会社の成長を阻む求人要件メーカーにならないために
採用をはじめましょう!となったときに、まず「どんな人を採用するのか」を定義する求人要件。この求人要件をちょうどいい塩梅にして運用する難しさに日々頭を抱えています。
その過程で図らずも「あ、これは会社の成長を鈍化させているかもしれない」という求人要件を5京回つくってきたので、これを読んだ人が同じ轍を踏まないよう、反省もかねて求人要件アンチパターン発表ドラゴンをします。前回の記事に引き続き、私はいつまでアンチパターンを供養し続けるのでしょうか。
会社の成長戦略とリンクしていない
部門の目標を会社の目標からブレークダウンして考えるように、求人要件も会社の描く戦略から下ろして考えるべきです。会社の成長に必要な人材と、部門が今欲しい人材を符号させる必要があります。
ときに、採用したい部門からあがってきた求人要件はそうでないときもあります。退職補充のタイミングなどで「今いま足元の業務を回したいから、こういう人がほしい」という発想から求人要件を作ることは少なくなく、会社の成長戦略にしっかり接続していないときがあったりなかったり。
求人要件は「単に当該部門でいま困ってることを解決できる人」を採用するためのものではなく、「会社の目標達成に向けて当該部門で採用すべき人」を定義するものと整理していて、これらは似ていてしかし非なるものです。
例えば、セールス部門のセールスメンバーの退職補充の採用が発生したとして、抜けた人の業務をとりあえず回せるよう同じ水準のセールスメンバーを採用する、といった意思決定があったとします。
ここで今後の会社の成長戦略をスコープにいれて「1年後には部門長からチームのマネジメントが離れている状態が必要だなあ」など組織に必要なケイパビリティをイメージすると、実はセールスに強いだけではなく、チームをリードできる素養のある人を採用すべきでは?という観点が出てきたりします。
自社が目指す北極星に対して、「中長期(1~2年程度)、短期(半年~1年程度)でこの部門が得たいケイパビリティ・アウトカムはなにか?」を考えながら求人要件を整理していくと、この近視的な求人要件を回避することが出来ると思います。
青い鳥採用
「採用できるなら、求めるスキル・経験がモリモリであればあるほどいい!」というのはよくわかるのですが、採用の要件を強く、希少に寄せるほど、母数が少ない上に、他社でも引き合いが強く競合に勝たなければいけない、という厳しいハードルを何度もかい潜り続けることが要求されます。こういった難度の高い、理想を追い求め過ぎる採用は、幸せの青い鳥の話にかけて青い鳥採用と呼ばれたりします。
青い鳥採用を回避するための方法はいくつもあると思いますが、効果的なバランス調整の1つの択として、求めている要件を「入社時に必ず持っていてほしい(入社後に習得が困難な)ものか」「入社時にも持っていなくてもいい(=入社後に低コストで習得可能な)ものか」を整理することで、ターゲットの拡張が見込めたりします。本来的に歓迎要件でよいものを、必須要件に置くことで狭くなっているターゲットを拡張する取り組みですね。
エージェントさんからの情報提供やスカウト DB の検索結果で、ターゲットの大まかなボリュームが見えてくると思うので、それらを元に採用部門のパートナーと会話してチューニングするのがいいかなと思います。
要件ボーダー付近の人材の可能性を探求しない
これは要件設計後の取り組みというか振る舞いですが、意図的に書きたくて書いています。必須の要件に対して固執しすぎず、採用ボーダーの付近の候補者の可能性も探索するほうがよいと考えています。
採用後のミスマッチの損失については、実態としてわかりやすく発現するため留意されることが多いですが、実はマッチしていたかもしれない候補者を不採用にしてしまう損失については前者ほどわかりやすく発現しないため、振り返りの材料が乏しく、フォーカスされにくいと思っています。事実、採用ミスマッチという言葉はよく耳にしますが、後者の損失(ここではマッチロスと形容します)に関する表現はあまり耳にしないと思います。
「特に採用競争力の強い会社でないほどこの振る舞いは必要だと思っていて、自社が求める人材の必要十分な要件にいかに寄り添えるかは、難度の高いポジションの採用スピードに強く接続されると考えています。
採用に必要な要件から多少ショートしていても、それを補って余りある何かの有無にも目を向け、複合的に判断することが肝要です。
以前のぼくは「採用対象は要件を高い水準で満たし、一騎当千であるべき」と強めの思想を持っていて、採用のスピードを毀損していた時期がありました。(カス)
強いメンバーと働けることが福利厚生であることは間違いないですが、採用の目的は(ちょっと無機質な表現ですが)会社の目標達成に必要な HR リソースを獲得することです。採用人事の矜持より優先度が下がっていいものではありません。
この強いこだわりの優先度を下げるときに「社員から強いメンバーと働ける機会を奪っていいのか?」という自問に、うまく回答が持てないときもありました。
ただスキルや経験の強度以外にも、例えば面接の数時間では見えてこなかった姿勢や志向などで刺激を受けることもあれば、自分が見たことのない方法で成果を出す人もいたりして、考えを改めました。
また別の観点で、もし採用のスピードが遅くなり、会社の成長を遅らせてしまった場合、本来会社の成長に伴って社員が得られていたはずの挑戦の機会や、モメンタムによる高揚感、売上の成長による給与へのフィードバックなど、採用が遅れることで社員が得られないものをきちんと天秤にかけるべきでした。
とはいえ採用人事が持つ強いこだわりは捨てましょうという話ではなく、きちんと会社の目標と符号させられたらいいなと思っています。「健全なプライドはいい仕事に必要不可欠だよ」って何かのゲームで言ってました、ぼくもそう思います。
求人要件の最後の砦に
採用したい人材の強度と採用の難度をバランスした、ちょうどいい求人要件を作り、運用するのはとても難しい取り組みです。
最も採用について長く触れ、思いを馳せている私たち採用人事が、求人要件の最終的な品質を司る砦であれたらいいなと思っています。
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