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米国市場:24年11/4週の振返りと11/11週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,995.54と前週比+4.66%で終了しました。NASDAQは19,286.78と前週比+5.74%で終了しました。
 先週はイベントが盛りだくさんの週でしたが、市場は、2024年の大統領選挙の結果とFRBが木曜日に行った25ベーシスポイントの追加利下げを熱狂的な反応を示しました。その結果、主要市場指数はすべて大幅に上昇しました。この中でも、特に大きな上昇を見せたのはラッセル2000で、8.6%上昇しました。
 この上昇の影響で、S&P 500とナスダック総合指数の指数が買われ過ぎの水準に達しています。買われすぎになることは11月によくある事象ですが、次年度の予想がEPSが274.59と下がってきているにもかかわらず、上昇を続けており、PERがかなり高くなっています。PERがこのまま上がり続けると、アメリカ株のバブルの始まりとなり、2025年はS&P500の指数が7,000の大台をつけるのではないかと思われるような状況になっています。
 その一つの要因として今回の選挙で、共和党が大統領府、上院、下院のすべてで過半数を獲得するような状況になっていることが挙げられます。下院は、現時点で結果が確定したわけではありませんが、こちらも共和党が過半数を獲得しそうな状況となっています。この結果、共和党の法案が通りやすくなるため、トランプ氏が公約していたことからすると、金融規制の緩和や財政規律の緩和などが進む可能性があります。株式市場も11月5日の選挙結果を受けて、金融株(JPMorgan(JPM)、 Goldman Sachs(GS)など)が大きく上昇したことが、その証拠と考えています。
 S&P500は6,000を高値で超え、NASDAQも20,000が見えてきたこともあって、達成感から一服する可能性があります。しかし、11月~1月は例年アメリカ株が強い時期でもありますので、短い休憩後また上げていく可能性が高いと考えています。しかし、恐怖と強欲指数(Fear & Greed指数)もExtreme Greed(極度の強欲)に近づきつつあり、市場に楽観的なムードが広がっているため、短期的には警戒感を維持していく必要があると考えています。

株式市場

 S&P 500(以下、S&P)の第3四半期決算シーズンも後期段階に入り、引き続きまちまちの結果が報告されています。予想と比較して、ポジティブな収益サプライズの件数と規模はどちらも5年間の平均を下回っています。しかし、この指数は先週末と比較して、そして四半期末と比較して、第3四半期の収益を高くなっています。前年同期比では、S&Pは5四半期連続で増益となる見込みです。
 現時点でS&P企業の91%が2024年第3四半期の決算を発表しています。EPS(1株当たり利益)は、発表済み企業の75%が予想を上回る実績を報告しています。これは5年平均の77%をわずかに下回っていますが、10年平均の75%と同水準です。企業は平均で予想を4.3%上回るEPSを報告してますが、これは5年平均の8.5%と10年平均の6.8%を下回っています。
 収益に関しては、S&P企業の60%が予想を上回る実績を報告しています。これは5年平均の69%と10年平均の64%を下回っています。企業は平均で予想を1.2%上回る収益を報告していますが、これは5年平均の2.0%と10年平均の1.4%を下回っています。
 セクター別に見ると、ヘルスケアセクターがEPSと収益の両方で好調な業績を牽引しています。一方、公益事業セクターはEPSでネガティブなサプライズを報告しており、エネルギーセクターはEPSと収益の両方で減益を報告しています。
 第3四半期のブレンド型(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は、本日時点で5.3%です。これは先週の5.0%、第3四半期末(9月30日)の4.3%から上昇しています。5.3%が実際の四半期成長率であれば、S&Pにとって5四半期連続の前年同期比増益となります。
 第3四半期のブレンド型収益成長率は、本日時点で5.5%です。これは先週の5.3%、第3四半期末(9月30日)の4.7%から上昇しています。5.5%が実際の四半期収益成長率であれば、S&Pにとって16四半期連続の収益成長となります。また、それは2022年第3四半期(11.0%)以来、S&Pが報告した最高の収益成長率にもなります。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の(前年同期比)利益成長率をそれぞれ12.2%、12.7%、11.9%と予想しています。2024年通年では、アナリストは(前年同期比)9.4%の増益を見込んでいます。2025年通年では、アナリストは(前年同期比)14.8%の増益を予測しています。
 今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は22.2倍で、5年平均(19.6倍)と10年平均(18.1倍)を上回っています。このP/E比率は、第3四半期末(9月30日)に記録された将来P/E比率21.6も上回っています。
 今週は、S&P企業のうち12社(ダウ30構成銘柄3社を含む)が第3四半期の決算を発表する予定です。(出典:FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

11/11(月):
<引け後>Monday.com (MNDY)
11/12(火):
<寄付き前>AstraZeneca (AZN), Home Depot (HD), IAC Inc. (IAC), Mosaic (MOS), Surgery Partners (SGRY), TreeHouse Foods (THS), Tyson Foods (TSN)
<引け後>American Healthcare REIT (AHR), Rackspace Technology (RXT), Skyworks (SWKS)
11/13(水):
<寄付き前>CyberArk (CYBR)
<引け後>Beazer Homes (BZH), Cisco (CSCO),
11/14(木):
<寄付き前>Walt Disney (DIS)
<引け後>Applied Materials (AMAT)
11/15(金):
<寄付き前>Alibaba (BABA), Buckle (BKE), Foot Locker (FL).

米国の主な経済指標

11/11(月):
11/12(火):
11/13(水):消費者物価指数(CPI)
11/14(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
11/15(金):小売売上高、ニューヨーク連銀製造業景気指数、設備稼働率、鉱工業生産指数

今週の着目点

 先週のような盛りだくさんの週を終え、今週は例年通りの経済データと決算報告の発表に戻ります。11月のFOMCが終了しましたので、FRBの高官がいろいろなところで講演等の発言を始めます。わかっているところでは、来週は12件の講演が予定されており、その中には11月14日木曜日の午後に行われるパウエルFRB議長の講演も含まれています。
 このタイミングでは、13日(水)の10月消費者物価指数(CPI)と14日(木)の10月生産者物価指数(PPI)の発表後であるということです。今週のパウエル議長の政策記者会見では、コアPCE価格指数データに粘り強さが見られ、7月、8月、9月と2.7%で横ばいだったと指摘しました。直前に発表されるインフレのデータによって、パウエル議長の発言に変更がないか確認したいと思います。9月末より上昇していた長期金利が今後も引き続き上昇するかどうか、今週は注目したいです。
 15日(金)は10月の小売売上高報告が発表されます。ハリケーン「ヘレン」と「ミルトン」、Amazon(AMZN)のプライムビッグディールデー、そして他の小売業者による競合イベントなどの影響があったため、解釈が難しいものになる可能性があります。ただ、クレジットの焦げ付きなどが大きく増加しているというデータはみられないため、大きな変調はないと予想しています。また、同日に10月の鉱工業生産報告も発表され、国内の製造業経済に関する新たな視点が得られます。今週のデータがすべて発表された後、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルの次回更新に注目し、今四半期の経済成長率をどのように予測がどのように変化するかを確認します。先週末時点では、この数値は2.5%でした。
 企業決算の発表が集中した2週間を経て、決算の状況はかなり落ち着いてきましたが、更なる洞察を得るために今後も企業の決算は注意深く見守っていきたいです。


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