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N1インタビューから始めるエンジニア採用広報
2024年下期はカンムの採用広報への取り組む姿勢を大きく変えた転換点になりました。細かいものに触れずざっくり言うと
エンジニア採用広報をプロジェクト化した
エンジニア採用広報ロードマップを作成し、運用をはじめた
2024年に公開されたテックブログの本数が2023年の倍になった
などの変化がありました。そのきっかけになったのがエンジニアへのN1インタビューだったので、その効果効能を書いてみたいと思います。
前提:N1インタビューってなに?
「N1インタビュー」とは、西口一希さんが提唱したマーケティング分析手法、1人のユーザー(N=1)に対して深くインタビューを行う手法を指します。主にプロダクト開発やユーザーリサーチの文脈で使われることが多いです。
インタビューニュービーのぼくが実施していたのはマーケティングチームが行うほど厳密なN1インタビューではないと思いますが、これらの知識を聞きかじってエンジニアのインサイトに深く潜りに行く姿勢を取っていた、くらいに思って読み進めてもらえたらと思います。
インタビューをはじめたキッカケ
このインタビューは、端的に言うと何にリソースを投下したらインパクトの大きな効果が見込めるのか?を判断するために、ターゲットエンジニアのインサイトを知り、転職者ジャーニーマップを作ろうという流れの起点で始まりました。
転職者ジャーニーマップとはカスタマージャーニーマップというフレームワークを転職候補者用に転用したものです。
カンムのターゲットとなるエンジニアのペルソナを定義して、このペルソナに近い社内・外のエンジニア10名ほどにお願いして、ひとりあたり1〜1.5時間ほどインタビューさせてもらいました。
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インタビューでは、1つのトピックについて以下のように複数の観点で深く触れていました。
転職が頭をよぎった瞬間はどんなときか
なにがトリガーになってそれが生まれたのか
そのときの感情の変化はどうだったか
その結果どんなアクションに移したか
そのアクションを取った理由は何か
転職の検討フェーズに応じてそれぞれの質問を変えつつ、そのときのアクションや意思決定、感情の流れを振り返っていきました。インタビューの質問設計では、以下の記事を特に参考にさせていただいていました。
N1インタビューから転職ジャーニーマップを作る
10名程度のエンジニア一人ひとりに丁寧にインタビューすると、実際にどのように企業情報に触れるのか、どんな情報を手に入れにいくのか、なぜその要素に重きを置くのか、そのときはどんな感情だったのか等、ターゲットインサイトへの解像度が明らかに上がりました。
そしてプロセスごとに要素をマッピングしていき、ターゲットの重要なインサイトを見出します。
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重要なインサイトに触れる
自分が衝撃を受けたインサイトのうちの1つに、カンムがターゲットにしているエンジニアは転職媒体等で新規の会社を検索しないというものがありました。
これは「すでにカンファレンスなどで知っている会社や知人がいる会社なら、真っ当に扱ってもらえるだろうという見立てがあるため、あえて時間をかけて新規のいい会社を探すようなことはしない」というのがざっくりした理由で、これはエンジニアが売り手市場であることの他に、私たちがターゲットにしているミドル〜シニアなエンジニアはライフステージが進んでいる方が多く、可処分時間が多く取れないというのも理由になっている人もいました。
見えてきたインサイトから、ぼんやり「そうだろうな」と思っていた課題感にパキッと輪郭が現れ、いかに転職検討時に第一想起群に入れるか?というのがカンムのエンジニア採用において至上命題になりました。と同時にいま優先度高くリソースを振れていないことに強烈な危機感が生まれ、すぐにエンジニア採用広報をプロジェクト化しました。(今まで全くやっていなかったというわけではなく、リソースの関係で優先順位が下がっていました)
切迫した危機感が原動力を生む
採用広報は「XのポジションをY月までにZ名採用する」という日々の採用活動のような具体的な粒度のミッションになっていないことが多く、課題の定義から必要な抽象的な取り組みです。
採用広報を「どの会社もやってるし発信しておいたほうがよさそう」くらいの温度感で取り組んでいると、人事自身のなかで優先度を上げることも難しいでしょうし、「テックブログを書いてほしいです!」等チームに働きかける際の背景の説明に臨場感が生まれにくくなったりするのではないかと思います。かく言うわたしもそうでした。
自身でN1のインサイトに触れ、生まれる強烈な課題感が、自身を採用広報に駆り立てる、強力な原動力になると思います。
「採用広報に力をかけたいけど何からすればいいのかわからない」という方がいたら、「まずプロジェクト化」のように How から考えるより N1 インタビューを通して、ターゲットへの解像度を上げ、自身に強烈な課題感(なぜやるのか=Why)をまず芽生えさせるというのは有効な進め方のうちの1つなんじゃないかな〜と思います。
エンジニア採用広報の進め方、みたいなもっと概観の内容も書きたかったんですが、この記事の主訴ではなかったのでそれはまた別で書きたいと思います。
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