世界最古のカップ戦
先発出場してこそ
イングランドサッカーFAカップ3回戦、ブライトン対ミドルズブラの一戦。
結果は5-1でブライトンの勝利。
ここまで好調を維持している三笘選手も先発出場。1アシストを記録して64分で途中交代というのが表立った結果だ。
チームプレー重視
この試合はブライトンが押し込む展開が多く、サイドチェンジが一つの有効手段となっていたことは、三笘選手にも有利に働いていた。
実際、彼のドリブルやパスの成功率は高く、ポジティブな内容に見えた。
しかし、データほど内容が良かったとは言えない。
手放しで三笘選手を褒められない課題がある。
相手チームはブライトンをしっかりスカウティングしていて、ブライトンによる両サイド攻撃の対応も準備していた。
しかし90分通してのクオリティは低く、ブライトンを翻弄するまでには至らなかった。
その中で三笘選手は、序盤から頻繁にポジション移動を繰り返していた。
特に内側に入っていく動きは、これまでの試合より意識していたように見える。
それに比例して、三笘選手とコンビを組むサイドバックのエストゥピニャン選手が頻繁に攻め上がっている姿が見られた。
いわゆるハーフスペースの活用を含め、サイドバックとの連携パターンを増やして攻める形をチームと三笘選手は模索しているようだった。
これは、今後の試合で相手が彼を研究・対応してくることへの中長期的な対策だろう。
この試合では少なくとも二つの課題が挙げられる。
ボールロスト
一つは連係ミス。
W杯後、三笘選手に集まるパスは明らかに増えた。
信頼を得て、攻撃時のスイッチとしての役割が定着しつつある。
味方サイドバックとの連係も深まってきていた。
ブライトンの攻撃の特徴は両サイドバックが大胆に前に出てくる点にある。
非常に有効な攻め方だが、リスクのある戦術でもある。
特にショートカウンター気味に攻撃を始めた際には、ミスは禁物だ。
途中でボールを奪われてしまうと、今度は相手によるカウンターのチャンスが生まれることになる。
この攻撃のスイッチが入った時に、三笘選手がボールを奪われるシーンが何度かあった。
しかも、彼のボールロストから相手のカウンターに繋がってしまっていた。
ブライトンの失点シーンの起点は、まさに三笘選手が悪い形でボールを奪われたところから始まっている。
三笘選手がサイドのタッチライン間際に位置してボールを受けた場面では、一対一もしくは一対二のドリブル対決になることが多いので、ボールロストしてもそこまでリスクはない。
味方の守備がしっかり対応してくれるし、相手ディフェンダーのクリアボールがタッチラインの外に出てスローインやコーナーキックになりやすく、プレーが止まるからだ。
しかし今回の試合のように、三笘選手が内側に入ってボールをもらう際には、チームメイトとの連係が必要になる。
彼がボールを受けると、前線の味方選手達がチャンスの匂いを感じ取り始める。ゆえにゴール前への意識のギアが一段上がり、色んな選手が連動して攻め上がる動きを見せる。
ここで大事な点は、最後まで攻め切るということ。
選手たちはリスクを冒して駆け上がっているので、この瞬間は、守ることを無視した動きになる。
このハイリスクな場面で、三笘選手のプレーが軽かった。
ピッチの内側にいるということは、ボールロストしてもタッチラインを割ることがほとんどないため、瞬時に守備にまわらなければならなくなる。
味方を探しながらのドリブルはキレが悪く、判断が遅れていて、まだ試合で使えるクオリティではなかった。
密度の濃い局面なので、実践に向けてこの点を今後いっそう突き詰める必要がある。
フィニッシュとコンディション
もう一つの課題がドリブル突破後のパスだ。
相手を抜いた直後、ゴール間近に迫っている局面でのパスは、これから工夫と連係が必要になる。
三笘選手のドリブル突破はタッチラインぎりぎりまで利用することが多く、その場合、次のプレーエリアが狭くなり選択肢が限られてくる。
そこからマイナスのボールやファーへのパスなどの形を築いておく必要がある。
フィニッシュの精度はチームメイトとの信頼関係が欠かせないが、これは今後向上していくだろうと予期できる。
三笘選手自身、今はプレミアリーグ1年目としては上手くいっている。
今はチャレンジしていく中で、ミスしても多少許されている部分が少なからずあるかもしれない。
時間の経過とともにこの状況は変わり、大事な局面でシュートを外したり、パスとシュートの判断を間違えた時に強く批判される時が今後必ず訪れる。
その状況を打開するには結果しかない。
特にプレミアリーグのようにビッグマネーが動くリーグでは、その緊張感は日本のJリーグの比ではないのではないか。
それを考えると、そろそろ三笘選手はパスよりシュートを選ぶシーンを増やしてもいいかもしれない。
チームとの連係が整ってきたら、是非とも少し強引なシュートを増やしてほしい。
この試合、三笘選手はボールの奪われ方が悪かったので、守備で長い距離をダッシュすることも多かった。その意味でも彼自身がシュートで終わる選択は大事になってくる。
中2日の連戦の影響からか、コンディションが決して高かったわけではなく、途中交代は致し方ないだろう。とはいえ全体的には及第点だ。
1月中の移籍市場次第でチーム事情は変わるだろうが、このままいけばブライトンは上昇してゆくチームだ。
まだまだブライトンが見逃せない。