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ビストロ⭐︎シュウ14/バッファローウイング

水曜の午後,町まで買い物の帰り道でドレミが疲れ気味だった。

「よし,今夜はステーキを焼いて精をつけよう。」
「…」
どうやらそこまでの食欲はないようだ。
「じゃあ,チリペッパーを効かせたバッファローウイングを作ってやろうか。」
「うん♪」

妻を励ましたいときにボクは天才クッカーである。クッカーとは造語で,なぜコックではないのかと言えば,味音痴の妻以外にはテイストする人間がいないからだ。天才と断定するにはいささか客観的評価に欠けている。

バッファローウイングは渋谷のアメリカンレストランで必ず注文するお気に入りのメニューだ。レシピがなくても味を再現できるのがボクの特技である。ところがJAの肉売場で手羽先を買おうとしたときのことである。ドレミの顔が一瞬曇ったのをボクは見逃さなかった。JAは地産重視で輸入肉を扱わないのでお肉が高いのだ。妻は手羽先の値段を見て今月のやりくりを思ったに違いない。ふと見ると隣に置いてある手羽元はぐっとお手頃価格である。

「ただのバッファローウイングじゃオリジナリティに欠けるから,手羽元で作ろうかな。」
「え?」
「!名付けてバッファローウイングベース!」
「うん!」

天才にとって肉の部位を変えることなどはとても容易いことである。

セロリが売り切れていたので代わりに散らしたのはシュウ☆ハーブ園で暗くなってから収穫したイタリアンパセリである。

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