森田 修

地方自治関係者です。大学の研究員もしています。公共政策全般、エビデンスに基づく政策、政策評価等が専門です。

森田 修

地方自治関係者です。大学の研究員もしています。公共政策全般、エビデンスに基づく政策、政策評価等が専門です。

最近の記事

自治体シンクタンクは地方分権推進の原動力となるか?

1 民間シンクタンクとの違い自治体シンクタンクとは、地方自治体が抱える課題等について調査研究を行い、政策提言等を行う自治体独自のシンクタンクのことです。例えば、戸田市政策研究所、新宿区新宿自治創造研究所、荒川区自治総合研究所、大田区未来創造研究室、かすかべ未来研究所等、各地で設置されています。 設立の背景には、地方分権による地域間競争を勝ち抜くために政策形成力を高める必要があること、自治体を取り巻く環境や課題が多様化・複雑化する中で、科学的な理論に裏打ちされた政策の実施が求

    • 地方自治の先進地・ポートランドに見るまちづくりのヒント

      ポートランドという街をご存じでしょうか。「全米で最も住んでみたい街」「全米一の環境先進都市」「歩行者に最も優しい街」など、数々の名声を博す、米国オレゴン州にある街です。 今回は、地方自治の先進地であるポートランドから日本の地方自治体が学ぶべき点について、私の体験も含めてお話したいと思います。 1 地方自治の先進地=ポートランド私は1か月半という短い期間ではありますが、ポートランド州立大学にプチ留学し、ポートランドで生活したことがあります。自然と調和した街並みは美しく、コン

      • 「民主主義体制の中の非民主主義的な主体」である「職業公務員」の行動原理

        日本の地方自治体の職員は、いわゆる「職業公務員」です。民主主義社会における主権者は住民であり、その住民によって選ばれた首長が行政を担い、議員は行政の執行を監視する役割を担うわけですが、自治体職員はあくまで採用試験で選ばれた「職業公務員」であり、主権者ではありません。しかし、自治体職員がいなければ行政は回っていきません。 東京大学の金井利之教授は、この自治体職員のことを「民主主義体制の中の非民主主義的な主体」と呼んでいます。今回は、金井先生の著書※を参考に、この自治体職員の行

        • 「事業仕分け」を再考する

          2010年度予算編成のために民主党政権が導入し、蓮舫参議院議員の「2位じゃだめなんでしょうか?」発言もあり、一大センセーションを巻き起こした「事業仕分け」。 今回は、この事業仕分けはどんな意義と課題があるのかについて再考してみたいと思います。 1 事業仕分けの事業廃止効力実は、事業仕分けの導入は、国よりも自治体が先であり、2002年から取り組みが行われてきました。 事業仕分けでは、外部の有識者等が公開の場で事業の必要性についてそもそも論から議論し、事業の廃止、継続が決め

          自治体の「政策評価」の再評価を―その4 チェック機能の弱さと外部評価の導入―

          地方自治体に「政策評価」という仕組みが導入されて、約20年が経ちます。 政策評価とは、自治体が実施する政策や施策、事務事業について、それらが成果を上げているのかを把握するために指標を設定するなどして評価し、改善に結びつけていこうという仕組みです。 今回は、この政策評価のチェック機能の弱さと、それへの対応としての外部評価の導入について述べたいと思います。 1 アカウンタビリティ確保の手段としての政策評価もともと政策評価は、当該政策が地域課題の解決方法として適切かを示す、つ

          自治体の「政策評価」の再評価を―その4 チェック機能の弱さと外部評価の導入―

          自治体の「政策評価」の再評価を―その3 民間企業はアウトカムを測定しているのになぜ行政ではできないのか?―

          1 民間企業はアウトカムを測定できるのになぜ行政ではできないのか? 今回は、自治体の政策評価へのよくある批判その2として、「民間企業はアウトカムを測定しているのになぜ行政ではできないのか?」という批判について考えてみたいと思います。 これはよく、民間企業の方が行政を批判する際に出てくる頻出フレーズですが、本当にそうなのでしょうか? 2 民間企業における評価基準 民間企業には、誤解を恐れずにいえば、「利益」のような明確な評価基準があります。 「企業の目的は利益ではない」

          自治体の「政策評価」の再評価を―その3 民間企業はアウトカムを測定しているのになぜ行政ではできないのか?―

          自治体の「政策評価」の再評価を―その2 アウトプットばかり評価していては意味がない?―

          1 自治体の政策評価へのよくある批判前回は、自治体の政策評価における指標設定の難しさについて述べましたが、今回はその続きです。 自治体の政策評価に対しては、以前から様々な批判がされています。ただ、それらの批判の中には、感情的なものや理論的でないものも散見されます。 よくある批判として、「アウトプットばかり評価していては意味がない」もしくは「アウトカムを測定しなければ意味がない」というものがあります。 今回は、この批判について考察してみたいと思います。 2 アウトカム指

          自治体の「政策評価」の再評価を―その2 アウトプットばかり評価していては意味がない?―

          自治体の「政策評価」の再評価を―その1 指標設定の難しさ-

          自分の頭の中を整理する意味も含めて、自治体の「政策評価」の課題について、何回かに分けて、思うところを書いてみたいと思います。 1 政策評価とその課題自治体に「政策評価」という仕組みが導入されて、もう20年近くが立ちます。政策評価とは、自治体が実施する政策や施策、事務事業(以下「政策等という。」について、それらが成果を上げているのかを把握するために指標を設定するなどして評価し、改善に結びつけていこうという仕組みです。 行政改革のツールとして大きな期待とともに導入された政策評

          自治体の「政策評価」の再評価を―その1 指標設定の難しさ-