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逆噴射小説大賞2024ピックアップ『現役商業作家編』

逆噴射小説大賞とは?

『ニンジャスレイヤー』で有名な創作ユニット、ダイハードテイルズが主催する「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングなパルプ小説の冒頭800文字」だけで競いあう小説コンテストです。

今年の応募期間は10月末で終わりましたが、

というわけで、例年以上の盛りあがりを見せています。そんななか「今年はプロ作家の参加が多い」みたいな声を耳にしました。たしかにそんな気もしますが、実際のところどうなのか? 調べてみました!(アフィブログ風)

とは言え、そもそも「現役プロ作家」って何を基準とするのか問題ありますね。そこでいったん、下記の条件で絞りこむことにしました。(もし漏れなどあったらごめんなさい!)

  1. 直近5年間で商業作家としての実績があること

  2. 単著での小説出版実績があること

  3. 自費出版レーベルではないこと

  4. 今後も継続的な作家活動が見込まれること

  5. 小説以外での執筆のプロ(エッセイストやライター)は除外

また、直近でデビューが決まっている方も含むことにしてみました。では、やっていきましょう。なお掲載順は逆噴射2024への応募順となっています。


1. 獅子吼れおさん

代表作:『Q eND A』

この『Q eND A』はもともと逆噴射小説大賞2022の最終選考まで残った作品です。そこから獅子吼れおさんはラストまでしっかりと書ききり「角川ホラー文庫 デスゲーム小説コンテスト」で大賞を受賞。逆噴射発、商業デビュー作品が爆誕したのです……!

なんとコミカライズも決まっている! すごい!
では、今年の応募作品を見ていきましょう。

1. 『熱病の王国』

えっちだ……🫣
いきなり大人の読み味で驚かされます。

罹患者を隔離したこの大陸を『サキュバス』の王が丸ごと風俗街にした

のくだりがすさまじいスケールで禍々しさがあり、かなり好きです。獅子吼れおさん特有のロジカルに積みあげられた世界観のなかに、真夜中に熱に浮かされているような不気味な情念が通底している感があり、それが独特の迫力を生んでいる……。

2. 『窮栄レインメイカー 最弱激安スキル縛りでデスゲーム攻略配信 #QeNDA2』

なんと『QeNDA2』と書かれているでわないか……!
逆噴射の800字でこれだけの情報量を捌き切るのはさすがだと思いました。すごく殺伐としているんだけど、妙に陽性の疾走感がある。今どきのエンタメってやはり「ゲーム性」がひとつのキモなわけで、それを設計できる獅子吼れおさんは今後も期待できる作家だ……とあらためて思うのであった!

2. 木古おうみさん

代表作:『領怪神犯』シリーズなど

当然のようにコミカライズもされています。

もうすぐ新刊も出る!

この『檻降り騙り』はWeb版を追っていましたが、最高にすばらしかったです。今から書籍版が楽しみ……!

1. 『父買う夜市』

一読して「すばらしいな」と思うと同時に「やべーの来てしまったな」とうならされた作品。怪しくも幻想的な夜市の描写。そこでは「父」が売られているという、すさまじく耽美な世界観。たった800字のなかに、色鮮やかな夜市の光景が浮かんでくるのはさすがとしか言いようがない。すごい作品。

2. 『キリング・クッキング・ダイニング』

おもしろすぎる! 個人的には『父買う夜市』以上に続きを読みたい感がある。読み進めるにつれてヤバさがどんどんブーストしていく感がすばらしく、最後の展開に「うわー! おもしろすぎでしょ!」となってしまった。ヤバい人間を書く才能がありすぎる……。これ、かなり好きです。

3. 春海水亭(3g)さん

代表作:『致死率十割怪談』

ホラーだけど、ホラーじゃない。むしろ笑って元気になりたいときに読むべき本です!

1. 『天国経由地獄行き、自由席にて』

軽快にテンポよく物語が展開されていき、読んでいて心地よいのがすごい。

いつまで自分を殺しながら生きていくつもりだ

という主人公の独白が読み進めるうちに全然違う意味を持つのがうますぎるし、そういう巧さが800字全体にちりばめられていてすばらしいなと思いました!

2. 『切り札は遅延だけ』

これはほんと最高に好き。今年の逆噴射応募作のなかで「個人的な好きさランキング」でいうと上位の一角に入る。とにかく読んでいてにやにやしてしまう。こういうおもしろさを出せるの、ほんとさすがだなと思わされた。

4. 紫陽凛さん

代表作:『転生したらポンコツメイドと呼ばれていました』シリーズ

1. 『プロ詐欺師のサツジン』

これはめちゃくちゃ完成度が高く、冒頭からすでにパルプ強者としての風格が漂っており、「うおー、またすごいのがきてしまった……」と思わされたんですが、最後の展開は賛否ありそう……! でもかなり好きです。

2. 『パイロキネシス』

実はこの二作目を読んだ瞬間、「あれこの人小説うますぎるな」と思い、調べてみたら商業デビューされていることを知ったのでした。異世界ものからノワール風、そして今作のような異能力SFまで、幅広く書けるのはさすがPRO……と思いました。初参戦で800字内の情報整理がうますぎる。

5. 虹乃ノランさん

代表作:『そのハミングは7』

虹乃ノランさん初の単著『そのハミングは7』が12月18日に刊行されるみたいです!

1. 『ドゥヴァン・イン・ザ・シンク』

すごく雰囲気があり、妙に印象に残る作品。逆噴射の800字の戦いでは物語の導線を明確にすること(どこに向かっているのか読者にわからせること)がセオリーでもあるわけですが、それをやらずに高い筆力だけで読ませているのはすごい。少し湿ったような質感、肌触り、記憶と現実のあわい、みたいな、そういう不思議な感触がある。

2. 『SITSU』

タイトルからして『SITSU』なので、こちらの作品もじめっとした湿度を感じさせる。ちょっと逆噴射では珍しい純文みもあり、もう少し先を読んでみたい気分にさせられる!

6. 尾八原ジュージさん

代表作:『みんなこわい話が大すき』

『みんなこわい話が大すき』、めちゃくちゃおもしろいです。マジの本気マジでおすすめです!

そして新刊『わたしと一緒にくらしましょう』も10月30日に刊行されたばかり。こちらもマジの本気マジでおもしろいので真剣マジにおすすめです!

『編乙女の無垢なる祈り』

ほんとにジュージさんの文章はリーダビリティ高く、スッと読めるよさがある。過去の情景が丁寧に描写され、編み物の色や肌触りや質感まで感じさせる。静かで過去への憧憬すら感じさせる描写。そこから一転、いきなり不穏になるのもすごくジュージさんっぽく、さすがだなと思わされる……!


以上です。今年の逆噴射に参戦していた現役作家は6名だったみたいです! いかがでしたか?(アフィブログ風)

現役作家はさすがだな……と思いつつ、しかしプロでも大賞が獲れるとは限らないのが逆噴射。おそらく今年も年末までには結果が出てくることでしょう。果たしてどうなるのか……めちゃくちゃ楽しみですね。

おまけ

しゅげんじゃさんも応募しているよ。

そろそろ僕も本気で商業目指すかなー。

【おしまい】

※ ヘッダー画像はDALL-E3にて生成

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しゅげんじゃ
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