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米国市場:24年10/21週の振返りと10/28週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、5,808.12と前週比-0.96%で終了しました。NASDAQは18,518.61と前週比0.16%で終了しました。
先週の株価は、まちまちのパフォーマンスでした。10年米国債利回りが4%台まで上昇し、さらにドル高が進んだことで、利下げへの期待が後退しました。また、企業の四半期決算報告が本格化し、業績の先行き不透明感が増したことも、投資家の懸念材料となりました
今週発表された経済データを見ると、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowは、依然として力強い経済成長を示唆しています。また、PMI速報値では、10月の景況感がさらに改善し、新規受注が約1年半ぶりの高水準に達したことが示されました。これらのデータは、経済が短期的には減速しそうにないことを示唆しています。
堅調な経済指標を受け、10年米国債利回りとドルは今週上昇しました。このため、FRBが今後6~8ヶ月で市場の予想よりも利下げ回数を抑える可能性が出てきました。CME FedWatch Toolでは、来年の6月までに約1%の利下げが行われ、政策金利が現在の4.75~5%から3.75~4%になると予想されています。これは、通常の0.25%の利下げであれば4回に相当します。しかし、10年米国債利回りが10月に入ってからじりじりと上昇を続けており、このまま上昇が続けば、短期金利との差が縮小するため、利下げ回数の予想も下方修正される可能性があります。今週発表されるPCEや11月1日(金)の雇用統計の結果は、今後の金融政策を占う上で重要な指標となると考えています。
大統領選挙は、カマラ・ハリス氏とトランプ氏の大接戦となっています。RealClearPoliticsによると、トランプ氏の支持率は48.5%、カマラ・ハリス氏の支持率は48.4%と、ほぼ拮抗しています。選挙戦が接戦であるため、大統領選挙の結果がスムーズに確定しない可能性を懸念する声が高まっています。米国株のPERは21.7倍と、すでに高水準にあり、選挙後の混乱によって株価が大きく変動する可能性があります。しかし、市場は、このリスクを十分に織り込んでいないように思われます。
今週は、29日にAlphabet(GOOG)、30日にMeta Platforms(META)、Microsoft(MSFT)、Amazon(AMZN)、Apple(AAPL)と、大手ハイテク企業の決算が相次いで発表されます。これらの決算は、AI関連事業の進捗状況を把握する上で非常に重要です。また、次週には大統領選挙とFOMCが予定されており、今週と来週の前半は、今年最も重要な週となる可能性があります。しかし、市場は、これらのイベントに伴うリスクを十分に織り込んでいない可能性があり、注意が必要です。
米国経済の基調は堅調であるため、短期的には大統領選挙やFOMCなどのイベントによって市場が変動する可能性はありますが、年末までには回復すると予想しています。
株式市場
第3四半期決算シーズンは、現時点ではS&P500企業の業績はまちまちです。一部企業の好調な決算は、他の企業のEPS予想の下方修正によって相殺されています。その結果、S&P500指数は、先週末と比較して第3四半期の収益は増加していますが、四半期末と比較すると減少しています。前年同期比では、5四半期連続で増益を達成していますが、2023年第2四半期(-4.2%)以来、最低の増益率となっています。
全体として、現時点でS&P500企業の37%が2024年第3四半期決算を発表しています。これらの企業のうち、75%が予想を上回るEPSを報告しており、これは5年平均の77%を下回っていますが、10年平均の75%と同水準です。しかし、企業の収益は予想を5.7%上回るにとどまっており、5年平均の8.5%と10年平均の6.8%を下回っています。
9月30日以降、工業、ヘルスケア、エネルギーセクターの企業のEPS予想は下方修正されました。一方で、金融と一般消費財セクターを中心に、ポジティブなEPSサプライズを報告する企業もありました。これらの結果、S&P500指数の全体的な増益率は減少しました。
その結果、S&P500指数は、先週末と比較して第3四半期の収益は増加していますが、四半期末と比較すると減少しています。第3四半期のブレンド増益率は、本日時点で3.6%です。これは、先週の3.0%からは上昇していますが、第3四半期末(9月30日)の4.3%からは低下しています。もし3.6%が実際の四半期成長率であれば、S&P500指数は5四半期連続の増益となります。しかし、これは、2023年第2四半期(-4.2%)以来、最低の増益率です。
11セクターのうち、8セクターが増益となっており、情報技術と通信サービスセクターが牽引しています。一方、3セクターは減益となっており、特にエネルギーと工業セクターの減益幅が大きくなっています。
S&P500企業の59%が予想を上回る収益を報告していますが、これは5年平均の69%と10年平均の64%を下回っています。全体として、企業の収益は予想を1.2%上回っていますが、これも5年平均の2.0%と10年平均の1.4%を下回っています。なお、過去の平均は、500社すべての決算発表後の結果を反映したものであり、現時点では37%の企業しか決算を発表していません。
9月30日以降、ヘルスケアと金融セクターの企業はポジティブな収益サプライズを報告しましたが、エネルギーセクターの企業の収益予想は下方修正されました。これらの結果、S&P500指数の全体的な収益成長率は上昇しました。
その結果、第3四半期のブレンド収益成長率は、本日時点で4.9%です。これは、先週の4.6%からは上昇していますが、第3四半期末(9月30日)の4.7%も上回っています。
もし4.9%が実際の四半期収益成長率であれば、S&P500指数は16四半期連続の収益成長となります。9セクターが増収となっており、情報技術セクターが牽引しています。一方、2セクターは減収となっており、特にエネルギーセクターの減収幅が大きくなっています。
アナリストは、2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の利益成長率を、それぞれ前年同期比13.4%、13.4%、12.6%と予想しています。また、2024年通年では9.3%の増益、2025年通年では15.2%の増益を見込んでいます。
今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は21.7倍で、5年平均(19.6倍)と10年平均(18.1倍)を上回っています。このP/E比率は、第3四半期末(9月30日)に記録された将来P/E比率21.6もわずかに上回っています。
来週は、S&P 500企業のうち169社(ダウ30構成銘柄10社を含む)が第3四半期の決算を発表する予定です。(出典:FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
10/28(月):
<寄付き前>On Semiconductor (ON)
<引け後>Crane (CR), F5 Networks (FFIV), Ford Motor (F), Rambus (RMBS), Trex (TREX), VF Corp. (VFC), Welltower (WELL).
10/29(火):
<寄付き前> American Tower (AMT), Comcast (CMCSA), Corning (GLW), DR Horton (DHI), Masco (MAS), McDonald’s (MCD).
<引け後> Advanced Micro Devices (AMD), Alphabet (GOOGL), Chipotle Mexican Grill (CMG), Meritage (MTH), Snap (SNAP), Visa (V).
10/30(水):
<寄付き前>AbbVie (ABBV), Caterpillar (CAT), Extreme Networks (EXTR), Martin Marietta (MLM), Terex (TEX), Vulcan Materials (VMC).
<引け後>Casella Waste (CWST), Clorox (CLX), DoorDash (DASH), Invitation Homes (INVH), KLA Corp. (KLAC), Meta Platforms (META), Microsoft (MSFT), Starbucks (SBUX), Universal Display (OLED).
10/31(木):
<寄付き前>Bandwidth (BAND), Eaton (ETN), Estee Lauder (EL), InterDigital (IDCC), Lazard (LAZ), Mastercard (MA), Radware (RDWR), STMicroelectronics (STM), Utz Brands (UTZ).
<引け後>Amazon (AMZN), Apple (AAPL), Intel (INTC).
11/1(金):
<寄付き前> Cboe Global Markets (CBOE), Charter Communications (CHTR), Chevron (CVX), Church & Dwight (CHD), Exxon Mobil (XOM).
米国の主な経済指標
10/28(月):
10/29(火):S&Pケースシラー住宅価格
10/30(水):ADP雇用者数、GDP、
10/31(木):PCE、新規失業保険申請件数
11/1(金):失業率、ISM製造業景気指数
今週の着目点
今週は、10月の最終週となります。今週は、重要な経済指標と第3四半期決算が多数発表されるため、これらの決算の結果を確認しつつ、市場の動向に注意が必要です。11月6日~7日にFOMCが開催されるため、FRBはブラックアウト期間に入り、FRB高官の発言は限定的となるでしょう。なお、FOMCは通常水曜日に終了しますが、今回は選挙日の11月5日を考慮し、木曜日に終了する予定となっています。
アトランタ連邦準備銀行のGDPNowは、25日に発表された9月の耐久財受注データを受け、2024年第3四半期のGDP成長率を3.3%と、わずかに下方修正しました。30日(水)に発表される第3四半期GDPとPCE価格指数は、GDPNowの予測と比較し、景気動向を判断する上で重要な指標となるでしょう。31日(木)には、9月PCEが発表されます。市場は、8月と比較してPCEがわずかに低下すると予想しています。インフレ指標としてPCEを注視していく必要がありますが、ホリデーショッピングシーズンを控え、9月の個人所得データにも注目が集まります。この数字結果、今後2~3カ月の消費者支出の勢いについて示唆されている内容によっては出鼻をくじかれる可能性があります。
11月1日(金)には、10月雇用統計が発表されます。今週発表された10月のPMI速報値は、9月の非農業部門雇用者数増加幅(25万4000人増)よりも弱い数字となる可能性を示唆していますが、6月、7月、8月の平均増加幅(14万人増)ほど低い水準になるとは考えにくいです。30日(水)にADPが10月の雇用変化報告を発表すると、金曜日の雇用統計への期待感に変化が見られる可能性があります。もし、1日に発表される雇用統計が弱い数字であれば、11月のFOMCでの利下げ幅が、コンセンサス予想の25ベーシスポイントではなく、50ベーシスポイントになるという予想が強まる可能性があります。現時点では、10月の雇用統計が大幅に悪化し、11月に50ベーシスポイントの利下げが行われる可能性は低いと考えています。しかし、新たなデータが発表されるたびに、シナリオを修正していく必要があります。むしろ、10月の雇用統計が予想以上に強く、第3四半期GDPがGDPNowの予測に近い場合は、FRBが11月に利下げを見送る可能性も考えられます。
先週発表された企業決算と、その後のコメントからは、大手テック企業が新たな設備投資を増加させる可能性が示唆されました。市場は、大手ハイテク企業に対して期待と不安を抱いているため、29日~31日に発表される決算を静かに待ちたいと思います。