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米国市場:24年9/30週の振返りと10/7週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,751.07と前週比+0.22%で終了しました。NASDAQは18,137.85と前週比+0.10%で終了しました。
 先週の株価は、9月末日は大きく上昇し、主要な市場指数はすべて第3四半期を好調な上昇で終えました。10月に入ると、いくつかの逆風となるニュースが流れマーケットがぐずつく展開が見られました。9月の好調な雇用統計を受けて週間として上昇して終了しました。
 10月4日(金)に発表された雇用統計は非農業部門雇用者数25.4万人と非常に強いものでした。平均時給も前月比13¢伸びており、また過去データもアップサイドに更新されていることから雇用は問題ないという事が示された恰好となっています。CME Fed Watch Toolも11月のFOMCにて0.5%の利下げが予想されていましたが、この結果を受けて0.25%の利下げが大半となりました。まだ11月のFOMCにまでにいくつかの経済指標が発表されますので、FRBも利下げの方向で動いてはいるものの、経済が好調であるという経済データが示されると利下げが打ち止めになるシナリオも念頭隅に置いておく必要があると考えています。
 連日のように、中東情勢を伝えるニュースが出ていますが、これまでのところ原油価格は堅調に推移しています。その一つの要因としては、緊迫化しているものの、産油国はそれに巻き込まれないように冷静さを保っていることがあると考えられます。中東の全体としては、和平に向けてのプロセスが少しずつ進んでいると考えています。また、アメリカの経済が予想よりも好調であることも上げられると思います。好調が続けば原油価格も上がり、インフレの再燃になる可能性はありますが、今の原油価格であれば大きな影響はないと思います。
 米国大統領選も残り1ヶ月となってきており、市場の雰囲気としてはカマラ・ハリスの勝利を織り込んでいるように見えます。ただ、激戦州ではまだ均衡しておりこれらの州を制すればトランプが勝つシナリオもまだ死んでないと考えています。しかし、民主党、共和党がが上げている公約はどちらの政党も似たようになっており、政策の継続性という意味ではどちらが勝っても大きな変化はないという事で、トランプが勝った場合であっても大きな落ち込みはないと考えられます。
 今週の金曜日から決算発表が始まります。これまでのところ経済指標からは大きな変調は見られないため、決算発表も良い結果になるかと予想しています。ただ、リーバイス(LEVI)の四半期決算とナイキ(NKE)のガイダンス撤回を受けて、市場が決算発表をミスした企業については寛容なムードではないと考えています。バリュエーションが拡大しており、CNN Fear & Greedが示すように投資家が依然として「強欲」モードにある中では、企業が完璧な四半期決算としっかりしたガイダンスを示さないと大きく売られる可能性があることも考慮しておく必要があると思います。
 市場全体としては、大きな下げはないものの、バリュエーションも高いためぐずぐずした展開が今後も続くと考えています。

株式市場

 決算シーズン開始を控え、アナリストは最近の平均と比較して収益見通しについてより悲観的になる一方、企業は最近の平均と比較して収益見通しについてそれほど悲観的ではありません。第3四半期のS&P 500の予想利益は、四半期初めの予想と比較して今日では低くなっています。予想利益は減少したものの、同指数は5四半期連続で前年同期比増益となる見通しです。アナリストも、同指数が2024年第4四半期から再び2桁の増益を報告すると依然として考えているようです。
 S&P 500構成銘柄の予想利益の修正は、アナリストは2024年第3四半期の予想利益を大幅に引き下げました。1株当たりベースでは、第3四半期の推定利益は6月30日から9月30日にかけて3.9%減少しました。この減少幅は、四半期の5年平均(-3.3%)と10年平均(-3.3%)よりも大きいです。
 第3四半期のガイダンスに関しては、2024年第3四半期にネガティブなEPSガイダンスを発表したS&P 500企業の割合は、最近の平均を下回っています。現時点では、同指数の110社が2024年第3四半期のEPSガイダンスを発表しています。これらの企業のうち、60社がネガティブなEPSガイダンスを、50社がポジティブなEPSガイダンスを発表しています。2024年第3四半期にネガティブなEPSガイダンスを発表したS&P 500企業の割合は55%(110社中60社)で、5年平均の58%、10年平均の62%を下回っています。
 アナリストによる利益推定値の下方修正と企業によるネガティブなEPSガイダンス発行により、2024年第3四半期の推定(前年同期比)利益成長率は、第3四半期初めに比べて今日では低くなっています。本日現在、S&P 500は(前年同期比)4.2%の増益を報告する見通しですが、6月30日時点での推定(前年同期比)利益成長率は7.8%でした。もし4.2%が実際の四半期成長率であれば、それはこの指数にとって5四半期連続の前年同期比増益となります。
 11セクターのうち8セクターが増益を報告する見通しです。これらの8セクターのうち、情報技術、ヘルスケア、コミュニケーションサービスの3セクターは2桁成長を遂げると予測されています。一方、3セクターは前年同期比で減益となる見通しです。これらの3セクターのうち、エネルギーセクターは2桁の減益となる見通しです。
 収益に関しては、アナリストらも四半期中に推定値を下方修正しました。本日現在、S&P 500は(前年同期比)4.7%の増収を報告する見通しですが、6月30日時点での増収予想は5.0%でした。もし4.7%が実際の四半期増収率であれば、それはこの指数にとって16四半期連続の増収となります。
 情報技術セクターとコミュニケーションサービスセクターが主導する形で、10セクターが増収を報告する見通しです。一方、エネルギーセクターは前年同期比で減収となる見通しで、唯一のセクターです。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の(前年同期比)利益成長率をそれぞれ14.6%、14.0%、13.3%と予想しています。2024年通年では、アナリストは(前年同期比)9.8%の増益を見込んでいます。2025年通年では、アナリストは(前年同期比)14.9%の増益を予測しています。
 今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は21.4倍で、5年平均(19.5倍)と10年平均(18.0倍)を上回っています。このP/E比率は、第2四半期末(6月30日)に記録された将来P/E比率21.0も上回っています。
 来週は、S&P 500企業のうち9社(ダウ30構成銘柄1社を含む)が第3四半期の決算を発表する予定です。

来週の主な決算発表(予定)

10/7(月):
<寄付き前>
<引け後>
10/8(火):
<寄付き前>PepsiCo (PEP)
<引け後>
10/9(水):
<寄付き前>Helen of Troy (HELE)
<引け後>
10/10(木):
<寄付き前>Delta Air Lines (DAL)
<引け後>Domino’s Pizza (DPZ)
10/11(金):
<寄付き前> Black Rock (BLK), BNY Mellon (BNY), Fastenal (FAST), JPMorgan Chase (JPM), Wells Fargo (WFC).

米国の主な経済指標

10/7(月):
10/8(火):
10/9(水):
10/10(木):消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数
10/11(金): 生産者物価指数(PPI)、ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 週末明けに、8月と9月の経済データがさらにいくつか発表されます。3日(木)の9月ISMサービス業PMIと4日(金)の堅調な9月雇用統計を受けて、市場は9月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の発表に注目が集まると思います。
 9月のサービス業PMIでは、価格構成要素が1月以来の高水準に急上昇したことが明らかになりました。9月のインフレデータは、これまで考えられていたほどの改善が見られない可能性があることを示唆しています。この結果、FRBが今後数か月で予想されるほどの利下げを行わないかもしれないという認識に変わる可能性があります。今週のインフレデータは、その展開のきっかけとなる可能性があり、市場が他の懸念を無視して上昇していることを考えると、この考え方の変化は市場に影響を与える可能性があります。
 来週はFRBの9月議事録も発表され、FRBが0.5%の利下げを行った背景にある議論も確認しておくべきかと思います。議事録を確認しながら、今後FRBが0.25%もしくは0.5%、あるいは利下げなしのいずれかを決定する際に、どのような要素が影響を与えるのか探ってみたいと思います。
 今週は9月四半期決算シーズンの始まりにも突入します。ペプシコ(PEP)の決算発表に始まり、11日(金)に最初の銀行決算が始まると、決算発表を行う企業の数が徐々に増えていきます。JPモルガン(JPM)とウェルズ・ファーゴ(WFC)の決算を分析し、消費者の経済事情についても確認をしていきたいです。


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