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校則になった君と #架空ヶ崎高校卒業文集

2222年卒
絶対屈 折率夫

 長いようで短かった三年間の高校生活。いろいろなことがあったはずなのに、思いだせるのは校則になった君のこと、ただそればかり。

 あれは入学して間もないころだった。お互いに帰宅部だった退屈な日々、みんなが部活動や奉仕活動にはげむさなか、ふたりきりの下校時間。誰もいないあぜ道、僕の前をスキップするように歩く君の姿。今でも鮮明に覚えている。そのとき、ただカ=ラスの鳴き声だけが聞こえていたということも。

 君は振りかえってこう言ったんだ。

「同好会をつくろうと思うんだけど」
「同好会……?」
「そう、同好会」

 首をかしげる僕に、君の笑顔ははちきれんばかりだった。

「《校則の一部改正を目指すための同好会》、略して《コーカイ》!」

 いま思えば僕は、君といる時間がもっと欲しかった、ただそれだけだったのかもしれない。だから君の強引さに引きずられるふりをしながら、内心、喜びをかみしめつつ君の活動につきあったんだ。そして高校三年目の春、ついに僕たちは謎に包まれていた「校則を改正するための条件」を突きとめた。その条件は過酷で困難なものだった。けど君は、決してあきらめなかった。そんな君の姿が僕にはとってもまぶしかった。

 そして運命のあの日。
 忘れもしない2221年11月14日、秋晴れ、澄んだ空の下。

 ウラヌスガスと反物質燃料を満載した君は、大地を蹴り、この惑星の一部を破壊しながら飛びたった。まばゆい光とともに秒速約30万kmに到達。ついに君は、校則の一部改正に成功した……いや、君自身が校則光の速度と化し、この学校のことわりとなって……。

 君は、この学校を変えたんだ。

 だから在校生のみんなには言っておきたい。いま、君たちが明日の心配をすることなく日々を過ごせるのも、回転炉の棒を回し続けるかわいそうな生徒たちがいなくなったのも、全部、彼女のおかげなんだと。

 そして卒業を前にして、いよいよ僕も彼女に続くことを決めた。だからこれは卒業文集にかこつけた、僕から在校生である君たちへのメッセージなんだと思ってくれてもいい。

 どうか、君たちの未来のために懸命だった彼女のことを忘れないでいて欲しい。そして君たちが生きるこの学校の未来のために。僕も続くのだということを。

 僕も、校則になった君と……。

きっと励みになります。