンチャー、ビッグトーク社。その新製品発表会。詰めかけたプレスが注目する中、巨大プロジェクターを前にして堂々とプレゼンを続ける男。

 ビッグトーク社の若き創業者、亜嵐慶(あらん・けい)。

「まさにセキュリティ乱世の時代! 大手が開発した決済システムが、最近やられたばかりだ!」

 亜嵐は両手を広げて大仰に続けた。

「皆さんも覚えてますよね。『二段階認証』。今では当たり前になったその仕組みすら、事故ったシステムは備えていなかった!」

 亜嵐はゆっくりと会場を見渡す。聴衆は固唾を飲んで見守っている。亜嵐は満足そうに頷き続けた。

「そこで……我が社の新製品『ダイナセキュリティ』だ!」

 亜嵐の双眸は自信に満ち溢れ、ギラギラとぎらついていた。

「二段階認証? そんなものは過去の仕組みに過ぎない。我が社はセキュリティを革命する! それが……これだ!」

 高らかな宣言。プロジェクターには勇ましいタイポグラフィ。そこにはこう書かれていた──

 

 

二 百 段 階 認 証

 

 

 どよめく会場。

「この乱世は我が社の最強セキュリティが制する! 必ずや皆様の安心安全を完璧にお護りする。亜嵐慶、ここに誓いましょう!」

 割れんばかりの拍手──

 

 

『十五段階目の認証コンプリート。次の認証ステップを開始します』

 亜嵐は荒く息を吐いた。その眼前には地に伏す不気味な怪物。亜嵐の殺人シラット奥義によって脛椎破壊された認証の怪物〈オース〉だ。

 周囲は青く渦巻く異空間。

 奇妙な空間だ。亜嵐は記憶を辿る。新製品発表を終え、舞台袖に戻った彼を出迎えたのは黒ずくめの男。男は言った。「お前の製品は〈調停委員会〉の禁忌に触れた」と。

 気がつくと亜嵐はここにいた。そして〈認証〉と称する試練に襲われ続けていた。

「くくっ……くくくっ」

 嗚咽するかのように。亜嵐は肩を震わせ笑っていた。人間をこのような空間へと転送する超テクノロジーだと?

「ビッグビジネスの予感しかしないっ!」

【続かないっ!】

【後書きっぽいやつ】
これは「第二回逆噴射小説大賞」応募用に考えてはみたものの、没になったネタを逆噴射レギュレーションである800字フォーマットに落とし込んで放流したものです。

なんとなく思いついた「二百段階認証」、それが言いたかっただけ。

現場からは以上です。

(しかし。なんだか亜嵐慶のキャラクターが気に入ってしまったので、再登場の可能性もなくはない……ちなみに彼の弟は亜嵐宙輪具(あらん・ちゅうりんぐ)です。)

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しゅげんじゃ
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