新刊のご案内【集英社文庫7月刊】
みなさんこんにちは。
集英社文庫noteです。
いよいよ夏到来!
学生さんは夏休みも始まり、元気にお出かけしている姿を見かけてはほっこりします。
とはいえ今年も暑さは苛烈になりそうです。
水分・塩分補給をしながら、涼しい部屋で読書をするのはいかがでしょうか?
さて、7月19日に集英社文庫の7月刊が刊行されました。
今月は11作品。
こちらの記事では、それぞれの魅力をご紹介していきます。
みなさんのお気に入りの一冊が見つかったら幸いです。
男たちの生き様を描く小説
まずはこちらの2作品をご紹介!
『ごろごろ』
伊集院 静
男たちの寂寥の正体とは――。
昭和40年代、ベトナム特需に沸く横浜港に流れ着いた4人の男。
彼らの遊びは決まって一人が抜ける三人麻雀だった。
第36回吉川英治文学賞受賞作。
昭和40年代、ベトナム特需に沸く横浜港に流れついたガン、サクジ、トミヤス、キサン。
彼らの遊びは決まって一人が抜ける三人麻雀だった――。
世間の好景気を尻目に、自ら望んで時代から取り残されようとする男たちは、何を目指して生きるのか。
あてどない流謫の日々、つかのまの花見の宴。
その悲しみと寂寥の正体とは何なのか?
男たちの流浪を描いた傑作長篇小説。
第36回吉川英治文学賞受賞作。
『幻の旗の下に』
堂場瞬一
幻の東京オリンピック に代えて、国際大会を開催する!
戦時下、スポーツによる平和実現に奔走した男たちの熱き友情と知られざる交渉の歴史を描く。
日中戦争中の昭和十三年七月、東京オリンピックの開催返上が決定。
諦められない大日本体育協会は、代替の国際スポーツ大会を考案。
担当の石崎は、大臣や軍幹部へ開催許可の陳情に奔走しながら、自分がやっていた野球を競技種目にしようと尽力する。
さらに、大学野球の盟友澤山を巻き込み、彼が所属する日系ハワイチームを来日させようと……。
日米の男たちの熱き友情と知られざる交渉の歴史を描く。
最初にご紹介するのは、寂寥感あふれるハードボイルドな男たちの物語『ごろごろ』と、スポーツで繋がる若き男たちの物語『幻の旗の下に』。
『ごろごろ』は、ベトナム特需で沸く横浜を舞台にそれぞれ事情を抱えたさすらう男たちの物語です。
何となく、飯屋で意気投合してから麻雀卓を囲むようになるガン、サクジ、トミヤス、キサン。ともに花見をしたり、旅行に行ったりと交流はありますが決して深いところまでは踏み込まない彼らの在り方に切なさを感じます。
スポーツが繋ぐ絆の物語『幻の旗の下に』は、幻となった東京オリンピックの代わりに国際スポーツを開催するために奔走する大日本体育協会の石崎と、その友人で招待される側になり微妙な国際情勢の中東京へと向かおうとするハワイの日経野球チームマネージャー澤山の絆と想いの話です。
様々な困難や難題がどちらにも立ちはだかりますが、スポーツの力で団結したり、様々な縁が広がったりと、人と人のつながりに胸が熱くなります。
色とりどりのエンタメ小説
続いてはこちらの3作品をご紹介!
『サマーゴースト』
乙一 原案:loundraw
3人の死にたい高校生×線香花火を灯すと現れる#地縛霊。
人気クリエイターのタッグが贈る、儚く、淡い、少し不思議な青春長編。
夏の間、郊外の飛行場跡地で線香花火を灯すと、自殺した女の幽霊【サマーゴースト】が現れるという。
そんな都市伝説を聞いた高校3年の友也は、自殺系サイトで知り合った高校生の涼とあおいとともに、その幽霊に会いに行く。
自殺者の先輩としてアドバイスを受けるためだ。
しかし、彼女からは衝撃の事実を聞かされ……。
人気クリエイターのタッグが贈る、儚く、淡い、少し不思議な夏の青春長編。
『ビギナーズ・ライブ!』
保坂祐希
今聴いている電波の向こう側で起きているかも知れない、奇跡のような熱い話。
笑って泣ける、超ド級のラジオ小説!
4人のビギナーズが、伝説の神回を生む⁉
大阪では、ぼちぼち人気のローカルFM局に勤める陽菜。
初めてディレクターを任された新番組に集まったのは、テレビ業界を追放されたプロデューサーに、還暦トラック運転手と無気力大学生のパーソナリティ二人……って全員素人やん!
打ち切りの危機が迫るなか、陽菜たちは己の人生の全てをさらけ出したラジオドラマを放送することに。
「金曜夜のビギナーズ・ライブ!」、今週も元気に始めるで。
『彼女たちはヤバい』
加藤 元
SNS時代 の最恐ストーカー女!
別れたなんて、あなたが勝手に決めたことでしょう。私は納得していない。
この男、最低。なのに、離れられない――。
還暦間近のダメ男・ケンとの別れを受け入れない36歳のユカは、Gアカウントに不正ログインをし、毎日監視することで彼を近くに感じていた。
さらにエスカレートし、地図アプリの履歴を辿って彼の新しい女たちに接触し、排除し始める。
だが、同じ男に惹かれる分、彼女たちもまた〝ヤバい〟性格で!?
恋愛感情の裏側に潜む、人間の醜さと怖さを切り取る長編。
幽霊にラジオにストーカー?! 今月も色とりどりのエンタメ小説をご紹介します。
ひと夏の幽霊との邂逅を描いた青春小説『サマーゴースト』。
それぞれに事情を抱え”死にたい”と願う三人の高校生がある女性の幽霊に会いに行きますが……?
大人気イラストレーターloundraw氏の初監督短編アニメーション映画がもとになっており、そちらも美しい映像で夏の儚い世界を味わえますので是非! 映画でも小説でも作品の世界をお楽しみください。
大阪のローカルFM局を舞台に素人だらけでラジオ番組を作っていく『ビギナーズ・ライブ!』。
個性豊かな面々が一歩ずつ成長していく人間ドラマが魅力です。それぞれがラジオ番組「ビギナーズ・ライブ!」を通して少しずつ変わっていきます。そしてラジオ放送の現場の裏側も覗けますよ!
くすっと笑えてほろりと泣ける。”読む”ラジオはいかがですか?
一人の男を巡る一癖も二癖もある女たちの群像劇『彼女たちはヤバい』。
タイトルが示すように正にすぎるほどヤバい女たちのオンパレードで読みながらぞわぞわが止まりません……! もちろんそれぞれにヤバくなってしまった理由はあるのですが……。
怖すぎ、と思いつつもページをめくる手が止まらなくなります。
ある意味夏にぴったりな新感覚ホラー(?)サスペンスです。
書き下ろしが勢ぞろい! 時代小説
次は、こちらの3作品を。
『辻番奮闘記 六 離任』
上田 秀人
将軍、藩主、さらに長崎奉行から――次々と降りかかる難題に立ち向かえ!
藩のため忠義を尽くす若き辻番の活躍を描く書き下ろし歴史長編。
平戸藩士斎弦ノ丞は、江戸の辻番として、将軍家光への襲撃を阻止するなどの功を挙げ出世。
だが、同僚の反感を買い国元へ帰された。
長崎でも、島原の乱後に増えた牢人らを取り締まる辻番となる。
その頃江戸では、家光と老中松平伊豆守が、目障りな大老の排除を画策し始めていた。
伊豆守は、平戸前藩主が起こした密貿易事件を利用し、有能な弦ノ丞を使おうと……。
藩への忠義に生きる若き剣豪の活躍。
『四郎の城 キリシタン戦記』
袴田 康子
15歳の少年、四郎と近縁の小左衛門との視点で描く島原の乱の顚末。発見と感動に満ちた歴史小説。
徳川家光の治世。
天草と島原の民は、幕府のキリシタン弾圧と、領主からの搾取にあえいでいた。
四郎は兄のように慕う民のリーダー小左衛門から、共に蜂起しようと説かれる。
最初は反対したが……。丹念な取材をベースにしつつ、天草四郎をカリスマではなく生身の少年としてその内面に寄り添い、小左衛門とのドラマを軸に島原の乱を追う。
歴史上の事件を「体感」することができる、清冽なる歴史小説。
『時代小説 ザ・ベスト2024』
編:日本文藝家協会
読み応え保証!
ジャンルの安心感 ともに、確実な進化 も感じられる
歴史・時代小説の現在地。厳選11編! 年度版アンソロジー。
歴史・時代小説を読むときに期待するのは?
歴史の一場面を再現して見せて欲しい?
侍、易者や陰陽師など、時代ならではの人物を見たい?
時代を経ても変わらぬ人間の業を感じたい?
さらにはホラー、ミステリーの要素も楽しみたい?
安心してください。この一冊の中に全部あります。
2023年度の文芸誌に掲載された中から11編を収録した年度版アンソロジー。
ジャンルの今を体感してください。
今月は時代小説のいきなり文庫が豊作です!
『辻番奮闘記 六 離任』は人気シリーズの第六巻。
若き辻番斎弦ノ丞は長崎警護の任を受け奮闘中。
しかし有能な彼を欲する老中松平伊豆守、長崎奉行などから難題を押し付けられ……?
それぞれの思惑が絡み合う巻となっています。
その中でも頭を悩ませ懸命に立ち向かう姿、辻番として誇りをもって悪党を成敗する姿に惚れ惚れするはず。頑張れ、弦ノ丞!
天草四郎を等身大の15歳の少年として描く『四郎の城 キリシタン戦記』。
信仰の弾圧、領主からの重税に苦しむ天草・島原の民。ついに我慢の限界となり四郎が兄のように慕う小左衛門が煽動し武力で蜂起することになります。最初は反対していた四郎も否応なく巻き込まれてゆき……。
歴史上の人物を一人の生きた人間として感じられる作品です。
『時代小説 ザ・ベスト2024』は時代小説の年度版ベストアンソロジー!
戦国武将からにぎやかな長屋の話、陰陽師、開かずの間、鬼との対決などバラエティーに富んだ話がギュギュっと凝縮されています。
時代小説、読んでみたいけど何から読めばいいかわからない……という方にもおすすめ!
お気に入りの一編を見つけてください!
読めば世界が広がるエッセイ・ルポ
続いてはエッセイとルポの2冊をご紹介。
『おなかがすいたハラペコだ。 3 オダンゴまつり』
椎名誠
峠を越えたら、その先いちめんにおいしい世界が待っていた。
シーナの「食」エッセイ待望の第3弾!
ついつい取りすぎてお腹がパンパンになる朝食ブッフェ。
コンビニ冷し中華、もやし、おじや、クリームパンなど、身近にあるうまいもの。
忘れられない駅弁から、宮古島でのカツオ料理、中国の屋台の饅頭など、旅先での絶品グルメ。
時節柄、活動範囲は狭まっても、その分深掘りするので変わらず食欲は刺激されまくり。
シーナの食エッセイ第3弾。
読み終えたら、あなたもきっと叫ぶはず。「おかわり!」
『マザリング 性別を超えて<他者>をケアする』
中村佑子
「母」を、解きほぐす。
社会的/政治的役割から「母」を解放し、未来へと繋ぐルポルタージュ・エッセイ。
「マザリング」とは、性別を超え、ケアが必要な存在に手を差しのべること。
気鋭の映像作家が、自身の妊娠出産を端緒に、あらゆる弱者を不可視化するこの現代社会を問い直す。
産後うつに陥った人、流産を経験した人、産まないと決めている人、養子を迎えた人……社会に埋もれるさまざまな「声なき声」に耳を傾け、手垢にまみれた「母」という概念を解きほぐす、圧巻のルポルタージュ・エッセイ。
シーナさんのくすっと笑える食エッセイ『おなかがすいたハラペコだ。 3 オダンゴまつり』。
大人気シリーズの3巻目です。
おいしいものと小気味いい調子で綴られるエッセイ。読んでいると思わず口角が上がってくるはず。と同時に、お腹がすいてくるうまいものたちの宴。
暑い日には涼しい屋内でこのエッセイを読んで、胃袋を刺激し、うまいもの探しの旅に繰り出しましょう!
『マザリング 性別を超えて<他者>をケアする』は現代における「母」を真摯に見つめたルポタージュ・エッセイ。
母になった著者が、「母」にまつわる体験談や経験を数多くの人に聞きまとめた1冊。
「母」と対になりがちなのが「子育て」だと思います。しかし、この本ではもっと根源的な私たちが生きる人間社会における「母」とは何か、その存在の在り方をあらゆる角度から見つめていきます。
様々な立場、境遇の人々から語られる「母」に多くの学びを得ることができる作品です。
巨匠・クンデラが描く心の機微と幻想
最後にこちらをご紹介。
『ほんとうの自分』
ミラン・クンデラ
訳=西永 良成
更年期症状 を感じるようになった女と、経済力では彼女に劣る年下の男。
愛し合うふたりの心のバランスの危うさを、名手クンデラ が描く。
(1997年刊行『ほんとうの私』改題)
幼い子供を亡くした後、シャンタルは年下の男性ジャン=マルクと出会ってたちまち恋におち、離婚して彼と暮らし始めた。
シャンタルは広告代理店勤務、彼は職業を転々としている。
更年期の症状を感じ始めたある日、シャンタルのもとに一通の匿名の手紙が届く。
「私はスパイのようにあなたの後をつけています、あなたは美しい」――。
それを機に、ふたりそれぞれの幻想が現実を脅かしていく。
クンデラ逝去から一年がたち、文庫新刊2カ月連続刊行!(先月刊行された『緩やかさ』訳者あとがきもnoteに掲載中です!)
シャンタルとジャン=マルク。二人の視点が入れ代わり立ち代わり、現実と夢のはざまを行き来しながら紡がれる恋愛小説です。
軽やかで詩的な文章と男女の心の揺れ動きに、読み終わった後は「ほんとうの自分とは?」と自問したくなる一冊です。
noteでは訳者あとがきと、文庫版訳者あとがきを公開中。
こちらも併せてごらんください。
いかがだったでしょうか?
今月もバラエティ豊かな集英社文庫でした。
来月の刊行もお楽しみに!
集英社文庫noteでは連載小説からおすすめ本、裏話まで様々な情報を発信中です!
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