日進月歩 ~Road to MBA~#64
2020/12/12:企業財務基礎⑩
前回に引き続き土曜日は、ファイナンスといえばこの人と呼ばれる下川先生による企業財務基礎の10回目です。前週のWACC(加重平均資本コスト)に基づいた最適資本構成の考え方について、学びました。
まず最適資本構成とは何か?
最適資本構成:
企業価値を最大化する負債(D:Debt)と株主資本(E:Equity)の構成比のことであるが、未だに理論的な導出方法の提示はされていない(税金がない世界では、「MM理論」によって証明されている。)
要は、どのくらい銀行から借金をするか、どのくらい株主から調達をするかという割合を考えることだと認識した。日本の中には、「借金は悪だ」、「借金ができるということは信用力がある証だ」、「中間をとって半分くらいの資本で賄うのがよいだろう」と考える経営者もいるなど、多様な資金調達の考え方が存在しています。しかしながら、経営者にとって企業価値を最大化していくためには割合が存在するといった最適資本構成は、ファイナンス理論において非常に重要なテーマとして位置付けられています。
良く見受けられる戦略事例として、”社債を発行して自己株式を取得する財務戦略”があります(以下図のように資本構成は変化)。負債コストは資本コストよりもコストが低いため、負債で調達する方が企業価値を高めるには有利であるという考え方があるが・・・現実はそうではない。
では、どこに負債と資本の最適な構成があるのか。
完全な資本市場を仮定した場合の資本構成は、「企業価値に影響を与えない(最適資本構成は存在しない)」と理論づけたMM理論が有名である。
MM理論:
※第一命題=税金や取引に関わる費用が存在しない完全な資本市場においては、資本構成(負債と株主資本の組み合わせ)は企業価値に影響を与えない
※第二命題=投資政策に変更がなければ、企業の市場価値は配当政策によって影響を受けない
先ほど現実の世界はそう単純なものではないと述べたが、現実の世界には4つの市場における不完全要素が存在している。➀税金の存在、②倒産リスクの存在、③エージェンシー費用の発生、④情報の非対称性の存在があり、この不完全要素によって、完全な資本市場が存在していないことが現実に起きている。そのため、MM理論だけでは「最適資本構成」を見出すことが難しいのが現状である。考えていく要素として、”企業価値はフリーキャッシュフローを加重平均資本コストで割引くことで算出される”、”負債によって資金調達をすると節税効果はあるが倒産リスクが高まる”など、本日の内容をまとめると以下のような見解が起きる。
✓ 伝統的見解:最適資本構成は存在(負債を中程度)
✓ MM理論:最適資本構成は存在しない
✓ 法人税を加味したMM理論:最適資本構成は存在(負債100%)
✓ トレードオフモデル:最適資本構成は存在(限界節税効果と限界期待倒産コストの等しくなる点)
このように考えると、日本企業の多くが「無借金」を美徳としている現状は、ファイナンス理論(最適資本構成)からすると相当に特異な状況にある。なぜ、この過剰ともいえる資金調達が進んでいるのか、それは財務の効率性よりも安全性を重視するリスク回避の傾向が強いことがあげられる。
しかし、前日の自主勉強会(#63)で学んでいた「東京証券取引所の再編」と紐づく内容も出てきており、リスク回避の傾向が多い日本企業が、最適資本構成を考えるように変革しなければいけない時期にきているのかもしれません。
平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科