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日進月歩 ~Road to MBA~#41

2020/11/9:シードマネジメント特講1A⑦
 前回に引き続き月曜日のシードマネジメント特講1Aという実務家であり、実務と学問を融合させている笠原先生の講義の7回目です。秋学期1では「Rogers(2016)」におけるCCDIVを中心に学ばせていただき、はやいもので、本日が最後です。秋学期2は、同様に笠原先生の「シードマネジメント特講1B」という講義を受講する予定です。

 本日は前半で、CCDIVにおける最後の要素「Value(価値)」について講義をいただきました。おなじみの例である”ドリル”の例をもって、顧客のニーズの本質を考えていきたいと思う。

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 上記を要約すると、顧客は”ドリル”が欲しいのではなく、”穴を開けたい”というニーズをもっているということである。企業がこれをきちんと理解をしないと、「マーケティング・マイオピア(近視眼)」になってしまい、大切な市場機会を逃してしまうということでもある。きちんと顧客価値を評価していく方法として、先生から【コロナ禍でのビジネススクール】を題材とした例を、”顧客の立場”で考えることを前提とした上で、以下ステップをご説明いただいた(計6ステップ)。

0:受け取る価値に基づく主要セグメント(顧客のグループ構成)
 ※業界の「産業バリューチェーン」を基に、全てのメンバーを網羅する
           ⇓
1:各セグメントにおける現在の提供価値の定義
 ※何を価値提供しているのか(全体もしくは各セグメントで把握)
           ⇓
2:新たに生じる脅威の特定(環境変化による購買行動変化も含む)
 ※新技術、コロナ禍におけるライフスタイルの変化、競合や代替品
           ⇓
3:現行の価値要素の強みを評価(弱みもできれば)
 ※立教大学の例でいくと「知識、愛校心、ネットワーク」など
           ⇓
4:新たな潜在的な価値要素の創出
 ※新技術、社会文化/環境、満たされないニーズ(Jobs-To-Be-Done)
           ⇓
5:新たな将来指向的な価値の総合的提案
 ※破壊的イノベーションを目指す(辞めるもの、始めるものを見つける)

 また、ビジネススクールの脅威としてあがったGoogleの新しい教育サービス「Google Career Certificates」は、私の中ではポイントとして大きく4点あると感じました。後はなんといっても”Google”というブランド価値です。
 Point1:6か月という短期間で受講可能
 Point2:ハイレベル教育における受講費用の安さ
 Point3:受講者の就職先支援(Googleへの入社や他企業への実地研修)
 Point4:コンテンツにおけるプラットフォームへの期待
その中で、日本独自の人事採用における問題点から考えると「資格・学位」などを重んじる文化など、学位が出せないといった点もあるので、広がりと今後の動きにも注目したいところです。それを踏まえた上でも上記のPoint3において優秀な人材を確保したい企業、Point4において教育を受けている受講生をターゲットにした企業においては、喉から手が出るほど利用したいサービスになるのではないか、Googleが教育業界においてプラットフォーマーになることはそう遠くないのかもしれない。


 後半はゲストスピーカーの株式会社エクサウィザーズ取締役である大植様をお招きして、DXを実務の側面から事例もまじえてお話いただきました。AIを用いた様々な社会課題解決に向けての取組みをしている企業となります。改めて”DX=デジタルトランスフォーメーション”の定義を整理した上で、AIを活用した様々な事例をご紹介していただきました。
※株式会社エクサウィザーズ:https://exawizards.com/

本講義内における「DX」は以下で定義:
⇒アナログな製品やサービスがデジタル化され、ビジネスモデル・社会を変革し、企業文化・風土までもが変革されること

 まずはホットペッパービューティーの事例をご説明いただき、元々はフリーペーパーをアプリ化しているサービスとなるので、ここまでではDXとは言えなかった。しかしながら、そこから「美容院」もターゲットにし、サロンの空き状況データを取得し、双方に予約管理システムやそのリコメンドに基づく広告などを加えて、ユーザー数と収益を伸ばしている。今までの美容院予約をビジネスモデルから変革させ、美容院の文化や風土までもを変革した事例となる。他には、『不動産業界におけるAIを基にした推定成約価格の算出』、『外食チェーンにおけるスキルマップとの連動によるシフト管理システム』、『介護業界におけるユマニチュード推進におけるデジタル化と動画解析活用』についてご説明いただきました。様々な事例がある中で、必要であるし便利とも分かっているが浸透していない日本のDXを”どうDXを推進したらいいのか”、組織や文化と絡めて質問をさせていただきました。

 まずは大企業・・・私なりに必要な要素として、①規模の大きさ(データ数・顧客数)と、②開発のスピード(自社で持つべきコア・コンピタンスと分析できるだけのデータ取得)であると理解をした。しかし、これを持っていてもDXが進まない企業はある中で、課題となるのは「経営層のデジタル化への理解」があるのではないだろうか。経営層への問題意識の醸成、デジタル化への理解、ビジネスモデルや文化などの変化へ柔軟に対応する必要性などを、コンサル企業が”教育”として提供し、組織改革も含めて地道に広げていく必要があるなと、改めて感じさせられました。
 次に中小企業・・・日本にはベンチャー企業でない中小企業が多く存在する。その中で、いざAIなどの新しい技術が必要で投資しても、投資対効果が得られるまでの時間が不明確で、先に体力がなくなる。分析できるだけのビッグデータをとろうにも、規模がないなどの問題がある。打破する答えとしては、「プラットフォーマーが提供できるビジネスモデルを構築できるか、言い換えると資金がある企業がビジネスモデルを浸透できるまでやりきれるか」ということであった。本気で社会課題に取組みをする企業、課題をやりきる覚悟といった企業が存在することが重要であるとも理解した。ネックは資金調達になるが、産官学連携を活用した「ソーシャル・インパクト・ボンド」、ここでもこの話を聞くことになった。産官学連携・・・このキーワードが今後更なる注目を浴びてくるのではないかと感じています。


 今回の講義は、今までの笠原先生との講義と共通する部分もあったが、違った視点(実際に実務で携わっている視点)からの話が多く、とても気づくことが多い講義であった。「鳥の目」と「虫の目」といった、視点の違いによる気づきは今後も大切にしていきたい。

        立教大学大学院ビジネスデザイン研究科   平岩 宗

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