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北米MMA(総合格闘技)におけるドラッグ(ドーピング)テストの歴史と進化について
I GOT THE NEWS /
「わたしを雇いなさい」
北米アスレチック・コミッション史上、女子MMAファイターで、初めてパフォーマンス向上薬(以下「*PED」)使用の陽性反応がでた選手。
これ、誰だかご存知でしょうか?
日本でも二回試合をしたことのある、ブラジルのカリーナ・ダムという選手なんです。
UFC、戦極にも出ていたホドリゴ・ダム選手のお姉さんです。
この一件がカリフォルニア州のアスレチック・コミッション(以下「コミッション」)から発表されると、当時カリーナのマネジメントだった私のところに、多くのメディカル・コンサルタントと名乗る人たちから連絡がありました。
「わたしを雇いなさい」
100%、すべてが営業の連絡でした。
わたしを雇えば検査にパスさせてあげるよ。
中には「カリーナが検査で引っ掛かったのはあなたの責任ですよ。マネジメントなのに何をしているんですか?適した人間を雇っていないからこんな事態になるんです」とまで言ってきた人もいました。
これは2008年のことです。
まだまだ州によってはドラッグテストがなかった時代です。
あの時は、カリフォルニア州でも試合日の検査に関しては、勝者の中からランダムで、5人だけ選ばれて尿検査が実施されたと記憶しています。
その中の1人に選ばれたのがカリーナで、検査で陽性反応が出たのは、彼女だけでした。
メディカル・コンサルタントと名乗る連中は、あの時、みんな同じことをわたしに言いました。
検査があるのはファイトウィークか試合日だろ?
それなら計画的に抜いていけば問題ないし、今はモノによっては検査で陽性反応が出ないようにできる薬もあるんだから。
その3年後の2011年。
私がマネジメントをさせて貰っていた選手が、またドラッグ・テストで引っ掛かりました。
戦極で3回試合したことのある、デイブ・ハーマンというヘビー級ファイターです。
ヒューストンで開催されたUFC 136への出場が決まっていたので、テキサス州のコミッションによる抜き打ち検査が行われ、それに落ちてしまったんです。
「今から4時間以内に、このクリニックに行って尿検査を受けてください」
当時カリフォルニア州のテメキュラという町に住んでいたデイブのもとに、突然コミッションからメールと電話があったは、試合の約1ヶ月前のことでした。
指定されたクリニックはデイブの家から車で約15分。
母親が倒れたとか家に強盗が入ったとか竜巻で家が吹き飛ばれた。そんな緊急事態でも起きない限り、4時間以内に行けない理由はありませんでした。
デイブとしてはPEDを採っていた訳でもないんで、問題ないだろ、と尿検査に応じたんです。
その1週間後、再びコミッションからデイブの元にメールと電話があったんです。
採取した尿サンプルを失くした。
また4時間以内に同じクリニックに行ってください。
この二度目の尿検査で、大麻の陽性反応が出てしまったんです。
あとで本人にも確認したんですけど、デイブは、二度目の抜き打ち検査の数日前に友達と大麻を吸ったとのこと。
1度目の検査が終わったこともあり、もう大丈夫だろうという甘い気落ちで吸ったのが、錯謬だったという結果になった訳です。
検査を誤魔化せる訳もなく、バッチシ陽性反応が出ちゃったんで、PPV大会のメインカードとして組まれていた対マイク・ルソー戦はキャンセル。
デイブには6ヶ月のサスペンション(出場停止)というペナルティが下されました。
彼の場合は、この3試合後のアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ 選手との試合当日に行われた検査でも、陽性反応が出てしまったんです。
2回目は、非常にまずいんです。
対コミッション、そして対UFC的にも。
いろんなことをしないといけない羽目になったんですけど、これについては後述します。
*Performance-Enhancing Drugsの略
CHAIN LIGHTNING /
抜き打ち検査!?
オシッコしないでね。
試合当日、会場に着いてバスから降りるときに、わたしは必ず選手にそう言うんです。
控え室に入って暫くすると、尿検査のためドラッグテストの部屋に呼ばれるからです。
そこでオシッコが出ない場合は、水をチビチビと飲みながら、出るまで待たないといけない。
選手の中にはなかなか出ない人もいます。
結局1時間以上かかり、ケージ(リング)・チェックができなかった、なんていうこともありました。
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