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月の帳

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#小説

月の帳⑤

 二人は手を繋いで、闇の森を駆けた。木の根に足を取られないように注意しながら、なるべく早く小屋から離れようと走った。子豚も息を切らしながら、ホタルの後をついてくる。果てのない暗い森は、隠れるには絶好の場所だった。しかし、今自分たちがどの辺にいるのかまるで見当がつかなかった。小屋の周りをぐるぐる回っているだけかもしれない。

 暗闇が再びホタルの心を喰い始めた。ホタルは徐々に歩幅を狭め、走るのを止め

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月の帳④

 どのくらいの時間が経っただろう。足場の悪い暗闇を手探りで進むのは、ひどく神経をすり減らした。明らかに躓く回数が増え、歩くスピードも落ちていた。そもそも時間などこの森では無意味だった。この森は内部と外部を切り離し、永遠の闇と静寂を抱いて結晶となっているのだ。そして森は闖入者を決して逃さない。

 太い根に足を取られて転んだ。頬を地面に打ち付け、脇腹の辺りを根が突いた。ホタルは激しくむせた。痛みと苦

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月の帳③

 果てのない落下の中、ホタルは目を覚ました。ホタルの体は、空を見上げながら降下を続けていた。月の大きさは変化がない。ホタルは空中で器用に体を捻って反転した。地面がぐんぐんと迫っていた。ホタルは来るベき衝撃に備えて体を丸めた。ホタルの体は木々が鬱蒼と茂る森に突っ込んだ。

 葉の騒ぐ音や、枝が何本も弾ける音が聞こえたと思ったら、全身に平手打ちをされたような衝撃を受け、最後には大量の水に体を包まれた。

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月の帳②

そこは、地平や重さがあるような無いような、朧げな場所だった。白く澱んだ空気の中を、体がふわふわと漂っている。ホタルは軽い目眩を覚えた。誰かの夢の中に間違って迷い込んでしまったような感覚だった。

振り返ると、シマウマがいた。シマウマはホタルのように頼りなく浮遊することはなく、彫刻のようにバランス良くきちんと立っていた。やがて美しい翼を孔雀のように広げた。それは何かに祈るような仕草に思えた。

突然

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月の帳①

 ホタルという名の少年が、羽の生えたシマウマの背で目を開くと、辺りはバケツいっぱいの金平糖を撒いたような星空だった。

 星々は針で突いたような小さなものからビー玉ほどもある大きなものまでひしめき合って夜空を埋め尽くし、時たま流れ星がその間を縫って走った。尾を引く箒星は、弧を描いて地平の彼方へ消え、残された星屑はゆっくりと中を漂いながら、天の川の本流に飲まれていった。

 星たちは静かな光と柔らか

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