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米国市場:6/3週の振返りと24年6/10週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,346.99と前週比+1.32%で終了しました。NASDAQは17,133.13と前週比+2.38%で終了しました。
 先週の株価は、大きく上昇しました。この上昇は主にNvidia(NVDA)が先々週末の1,096.33から1,208.88へと大幅な上昇を見せただけでなく、Apple (AAPL)、Microsoft (MSFT)、Alphabet (GOOGL)、Amazon (AMZN) の上昇も大きく影響しています。これら5銘柄は、時価総額加重平均のS&P500の約28%を占めるため、この銘柄が大きく上昇することによりS&P500指数が押し上げられています。これら5銘柄はNASDAQの指数においてはさらに大きな割合を占めることになりますので、NASDAQが今週S&P500を上回って終えた理由も明確かと思います。先週も述べましたが、今の市場は大型ハイテク株が牽引している相場といえると思います。
 6月7日(金)には、5月の雇用統計が発表されました。この雇用統計は引続き堅調な様子が見られました。失業率は4.0%と予想3.9%を上回りましたが、非農業部門雇用者数は27.2万人と予想19万人を大きく上回り、平均時給も前月比+14セントと再び二桁の伸びを見せました。この結果を受けて、CME Fedwatch toolによると、市場はFRBの9月会合での現状維持の可能性が52%と利下げが見送られる方向に傾いてはいますが、指数は大きく下げることなく、前日比とほぼ変わることなく終了しました。
 先週に発表された他の5月の経済データからも、アメリカ経済が大きく減速しているような兆候は見られませんでしたので、FRBは今週、早期利下げへの期待を後押しするようなコメントは出てこないと考えるのが良いかと思います。現在のアメリカは健全な経済成長を続けており、企業収益も成長しているためこのまま金利も維持されるというシナリオがまだまだ有効なことかと思います。今週は6月12日(水)に5月消費者物価指数(CPI)、FRB政策会合(FOMC)がありますが、これまでと大きな変更はないという形で臨んだ方が良いと思います。
 パウエルFRB議長は、「より長くより高く」金利を維持する方向に変更はなく、特に先週金曜日の5月雇用統計の結果を受けて、利下げサイクルに入る前にさらなる良いデータを見る必要があることを再確認すると予想されます。今後は、年内の利下げの可能性についてFRBが考えているかどうかを探ることが興味の中心に移ってくると思います。最近のデータを見ている限りですと、最初の利下げが2025年第1四半期にずれ込む可能性をも示唆していると考えられます。もしパウエル議長が記者会見の際にそのようなシナリオがあり得ると示唆すれば、市場は少し慌てる可能性があると思います。これは、アトランタ連邦準備銀行が今四半期のGDP予測を2.6%から3.1%引き上げ、インフレが後退していないことを明らかにした後でも、CME FedWatch Toolは依然として市場が年末までに1~2回の利下げを予想していることを示しているためです。5月のコアCPIの結果は、FRBがその日の午後に何を言う可能性があるかについて、より明確なイメージができると思います。
 アメリカは好景気で、金利が高い状態を維持していますが、欧州中央銀行(ECB)は2024年6月6日に開かれた理事会で、政策金利を0.25%引き下げることを決定しています。これにより、主要政策金利は4.50%から4.25%に下げられました。ECBは、FRBの動きを見てから動く傾向がありますが、先に利下げしたということは、ヨーロッパの景気が高い金利を維持できるほどは良くないことを物語っていると思います。これまでECBとFRBは同じ方向金利政策を維持してきましたが、足並みが乱れつつあるということで、アメリカの独り勝ちがさらに続く可能性が高まってきました。まだ、先の話ではありますがECBが更に利下げを行い、アメリカとの金利差が開いてくるとFRBも各国への配慮から景気が強いにもかかわらず利下げを余儀なくさせられることも考えられますので、各国の動きも合わせて確認していく必要があると思います。

株式市場

 第1四半期決算発表シーズンもほぼ終わりに近づいていますが、S&P500企業は引き続き期待を上回る好業績を維持しています。S&P500企業の中で、好業績を報告した企業の割合と、その好業績の規模は、ともに10年間の平均を上回っています。この結果、指数の予想利益は、前四半期末と比較して増えており、2022年第1四半期以来の高い増益率を記録しています。
 全体として、S&P500企業の99%以上が2024年第1四半期の決算を発表しました。このうち、79%の企業が予想を上回るEPSを報告しており、これは5年間の平均77%、10年間の平均74%を上回っています。企業全体では、予想を7.4%上回る利益を報告していますが、これは5年間の平均8.5%を下回るものの、10年間の平均6.7%を上回っています。
 結果、第1四半期のブレンド(発表済みの企業の実際の結果と未発表の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は、6月7日時点で5.9%であり、第1四半期末(3月31日)の3.4%と比較して増加しています。もし5.9%が今四半期の実際の成長率であれば、2022年第1四半期(9.4%)以来、この指数が報告した中で最も高い前年同期比増益率となります。
 11セクターのうち8セクターが、コミュニケーションサービス、公益事業、情報技術、一般消費財セクターを中心に、前年同期比で増益を報告しています。一方、エネルギー、ヘルスケア、素材の3セクターは、前年同期比で減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の61%が予想を上回る売上高を報告しており、これは5年間の平均69%、10年間の平均64%を下回っています。企業全体では、予想を0.8%上回る売上高を報告していますが、これも5年間の平均2.0%、10年間の平均1.4%を下回っています。結果、第1四半期の売上高が四半期末の予想と比較して増加しており、第1四半期のブレンド売上高成長率は、6月7日時点で4.2%であり、第1四半期末(3月31日)の3.5%となっています。もし4.2%が今四半期の実際の売上高成長率であれば、この指数にとって14四半期連続の売上高成長となります。
 8つのセクターが、情報技術とコミュニケーションサービスセクターを中心に、前年同期比で増収を報告しています。一方、公益事業セクターを中心に、3つのセクターが前年同期比で減収となりました。
 将来12ヶ月の株価収益率(PER)は20.7倍で、5年平均(19.2倍)、10年平均(17.8倍)を上回っています。しかし、第1四半期末(3月31日)に記録された21.0倍の将来PERを下回っています。
 来週は、S&P500企業のうち1社が第1四半期の決算発表を、2社が第2四半期の決算発表を予定しています。(Source Fact Set) 

来週の主な決算発表(予定)

6/10(月):
<寄付き前>ー
<引け後>ー
6/11(火):
<寄付き前>ー
<引け後>Casey’s General Store (CASY), Oracle (ORCL).
6/12(水):
<寄付き前>ー
<引け後>Broadcom (AVGO), Dave & Buster’s (PLAY).
6/13(木):
<寄付き前>ー
<引け後>Adobe (ADBE).
6/14(金):
<寄付き前>ー

米国の主な経済指標

6/10(月):
6/11(火):
6/12(水):消費者物価指数(CPI)、FOMC
6/13(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
6/14(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 先週は5月の経済データにとって重要な週でした。これらの指標が発表された結果、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルは、当四半期のGDP予測を先々週末の2.6%から3.1%に引き上げています。主な要因は、5月のサービスPMIの好調な結果と、5月雇用統計における予想を上回る雇用創出と賃金上昇の組み合わせです。これらの要因は、市場の利下げ期待を大きく後退させ、来週水曜日の午後に次回の政策会合を終えたFRBからの、利下げのタイミングに関してはまだ先になるコメント(データドリブン)が出される可能性が高くなりました。
 先週のPMI報告と賃金データの結果は、6月12日午前に発表される5月のCPIの舞台を整えています。賃金の上昇が続いていることから、CPIの大きな下げを期待することは難しいと市場関係者も認識していると思いますが、この結果によって今後の動きについても更に検討を進めることができるかと思います。このデータポイントはその後に行われるFRB議長の会見の最後になりますが、今月のFFレートに影響を与えるような結果にはならないと予想しており、市場も今回の会合後も金利を据え置くと予想となっています。
 なお、今回のFOMCではドットチャートが発表されます。このチャートはFOMC参加者の政策金利の見通しを可視化し、金融政策の方向性や将来の金利動向を予測する上で重要な情報となりますので、これらを3月に発表されたものと比較しておく必要があるかなと思います。FOMC参加者が今後の動きについてどのように見ているかが確認できます。特にGDP、利下げ、インフレについては変化がある可能性が高く、これらはすべて、パウエル議長が示すであろう「より長くより高く」というメッセージを裏付けることになると思います。この結果と、記者会見でのコメントを比較することで更に見識を深めることになるかと思います。
 FRBの会合後には、5月のPPI報告と、同月の輸出入価格データによって、インフレの状況を再確認します。また、FRBの政策会合前のブラックアウト期間が終了するため、FRB高官からの発言も得られます。彼らは、水曜日に発表されたFRBの最新の政策メッセージを概ね繰り返す可能性が高いですが、彼らのメッセージの微妙な変化に注意していきたいです。
 上述の通り、企業の決算報告はほぼ終わっていますので業績結果による市場の動きは少ない週になりました。今週は6月10日にNvidiaの株式分割がされます。NVDAはこの材料を含めて上がってきた経緯もありますので材料出尽くしで暫く停滞する可能性が出てきました。また、6月10日10時(日本時間:6月11日午前2時)からAppleのWorldwide Developers Conferenceが開催されます。この基調講演において、Open AIとの業務提携が発表されるとかねてより噂がされており、これらが現実となればAAPLも買われると思いますが、AIに関しての材料出尽くしとなりますので、暫くは休憩期間に入るのではないかと考えています。


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