米国市場:4/1週の振返りと24年4/8週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、4,769.83と前週比-0.95%で終了しました。NASDAQは15,011.35と前週比-0.8%で終了しました。
先週の株価は、金曜日に一部下げを回復したものの、中東情勢の緊張が再燃した影響や、今年中に複数回の利下げが実施される見通しが後退したことを反映し、主要平均株価はすべて下落しました。先週のデータの概要をまとめると、米国経済は堅調です。失業率は低く、労働参加率も上がっているため多くの人々が働いている状態であり、実質賃金の伸びも続いていることが確認されました。これらは経済、個人消費、EPSの成長見通しにとって良い結果のデータとなりますが、利下げを進めるためにFRBが求めているような数値ではないと思います。
これらのデータが示すことは、市場が期待していたよりもインフレが収まっていないことです。このため先週、FRB高官からは利下げ見通しについて冷ややかなコメントが相次ぎました。まず、アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁が今年後半に1回利下げを実施するとの見通しを示し、次にミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁が、もしインフレが横ばいで推移するならば、2024年には利下げを実施しないとの見通しを示していました。金曜日には、ミシェル・ボウマンFRB総裁が「政策金利を引き下げることが適切な時点にはまだ至っていない。」と述べています。
この結果、10年物国債利回りは2024年の高値付近である4.378%で先週を終えています。2023年の終値である3.86%を大きく上回っています。ここ最近、金利がヒタヒタと上昇をつづけており、株式市場にとってはアゲインストの要因の一つとなっています。金価格も上昇を続けており、市場がインフレの粘着性を認識しているもう一つのシグナルではないかと考えています。原油価格も2024年の最高値に近い水準になっています。これはエネルギー株に取ってはプラスの材料となっていますが、FRBのインフレ目標2%への道のりは長いと思わせる結果となりました。
先週1週間をかけて、利下げがないというシナリオも市場は折込に行っていると思いますので、来週に発表される3月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)を確認することで、方向性が更に明らかになると思います。また、今週は12日金曜日の銀行決算発表の開始までほとんど決算発表がないため、それまでに発表される経済指標、FRB議長の利下げ見通しのニュースが市場を右往左往させる要因になると思います。しかし、これまでの動きを考慮すると、CPIは大きく予想外の展開を見せることはないと思いますので、利下げの可能性が低い、もしくはないというシナリオを更に織り込むと思います。
今週の決算事前発表があれば、それらに注目し、今後の決算シーズンについて何が語られそうなのかを見ていきたいです。先週、アルタ・ビューティ(ULTA)の株価で見られたように、市場は今後の決算発表シーズンにおける失望決算は大きな売りを呼ぶと思います。PERも少し割高になってきていますので各社の決算には注意が必要です。
12月と3月の四半期で10%以上の上昇を記録しましたので、4月に調整局面や市場の消化局面があるということは正常なことであり、今の相場を長続きさせるためにも必要なことだと思います。万が一、もう一段下げるようなことがあれば、良い押し目買いのタイミングになるかもしれません。
株式
アナリストによるS&P500種構成企業の第1四半期の業績予想修正幅は、最近の平均と比べて悲観的でない一方、企業の第1四半期の業績見通しは、最近の平均と比べて悲観的となっています。結果、S&P500種構成企業の第1四半期の予想利益は、期初の予想に比べ、現在は減少していますが、前年同期比では3四半期連続の増益となる見込みです。
S&P500構成銘柄の業績予想修正に関しては、アナリストによる2024年第1四半期の業績予想の引き下げ幅は、当四半期の平均よりも小さいです。1株当たりでは、第1四半期の推定利益は12月31日から3月31日までに2.5%減少しました。この減少幅は5年平均(-3.7%)および10年平均(-3.4%)よりも小さいです。
ガイダンスに関しては、S&P 500構成企業のうち、2024年第1四半期のEPSガイダンスに否定的な見解を示した企業の数、割合ともに平均を上回っています。このうち79社がマイナスのEPSガイダンスを、33社がプラスのEPSガイダンスを発表している。ネガティブなEPSガイダンスを発表している企業数は5年平均(58社)、10年平均(62社)を上回っています。S&P500構成企業のうち、2024年第1四半期にマイナスのEPSガイダンスを発表した企業の割合は71%(112社中79社)で、これも5年平均の59%、10年平均の63%を上回っています。
アナリストによる業績予想の下方修正と各社によるEPSガイダンスの下方修正により、2024年第1四半期の推定(前年同期比)利益成長率は第1四半期開始時点と比較して低下しており、S&P 500種構成企業の予想(前年同期比)増益率は3.2%です。仮に3.2%が実際の増益率となれば、S&P500種指数は3四半期連続で前年同期比増益となります。
11セクター中7セクターが前年同期比で増益となる見通しで、その筆頭は公益事業、情報技術、通信サービス、消費財の各セクターであります。一方、前年同期比で減益と予想されるセクターは、エネルギー、素材セクター等4つあります。
収益の面でも、アナリストは当四半期中に予想を下方修正しています。S&P500種指数は、12月31日時点では4.4%の増収予想だったのに対し、今日時点では3.5%の増収予想となっています。仮に3.5%の増収となれば、S&P500種指数は14四半期連続の増収となります。
前年同期比で増収が予想されるセクターは8つで、その筆頭は通信サービスセクターと情報技術セクターとなります。一方、前年同期比で減収となるのは、素材セクターを中心に3セクターと予測されています。
今後の見通しとして、アナリストは2024年第2四半期、2024年第3四半期、2024年第4四半期の収益成長率(前年同期比)をそれぞれ9.4%、8.5%、17.5%と予想しています。CY2024については、アナリストは(前年比)10.9%の利益成長を予想しています。
12ヵ月物予想PER は20.5 で、5 年平均(19.1 )と10 年平均(17.7 )を上回っています。第1四半期末(3月31日)の予想PER21.0を下回っています。
来週の主な決算発表(予定)
4/8(月):
<寄付き前>
<引け後>
4/9(火):
<寄付き前>Cognate Software (CGNT), Tilray (TLRY)
<引け後>PriceSmart (PSMT), WD-40 (WDFC)
4/10(水):
<寄付き前>Delta Air Lines (DAL)
<引け後>
4/11(木):
<寄付き前> CarMax (KMX), Constellation Brands (STZ), Fastenal (FAST)
<引け後>
4/12(金):
<寄付き前>BlackRock (BLK), JPMorgan Chase (JPM), Wells Fargo (WFC)
米国の主な経済指標
4/8(月):
4/9(火):
4/10(水):消費者物価指数(CPI)
4/11(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
4/12(金):ミシガン大学消費者信頼感指数
今週の着目点
今週の3月の経済指標からは、インフレ率は多くの人が予想していたほど急速に減速していませんでした。そのため、利下げは2024年下半期にずれ込む可能性が高く、2024年の利下げ回数が3回未満となる可能性が高まっており、一度行ったら終了ではないかという(One and Done)議論も始まっておりその可能性が高まっている。3月PMI報告やADP雇用変化報告および3月雇用報告における賃金データを踏まえると、来週の3月消費者物価指数(CPI)はインフレの進展をほとんど、動かない可能性が高いです。
3月コアCPIの市場コンセンサスは前年比3.7%で、1月の3.8%から0.1%低下しました。しかし、食品やエネルギー価格を除いたヘッドラインインフレ率は3.2%から3.4%に上昇すると予想されております。この上昇の要因となるのは、石油・ガス価格の上昇であることは明らかです。
消費者物価指数(CPI)とその結果を消化した後は、3月のFRB政策決定会合の議事録に注目ていきます。議事録では、FRBの3月経済見通しで示された3回の利下げについて、FRBが利下げ幅の縮小を検討するためには何が必要かを中心に確認します。そして、翌日には、3月PPIが発表されますのでこちらも確認する必要があります。
先週と同様、インフレ・データ、FRBの政策見通し、利下げの方向性は市場に大きな影響を与えると思います。ただし、市場としても金利の下げが遠のきつつあることの認識は広がっており、その程度がどのくらいになるかを確認していくのが今週の相場となると思います。
来週の金曜日からJPモルガン(JPM)、ウェルズファーゴ(WFC)等の銀行株から24年1月~3月機の決算がスタートします。ここで、どのくらいクレジットローンが拡大しているのか、貸倒がどのようになっているのかを確認する必要があると思います。と同時に、預金の金利がどの程度あがっているかが注目点かなと思います。銀行が普通に儲けられるのか、それとも他のことに手を出さないといけないくらい苦しいのかがはっきりしてくると思います。