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新刊のご案内【集英社文庫9月刊】

みなさんこんにちは。
集英社文庫noteです。

ようやく暑さが落ち着いて、季節の移り変わりを感じるようになりましたね。
芋栗南京などなど秋の味覚も楽しい今。
体調には気を付けて、美味しいものをたくさん食べて、芸術や文化にも親しんでいきましょう!

さて、9月20日に集英社文庫の9月刊が刊行されました。
今月は11作品。

こちらの記事では、それぞれの魅力をご紹介していきます。
みなさんのお気に入りの一冊が見つかったら幸いです。


読みごたえ抜群のベテラン作家作品!

まずはこちらの2作品をご紹介!

左から『黄金旅程』『でく』

『黄金旅程』
馳星周

装蹄師、生産者、獣医、調教師、騎手、オーナー、そして競馬ファン――
応援するすべての人の想いを乗せて
疾走はしれ 最強の二勝馬シルバーコレクター
直木賞受賞第一作。

北海道の浦河で養老牧場を営む装蹄師の平野敬は、向かいの栗木牧場で生まれた競走馬エゴンウレアに魅了されるが、気性が荒くレースでなかなか本気を見せない。
ある日、騎手として将来を嘱望されながらも道を踏み外した幼馴染の亮介が、出所して牧場に戻ってくる。
敬は亮介にエゴンウレアの調教を勧めるが、その周囲に金貸しとやくざが見え隠れして——。
競走馬と共に生きる人間たちの感動の物語。

『でく』
伊集院静

弟はなぜ死んだのか。殺したのは自分なのか。
酒と女とギャンブルに溺れてその日暮らし――男の魂は平安を求めて彷徨い続ける。
いまは亡き著者、渾身の無頼小説、待望の文庫化
 

「ほらその目だ。昨夜と同じ目だ。あんたは酒を飲みはじめると、目がおそろしく冷たくなる」
競輪場に向かうタクシーで相乗りになった男が、そう言って私のグラスにウィスキーを注ぐ。
弟の死と家族の問題に苦しむ私は、罪悪感から逃れるために地方を転々とするその日暮らし、酒と女とギャンブルにまみれた生活を続ける。
男の魂は何処へ辿り着くのか。そして弟の死の真相は——。
伝説の無頼小説。

今月最初にご紹介するのはベテラン作家の読み応え抜群な2冊! なんとどちらも500ページ超!
『黄金旅程』は一頭の競争馬を巡る人間ドラマ。
競馬に詳しい人も詳しくない人も楽しめる1冊となっています。騎手志望だったが身体的な制限で諦め、装蹄師として働く主人公。道を踏み外した幼なじみの元騎手。経営が苦しい中小牧場の牧場主と、その跡を継ぐか悩む娘など、それぞれに葛藤を抱く登場人物たちが一頭の馬に魅了されていきます。馬に夢を見て、皆が徐々に一体となっていく様子に引き込まれ、終盤のレースシーンは胸が熱くなるはず!
伝説の無頼小説『でく』は、自滅的な生活を繰り返しその日暮らしをする主人公が全国をあてもなく流浪するお話です。
こちらを手に取る際はぜひ元気な時に……! 引きずり込まれます……! 
主人公は息を吸うように酒を飲み、幻覚を見ながら生きているのですが、その描写が圧倒的です。彼は、各地の競輪場へと赴き様々な人々と出会いますが、決して深い関係にはなれず、また放浪していきます。切なさを感じる1冊です。

緊迫の事件発生⁉ そして事件の後と。2つの側面からみつめるミステリー

続いてはこちらの2作品をご紹介!

左から『アフター・サイレンス』『流警 新生美術館ジャック』

『アフター・サイレンス』
本多孝好

「この沈黙を守ることが、今の私の仕事なのだ」
警察専門のカウンセラー・高階唯子。
彼女は、事件で心に傷を負った者たちの内なる叫びを聴く。
誰も暴かず、裁かない。胸打つ連作ミステリー。

公認心理士の高階唯子は、警察からの依頼を受け、事件被害者やその家族のカウンセリングを行っている。
夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻、誘拐犯をかばい噓の証言をする少女……。
心に深い傷を抱えた人々が、いつか自分の人生を取り戻せる日まで、唯子はただ沈黙の時をともにする。
彼女自身もまた、救いを求めて——。
罪と悲しみを背負う者たちへ捧ぐ、祈りの連作ミステリー。

『流警 新生美術館ジャック』
松嶋智左

――人命か、20億か。
新設の美術館で立てこもり事件発生。交渉のタイムリミットが迫るなか、キャリア警視正、まさかの人質に⁉
時限サスペンス×警察小説!

新設の県立美術館。
その開館式典で突然、爆発音が鳴り響き、狐面をつけた武装集団に建物を占拠されてしまう。
運悪く館内に取り残されたのは、副知事と女子小学生、そして変人キャリア警視正の孔泉だった。
犯人側の要求は現金十億と、ある展示品が盗作であることの公表。
孔泉たちは脱出の機会を図りつつ、狐集団の正体を探るが——。
彼らの真の思惑とは一体!? 
緊迫の時限サスペンス×警察小説。

事件を巡るミステリー2冊をご紹介。と言ってもだいぶ雰囲気の異なる2冊です。
事件被害者と向き合うカウンセラーの視点から描かれるミステリー『アフター・サイレンス』。
それぞれに苦しみを抱えた被害者たちと真摯に向き合い、待ち、彼らの心を溶かしていきます。そして、彼女自身も重い過去を抱えて苦しんでいる一人。
心に傷を負ったとき、”時間が解決してくれる”とはよく言いますが、誰かが隣に寄り添ってくれることでその時間が短くなることもあると思います。出てくる登場人物それぞれが、どうか救われてほしい、そう願ってやまない作品です。
『流警 新生美術館ジャック』は美術館で起こる事件を描いたスリル満点のサスペンス。
新しく建てられた県立美術館の開館式典で武装集団によるジャックが勃発! 中に取り残されたのはキャリア警視正・榎木孔泉と副知事、そして女子小学生⁉ 彼らは犯人グループに見つからないよう隠れながら脱出の機会を狙います。しかし犯人グループの目的は……??
美術館内部で動く孔泉たちの視点と、外部から彼らを救出し事件の鎮静化を図ろうとする警察の視点が交互に描かれ進んでいく本作。時系列ごとに進んでいくので、一緒に事件を体験しているような気持になって、見つからないよね⁉ 大丈夫だよね⁉ 頑張って! とハラハラドキドキが止まりません。

心にじんわり染みてくる。胸をうつ感動作

次は、こちらの3作品をご紹介。

『明日、世界がこのままだったら』
左から『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』『おかえり ~虹の橋からきた犬~』

『明日、世界がこのままだったら』
行成薫

生と死の「狭間の世界」で出会った二人の運命は――。
生きることを真摯に見つめる、心震える感動長編!

ある朝目覚めると、世界に二人きりになっていたサチとワタル。
それぞれが暮らす部屋はなぜかいびつにくっつき、無人の街は静まり返っていた。
やがて管理人を名乗る女が現れ、ここは生と死の「狭間の世界」だと告げる。
あなたたちの肉体は、今まさに死を迎えようとしている、と。
戸惑いながらも少しずつ心を通わせていく二人に、生き返るチャンスが訪れるが、残酷な選択が待ち受けていて……。

『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』
ほしおさなえ

銀河ホテルの一角にある「手紙室」。
好きな色のインクで、思い思いの言葉を綴る。
その瞬間、あなたはほんとうの自分と出会う――。

「こんなホテル、あったらいいな」が詰まってます!

南軽井沢の銀河ホテル。
イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。
室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。
彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。
娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生——銀河ホテルを訪れたお客さんが、手紙を書くことで人生と向き合う感動作。

『おかえり ~虹の橋からきた犬~』
新堂冬樹

ペットロスに苦しむ全ての人に贈る!
「ママ! ママ! 帰ってきたよ!」
愛犬を亡くし、絶望の淵にいた女性に起こった奇跡の連続を描く、次元を超えた感動長編。

「嫌っ……嫌っ……嫌ーっ!私を置いて逝かないでーっ!」
菜々子の心の時計は、愛犬の茶々丸が亡くなった五年前で止まっていた。
孤独に逝かせてしまった罪の意識に苦しむ日々の中、彼女は一匹の捨てられた柴犬と出会う。
愛情に満ちた眼で彼女をじっと見つめる犬の右頰には、ハート形の白い斑模様があった。
それは茶々丸と全く同じで!? 
絶望の淵に立つ女性に起こった奇跡の連続を描く、感動長編。

胸が熱くなる感動小説3冊をご紹介。
生と死のはざまで“ふたりぼっち”になってしまった男女の話、『明日、世界がこのままだったら』。
親に決められたレールの上を歩いてきたサチと、家の都合で東京から地元へと帰らなければいけなくなったワタル。全く違う二人が、死を目前にして出逢い、奇妙な同居生活を始めます。ですが、彼らには究極の選択が待ち受けていて……。
それぞれの生前の話と、現在のはざまの世界での話が交互に出てくる形で進む本作。小タイトルが七つの大罪からなっており、周囲の人間によって二人の人間像が語られていきます。出会うことで、少しづづ変わっていった二人はどんな選択をするのか、最後まで目が離せない切ない作品です。
とあるホテルの一室で開かれる、手紙を書くワークショップを巡る『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』。
南軽井沢にある、瀟洒なイギリス風のホテル「銀河ホテル」には、「手紙室」があります。そこには色とりどりのインクがずらっと並び、訪れた人はその中から好きな色を選んで、本当に想いを伝えたい人へ手紙を書くのです。優しい気持ちになれる、温かいお話3編が収録されています。
作中で手紙を書く際に使用するインクは実在する物なのですが、どんなインクなんだろう、とワクワクします。どれも素敵な色なのでぜひ気になった方は調べてみてください!
また、こちらの作品はシリーズ化を予定しており11月に2巻目が発売されますのでお楽しみに!
『おかえり ~虹の橋からきた犬~』はペットロスから回復していく女性の運命的な出会いと奇跡の連続を描く感動小説。
こちらは、この集英社文庫noteで連載されていた作品が文庫化したものです。
愛犬茶々丸を喪ったことで深い絶望の中にいた主人公・菜々子は捨てられていた柴犬・小武蔵と出会い、癒されていきます。そして小武蔵がくれた出会いによって、菜々子自身も大きく変わることになるのですが、運命は残酷で……。たくさんの苦難をともに乗り越え、二人はより強い絆で結ばれていきます。また、たくさんのワンちゃんたちが出てくるので想像するだけで楽しい気持ちになりますよ。

今も昔も変わらない、人の絆。

続いては心温まる2冊をご紹介。

左から『日の出』『生命いのちきらめく おやこ相談屋雑記帳』

『日の出』
佐川光晴

明治期、徴兵から逃れた清作と、彼のひ孫の現代の女子大学生・あさひ。
時代を隔てた二人が繋がる感動長編!
各メディアが大絶賛! 数多くの高校受験向けの教材で使用!

「あんなふうになって死ぬのは絶対にいやだ」
明治の終わり、戦争で変わり果てた父を見た13歳の清作は、徴兵から逃れて故郷を飛び出し、追っ手の恐怖に怯えながらも、鍛冶職人として全国を転々としていく。
一方、清作のひ孫である現代のあさひは、中学校の社会科教師になったばかり。
先祖を調べていたある日、学校で朝鮮半島の歴史問題に直面し――。
時代を超えて受け継がれる希望を描く、長編。

生命いのちきらめく おやこ相談屋雑記帳』
野口卓

生まれました! 信吾&波乃夫婦に、新たな家族が加わります。
シリーズ節目となる今回、初めて著者があとがきを寄稿。

作品への思いの他、著者の遅咲きデビュー秘話なども必読!

将棋会所の常連客の家に狐の親子が棲みついた、と聞き、訪ねていった信吾。
幼い頃に難病から奇跡的に生還した際、彼は動物と会話できる能力を得た。
対面した母狐が言うには……(「おコンさん」)。
他に相談客との心温まるエピソードも。
そして一番の見どころは、「おやこ相談屋」になってだいぶ経ちますが、やっと信吾と波乃の子が生まれます!
マイペースな本作で、皆さん幸せ気分に浸ってください。

『日の出』は、明治終期に生きた清作とそのひ孫であるあさひの時を超えたつながりを描く話。
ふたりに共通するのは朝鮮半島の問題にかかわっていること。清作は、徴兵を逃れるために鍛冶屋となって全国を転々としていきます。その中で、朝鮮出身の人々と出会い、彼自身も共に助け合って生きていくようになります。
また、そのひ孫のあさひも学生のときに在日朝鮮人の転校生と衝撃的な出会いをし、自身も歴史をきちんと知ってそれを伝えられるようになりたいと思い教師となります。そして自身のルーツをたどると、清作の名前があって……。
民族問題は依然私たちの前にあり、グローバル化が進む現代だからこそ読みたい作品です。”国籍”だけで人を見ず、個人と個人の関係をしっかりと築ければ何かが変わるのかもしれない。読み終わった後にいろいろ考えさせてくれます。
ようやく信吾と波乃の相談屋夫妻に新たな家族が誕生する生命いのちきらめく おやこ相談屋雑記帳』。
シリーズを通して、軽妙な人情噺が繰り広げられますが今作も楽しくて心が温かくなる話が満載ですよ!
相談屋に新たな依頼が舞い込んだり、狐の親子と邂逅したり。でも一番はやっぱり波乃の出産です! 周りの人々も総出になって喜ぶ姿は思わず顔がほころびます。子供につけられる名前もとっても素敵なのでぜひ本編で確認してください。
ほっと一息つきたい時にぴったりな一冊です。

エネルギッシュな女性たち

最後にこちらをご紹介。

左から『ババアはつらいよ! 番外編 地曳いく子のお悩み相談室 2』『我は、おばさん』

『ババアはつらいよ! 番外編 地曳いく子のお悩み相談室 2』
地曳いく子

FASHION、LIFE、WORK……
全国から寄せられたお悩みをバッサリと解決&笑いに変える。
日本で唯一のBBA特化型の人生相談本!

日本全国の悩めるBBAの駆け込み寺が深化して帰ってきた——。
「加齢で洋なし体型。何を着てもビミョー」
「仕事・家事・育児、全てが中途半端」
「更年期でイライラ」
など、おしゃれ、仕事、人生について、よりディープな中高年女子の問題をスタイリストが解決&爆笑に変える。
日本で唯一のBBA特化型の人生相談本、第2弾。
読むだけでいく子と愉快な旅気分!? 心躍る韓国3泊4日旅行ガイドも収録。

『我は、おばさん』
岡田育

圧巻のおばさんコレクションをご覧あれ。
古今東西の小説、漫画、映画などから、女の中年期を再定義するカルチャーエッセイ。
ジェーン・スーさんとの特別対談も収録。

「おばさん」という言葉は、どうしてこんなにネガティブな響きを持つようになってしまったのだろうか。
小説の中に、漫画の中に、映画の中に、歌詞の中に、街中に——古今東西、たくさんの場所に著者が見つけてきた魅力的な「おばさん」たちについてポジティブに考察し、現代の「おばさん」像を再定義し、その呼び名を自分たちの手に取り戻すカルチャー・エッセイ。
ジェーン・スーさんとの特別対談も収録。

『ババアはつらいよ! 番外編 地曳いく子のお悩み相談室 2』は大人気エッセイシリーズの番外編!
全国から寄せられた質問に地曳いく子さんがズバズバと答えます! 笑いあり共感アリの楽しいエッセイです。
巻末付録として3泊4日の韓国旅行記も掲載。旅費の内訳まで赤裸々に教えてくれるので、これなら行ってみたいかも……! と思います。美味しいものを食べて、リフレッシュして、自分も楽しい旅行に一緒にいった気分になるかも!?
「おばさん」という言葉をポジティブに再定義するエッセイ『我は、おばさん』。
あらゆる作品の中に出てくる「おばさん」が紹介されています。本当にたくさんの作品からおばさん像を考察していくのですが、出てくる作品も読んだり見たりしたくなります!
年を重ねることをマイナスととらえることも多い現代。しかし、本書の中で考察する”おばさん”は人生の先輩としての女性像で、かっこいいです。作中、「ナナメにバトンを渡す」という言葉が出てくるのですが、これは自分にも覚えのある感覚で、共感するとともに自身のことをふり返らせてくれました。楽しく学べる1冊です!

いかがだったでしょうか?
今月もバラエティ豊かな集英社文庫でした。
来月の刊行もお楽しみに!

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