米国市場:1/29週の振返りと24年2/5週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、4,769.83と前週比+1.38%で終了しました。NASDAQは15,011.35と前週比+1.12%で終了しました。
先週の株価は、アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、メタ(META)などの決算が好調であったことから、決算後の株価が上昇しており株価指数の上昇におおきく寄与しています。これらの企業は、合わせてS&P500の約13%、ナスダック総合株価指数の約21%を占めているため、前週比で上昇したのは大手ハイテク企業だけだと思いがちですが、S&P500指数の構成銘柄を確認すると前週比0.4%上昇と、幅広い銘柄で上昇しています
先週は、1月30日、31日とFOMCが開催されました。結果、大方の予想通りFFレートは据え置かれましたが、記者会見の中で3月の利下げについてもパウエルFRB議長は可能性が低いとの認識を示しています。また、2月4日にCBSで放送された60ミニッツでも同様の趣旨を述べており、年後半に利下げがあるかないかを考慮したほうがよいと考えています。しかし、CME Fed Watch Toolでは年内に5回の利下げを予想されており、いまだにGAPが解消されないことからところどころで揺り戻しが発生することは考慮しておいた方がいいかもしれません。
米国経済指標もいくつか発表されており、アトランタ連銀のGDPNowモデルは今四半期の予測を3.0%から4.2%に引き上げています。このモデルの次回の更新は2月7日となりますが、1月サービス業PMIが下振れしない限り、アトランタ連銀のモデルはさらに上方修正する可能性もあり、米国経済が好調だということを示しています。これらを裏付ける指標としては、ISM製造業景気指数は49.1とマインドに改善が見られていますし、1月の雇用統計は3.7%といまだに低い水準にあり、平均時給は前年比4.5%上昇し、12月分も4.4%に上方修正されています。S&Pグローバルが発表した1月製造業PMIでは、輸送コストの増加により投入価格が上昇し、コスト上昇率は9ヵ月ぶりの高水準となったいっています。これを受けて、企業は販売価格を2023年4月以来最も速いペースで引き上げています。この結果、今後のインフレ率の改善も若干ペースが鈍る可能性がありますが、目標値には近づいてきていますので心配は特にないと思います。金曜日に発表されたミシガン大学消費者景況感指数は、1月としては2021年7月以来の高水準となる79となり、インフレ期待指数は2020年12月以来の低水準となっています。実質賃金が上昇し、賃金の高い雇用が増加しています。建設支出は活況を呈しており、今後も継続する見通しです。この結果、インフレ率よりも賃金上昇率が高くなっていますので、消費は好調となり、米国経済は高水準で安定的に活動していくことになると思います。
これから出てくる経済指標を都度確認していくことは必要ですが、このデータがFRBに動く必要がないことを語りかけてくるものであれば、米国の株式市場に取っては良い結果をもたらすと思います。米国経済が好調な限り、FRBは利下げに踏み切らないと思いますし、また、利下げを行った結果、バブルの芽を作りかねませんのでそのあたりは慎重に判断されるものと思います。結果、1月が過ぎたばかりですが、1年間利下げがされないというシナリオも考慮していく必要があるという気がしてきております。
先週は、非農業部門労働生産性指数の発表もされています。こちらは、予想1.3%に対し3.2%と高い労働生産性の改善がされており、前回値も4.9%から5.2%と上方修正されました。23年の6月期より3四半期連続して改善されています。このまま、労働生産性が下がらないようであれば、人件費の押し下げることになりますので、賃金は上昇してもインフレは高くならないことになりますので、米国経済にとっては明るいニュースになるかと思います。
株式
S&P500指数構成銘柄の第4四半期決算シーズンの半ばとなり、業績予想に対する全体的なパフォーマンスは引き続き低迷しています。S&P500指数構成銘柄のうち好業績サプライズを報告した企業の割合も、結果が予想を上回るサプライズの大きさも平均を下回っている状況です。しかし、この業績予想に対するパフォーマンスの低さの要因の大部分は、開始時に決算を発表した金融セクターの企業によってもたらされているものであり、今後は改善していくと思われます。過去2週間、10セクターすべてで多くの企業が決算を発表し、決算数字は大幅に改善しています。結果、本指数は、先週末と比較して、また四半期末と比較して、本日第4四半期の増益となっています。前年同期比では、同指数は2四半期連続で増益となりそうです。
全体として、S&P500指数構成企業の46%が2023年第4四半期の決算を発表しています。これらの企業のうち72%は予想を上回るEPSを報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を下回っています。また、企業の利益は予想を2.6%を上回っていますが、これは5年平均の8.5%、10年平均の6.7%を下回っている状況です。しかし、1月19日以降、S&P500指数種構成企業の75%が予想EPSを上回る実績を発表していることは注目すべきで、この期間に発表した、S&P500構成企業の利益は予想を7.3%上回っています。
この結果、S&P 500指数構成企業の、第4四半期の増益率は先週末比および四半期末比で上方修正されており、第4四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定を合算)増益率は、先週の-1.4%の減益、第4四半期末(12月31日)の増益率1.5%に対し、2月2日時点で1.6%となっています。
先週、複数のセクター(ヘルスケア、情報技術、エネルギー、一般消費財セクターが牽引)の企業が発表したポジティブな業績サプライズが、指数全体の増益率向上に貢献しています。複数のセクターの企業(情報技術、一般消費財、ヘルスケアセクターが主)によるポジティブな業績サプライズは、金融セクターの企業によるネガティブな業績サプライズをほぼ相殺しています。仮に1.6%が当四半期の実際の増益率であれば、2四半期連続で前年同期比増益となります。
11セクター中7セクターが前年同期比で増益となり、通信サービス、一般消費財、公益事業、情報技術セクターが牽引しています。一方、前年同期比で減益となったセクターは4つあり、 エネルギー、素材、ヘルスケア、金融となっています。
売上高に関しては、S&P500指数構成企業のうち65%の売上高が予想を上回っています。これは5年平均の68%を下回ったものの、10年平均の64%を上回っています。しかし、売上高成長率はアナリスト予想を1.0%上回っており、5年平均の2.0%、10年平均の1.3%を下回っています。第4四半期の混合売上高成長率は3.5%で、先週の3.2%、第4四半期末(12月31日)の成長率3.1%に比べて高くなっています。
複数のセクター(ヘルスケア・セクターと一般消費財セクターが牽引)企業のポジティブ・サプライズが、売上高予想の下方修正とエネルギー・セクターのネガティブ・サプライズで一部相殺されましたが、先週の指数全体の売上高増加に最も貢献しました。ヘルスケア、一般消費財、通信サービスセクターの企業が報告したポジティブ・サプライズが、エネルギーセクターの売上高下方修正のネガティブ・サプライズに一部相殺されたものの、四半期末以降、全体ではプラスに作用しています。もし3.5%が当四半期の実際の増収率であれば、13四半期連続の増収となる。前年同期比で増収となったのは9セクターで、通信サービス、情報技術、金融セクターが牽引しています。一方、前年同期比で減収となったセクターは2つで エネルギーと素材となっています。
今後の見通しとして、アナリストは2024年第1四半期の(前年同期比)利益成長率を4.5%、第2四半期を9.4%と予想している。CY2024については、アナリストは(前年比)11.2%の増益を予想しています。
12ヵ月予想PER は20.0となっており、5 年平均(18.9)、10 年平均(17.6)を上回っています。(Source:FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
2/5(月):
<寄付き前>Caterpillar (CAT), Estee Lauder (EL), McDonald's (MCD), On Semiconductor (ON), Tyson Foods (TSN)
<引け後>Chegg (CHGG), NXP Semiconductor (NXPI), Palantir Technologies (PLTR), Simon Prosperities (SPG)
2/6(火):
<寄付き前>AGCO (AGCO), Check Point Software (CHKP), Cummins (CMI), DuPont (DD), Eli Lilly (LLY), Hertz Global (HTZ), Linde plc (LIN), Spotify (SPOT)
<引け後>Amgen (AMGN), Cava Group (CAVA), Chipotle (CMG), Cirrus Logic (CRUS), e.l.f. Beauty (ELF), Ford (F), Fortinet (FTNT), Snap (SNAP), VF Corp. (VFC), Yum China (YUMC)
2/7(水):
<寄付き前>Alibaba (BABA), CVS Health (CVS), Hilton (HLT), Radware (RDWR), Silicon Labs (SLAB), XPO Logistics (XPO), Yum! Brands (YUM)
<引け後>ARM Holdings (ARM), Coty (COTY), Omega Health (OHI), PayPal (PYPL), Walt Disney (DIS)
2/8(木):
<寄付き前>Advanced Drainage Systems (WMS), CyberArk (CYBR), Hershey Foods (HSY), Kellanova (K), Masco (MAS), Ralph Lauren (RL), Solar Winds (SWI)
<引け後>Affirm (AFRM), Cloudflare (NET), Motorola Solutions (MSI), Synaptics (SYNA), Take-Two (TTWO), Terex (TEX)
2/9(金):
<寄付き前>AMC Networks (AMCX) Construction Partners (ROAD), PepsiCo (PEP), Sensient (SXT)
米国の主な経済指標
2/5(月):ISM非製造業景気指数
2/6(火):
2/7(水):
2/8(木):新規失業保険申請件数
2/9(金):
今週の着目点
今週の経済指標の発表はあまりありません。1月のFRB政策決定会合(FOMC)が終了し、FRBの高官もいろいろコメントを出してくると思います。パウエルFRB議長の政策決定会合後の記者会見での発言を繰り返す可能性が高いのですが、FRBが利下げプロセスを本当に開始する気があるのか、あればいつ頃なのかを確認を続けたいです。3月の利下げは遠のいており、最初の利下げが年後半なのか、それとも25年を視野に入れているかを確認していきたいです。金利のサポートがなくても株式市場は好調さを維持していますので、このあたりの優先度は落ちてきてはいますが、日課としての観察は必要だと思います。
来週の2つの重要な経済指標は、月曜日にS&Pグローバルの1月サービス業PMIとISMの非製造業景気指数です。サービス部門が米国経済の大きな割合を占めていますので、このデータが引き続き強ければ、ソフトランディングのシナリオが濃厚でありそれは、金利の引下げは当分起きないというシナリオを確認することになります。先週のパウエル議長の発言のとおり、過去数ヵ月と比べたインフレ動向がどうなっているのか、この報告書を注視する必要があります。
株式市場は、先週の大型ハイテク株の決算が無事終了したことで、一つの方向性が出たと思っています。とはいえ、S&P500指数構成企業の残りの半分が今後も控えていますのでひとつひとつ丁寧にチェックしておきたいです。今週は104の企業が決算発表を行います。
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