哭声/コクソン(ネタバレ)
곡성
The Wailing
公開 2016年 韓国
監督 ナ・ホンジン
出演 クォク・ドウォン
ファン・ジョンミン
國村隼
チョン・ウヒ
15年くらい前に話題になった映画「チェイサー」、そして「悲しき獣」のナ・ホンジン監督のホラー?映画。
ホラー映画といっていいのか微妙だけど、物静かで淡々とした恐ろしい話。
國村隼氏が重要な役で出てるのだけど、さすが貫禄ありすぎた。以下ネタバレ。
忙しい人のためのあらすじ(ネタバレ)
トチ狂った住人が自分の家族を皆殺しにするとかいう酷い事件が起きた谷城(コクソン)の小さな村。ちょうどその頃移住してきた日本人の國村隼が何とも怪しい雰囲気を醸し出していたので疑っていたら悪霊だの何だので娘もゾンビみたいになって祈祷師も出てきてしっちゃかめっちゃか。まさにヘルタースケルター。
忙しい人のための感想
・とにかく國村隼の演技がすごい
・主人公はもっとやりようがあった
・子役の演技もすごい
登場人物
ジョング(クァク・ドウォン)
本作の主人公で警察官。妻と娘と母親の4人で暮らす。二択を常に間違える性質を持つ彦麻呂みたいなおじさん。
國村隼(國村隼)
谷城にやってきた謎の日本人。釣りと儀式が趣味。カラスと犬を飼っている。
イルグァン(ファン・ジョンミン)
祈祷師。國村隼を祓うために雇われた。
ムミョン(チョン・ウヒ)
意味深に立ち回る白い服の若い女性。石を投げてくる。
ヒョジン(キム・ファニ)
ジョングの娘。
イサム(キム・ドユン)
助祭の若者。日本語が少し話せる。
概要
かなーり解釈の難しい映画なのでとりあえず最後まで内容を書きますね。
完全ネタバレ注意ですよ。
まず谷城(コクソン)のある村で、住人が自分の家族を無惨に殺害する事件が起きるんですね。殺した当人は目が濁ってて全身に湿疹。完全に心神がイっちゃってる状態。調べたら幻覚作用のあるキノコの成分が検出されたってので、キノコのせいってことで一旦は収まりかけると。
なんですけどその頃、國村隼っていう日本人が村に唐突に住むようになって、人里離れた小屋に獰猛そうな犬飼ってて、ふんどし一丁で山の中を闊歩してるとか、近づいてきた女性を襲ったとかよからぬ噂がいくつかあって、もしかしたらあいつの仕業なんじゃないのって流れになるわけです。
そこからは、同じような事件が何度も起きながら、警察官である主人公ジョングが事件解決に向けて動くという感じのアレなんですけど、まあ色んな人の話を聞く限り、日本人の存在も無視できないってことで、彼の家に行ってみるんですわ。しかし國村隼はたまたま不在にしていて、話を聞くことはできずで。でもそのかわりに、部屋の中で無数の住民たちの写真を発見。うわ〜これで何か…呪いみたいなんかけてる?いやいやそんなおとぎ話じゃあるまいし…一旦帰ろと。一旦昼寝しよと。
ジョングには妻と子供がいて、娘のヒョジンがある夜悪夢にうなされて「知らないおじさんが家に入ってきた」と訴えるんですね。んで、その日を境にヒョジンは聞いたこともないような暴言を吐いたり、嫌いだったはずの魚を思うさま貪り食うようになったりして。
ここで、先の事件でいろんな話を聞いていたジョングの中では「知らないおじさん=國村隼」となって、大事な娘に何してくれてんだこの野郎となり、國村隼へのヘイトがどんどん高まっていくと。そして追い討ちをかけるように、ヒョジンの体に湿疹が出はじめると。
日本語が少しわかるという同僚の従兄弟の助祭を連れ、再び彼の家を訪れるジョングたち。今後は在宅の國村隼。
ここへ何をしにきたのかジョングが問い詰めても、彼は「言っても信じないだろ」といって何も答えない。おぞましい無数の写真もすべて燃やしたという。何を言ってもダンマリを決め込む國村隼に業を煮やしたジョングは、彼の家を破壊しだします。これには助祭もドン引き。
暴れるジョングに國村隼の犬が襲いかかってくるんですが、ジョングはこれをぶっ殺しちゃって。もう犬まで殺して引っ込みがつかなくなったジョングは、平静を装って「三日以内に出ていかないとお前も死ぬぞ(震え声)」と吐き捨ててその場を去ります。
さて、ここでもう一人の主人公・祈祷師のイルグァンが村にやってくる。娘の様子がおかしいのでジョングの家族が呼んだんですねー。
イルグァンはジョングの家の敷地内を見回すと、醤油の甕を持ってこさせ、やにわに木の棒で叩き割る。するとなんと中から玉のようなカラスの死骸が。グエエ。なんかえらくえげつない悪霊が憑いてるらしいよ。ほんとかよ。んで、その後えらくやかましいおもしろ祈祷してヒョジンは泣いてるし…やっぱ霊が憑いてる…のか?やかましいからじゃないの?
「最近会ってはいけない相手に会っただろ?そいつを挑発してないか?」とイルグァンがいいます。そんなん思い当たるふししかないじゃん。國村隼じゃん。いわく、今まで見てきた中でも一番厄介な悪霊らしい。娘だけじゃなく、村全体を滅ぼすほどだと。
彼には殺を打つしかないというので、大枚をはたいてその儀式みたいなのをやってもらうことに。イルグァンが叫び、剣を振り回し、鶏の喉を切り裂き、謎の木を切り倒す儀式ですね。ちなみに絶対に笑っちゃいけないです。
んでちょうどその頃、國村隼も市場で買ってきたカラスを使って儀式みたいなのをやってて。
イルグァンが切り倒した木に杭を打つと、國村隼は胸をおさえ苦しみ出すし、ヒョジンも苦しみ出すし。
もう儀式のボルテージはMAXよ。
でもヒョジンがあまりにも苦しむので、シンプルに心配になった母親が「もうやめて!」と訴えたので、ジョングが力づくで儀式をやめさせてしまいます。やらせときゃよかったのに。
國村隼も「間一髪助かった〜」みたいな感じで息を吹き返します。
もう超常的なものには頼れないと覚悟を決めたジョングは、仲間を連れて國村隼の討伐へと向かうわけです。もうインファイトしかないんです。
しかし國村隼は不在。そのかわり別のイっちゃってる奴がお出迎え。もうほぼゾンビ。ゾンビといって差し支えないやつ。歩く死人。助祭が頬を噛まれて阿鼻叫喚。でも何とか農具で撃退。森のかげに潜んでいた國村隼も発見し、追いかけるも、あと少しのところで見失ってしまう。
諦めて車で帰宅中、崖から落ちてきた何かを轢いてしまうのですが、それがなんと國村隼。よくわからんが死んでるようなので、さらに崖から落として討伐完了の運び。
病院に戻ると、回復している様子のヒョジン。
よっしゃー!悪霊だかなんだか知らんけどやってやったどー!ってなる。
その頃、ジョングの同僚(助祭の叔父)が同様に親族を殺害する事件を起こします。毒キノコの入った健康食品を食べたのが原因だという。
実は結構序盤から意味深に出てくる白い服の若い女がいるんですが、通称・犯人は國村隼ネキ。とにかく國村隼が犯人と確信しているようです。
國村隼がジョングたちの車にはねられて死んだ時も崖の上で意味深に見下ろしてました。
ここで謎にイルグァンがジョングの家に戻ってきます。中の様子をうかがうイルグァンでしたが、なんか鼻血がドバドバ出てきて、なんだと思ったら、暗闇からこの若い女が出てきて、帰れと威嚇してくると。そしたらありえないくらいの胃液なのかなんなのか分からないけど尋常じゃない量の嘔吐をするイルグァン。慌てて逃げ帰ります。
さてここからクライマックス。
ジョングの携帯にイルグァンから電話が。出ると、今すぐ自分の家に帰れとイルグァン。そして、自分の霊視は間違っていたと。
・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
國村隼は悪霊じゃあない 悪霊はあの女だったッ
・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・
國村隼はオレと同じ祈祷師で、村を守ろうとしていたんだァーッ!
ジョングはわけがわからなかったが、とりあえず急いで家に帰ってみる。
すると、あの若い女が。
あの祈祷師のことは信じちゃダメ。とかなんとか。
鶏があと3回鳴くまで帰っちゃダメとかなんとか。さもなければ家族全員死ぬとかなんとか。
もう何を信じていいのやら…。
一方その頃助祭のイサムは、なんか洞窟みたいなところに来ていた。
そこにはなんと死んだはずの國村隼が。
イサムは彼の正体がどうしても気に入になるようだ。
女のことも祈祷師のことも信じきれずにいたジョングでしたが、
女のそばにヒョジンの髪留めが落ちていることに気づきます。
そして、女が羽織っているカーディガンが、正気を失った村人のものであることにも。
ジョングは血相を変えて自分の家に行く。すぐ行く。走って行く。
だが、時すでにおすし。
ジョングの家の台所は血まみれ。
奥さんはかろうじて息があるようだけど…
絶望のジョング。
おもむろにカメラを手にとりイサムに向けシャッターを切りはじめる國村隼。困惑するイサム。
そして彼が次にファインダーから顔を上げると、その顔は人間のそれではなかった。黒い皮膚に赤い目。まるで悪魔。
最後は、また謎にジョング家に戻ってきたイルグァンが、事件現場を写真におさめ、
車の積荷から國村隼が燃やしたと言っていたはずの村人の写真が・・・
とこんな感じの話。
わけがわからないでしょ?
うーん、どういうことなんでしょうか。
調べてみると、監督は國村隼の存在について、イエス・キリストをモデルにしたと発言しているみたい。
確かに映画の冒頭と最後の國村隼の台詞に聖書の引用があるし、國村隼の手のひらには聖痕(キリストを磔にした時の傷)らしきものも確認できます。
國村隼=(人智を超えた)よそ者
ジュングたち=キリストを磔にした者たち
祈祷師=國村隼の存在を利用して金儲けを企む者
白い服の女=真実を知る導者的な者
って感じでしょうか。知りませんけど。
考えれば考えれるほど謎な映画です。
でもまあとにかく國村隼氏の演技がすごかった。日本の出演作でもこれほど存在感のある役もないでしょう。
娘役の子もかなり圧巻でした。