米国市場:24年10/28週の振返りと11/4週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、5,728.80と前週比-1.37%で終了しました。NASDAQは18,239.92と前週比-1.50%で終了しました。
先週の株価は、一連の四半期決算によって主要市場指数はすべて下落し、10月はマイナスで終了しました。先週は大手ハイテク株の決算発表があり、Microsoft、Amazon、Meta、Apple、Alphabetの5社の決算発表に注目が集まりました。結果として、すべての銘柄がEPS、売上高ともに事前予想を上回る決算となりました。ガイダンスでは、Microsoft、Appleのガイダンスが弱く、事前予想数字を下回る結果となりました。Amazonは、今回はよい決算となりましたが、ドル箱のAWSの成長率が19%と前Qと変わらず今後は大きな伸びが期待できる数字とはなっていませんでした。Meta、Alphabetもよい決算を発表していますが、高水準の設備投資が続いており今後、この設備投資の償却とEPSの伸びに対して投資家が懸念を持っており、株価が伸び悩みました。ただ、この設備投資額については、Googleは横ばい、Metaはレンジの下限を引き上げていますが、全体としては横ばいの数字となりました。従い、高水準の投資は続いているが、さらに大きな投資を予定していることはなさそうです。この結果を受けて、NVIDIAの株が軟調に変化しています。大手ハイテク各社の設備投資の鈍化を受けての結果かと思います。
ほかの決算の状況はS&P 500の70%がすでに決算を発表しており、そのうち75%が最終損益でポジティブなサプライズとなっています。しかし、S&P 500の2024年後半のEPS成長率予想は、2024年前半と比較して6.5%とさらにわずかに下方修正されています。この修正と10月の下落の後でも、S&P 500は2024年の予想EPS約240ドルの約24倍、2025年の予想EPS 274.81ドルの約21倍で取引されています。2026年の予想が出てきていませんので、米国株の割高感は解消されておらず小さな出来事で大きく動く要因となっています。2026年の予想が出るまではこの割高感に悩まされることになると思います。そして、直近のフェーズで決算のよかった銘柄に資金が集中してくると思います。
1日に発表された10月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が1.2万人と予想10万人を下回りました。水曜日に発表されたADPの雇用者数は23.3万人と予想11万人を大きく上回るものでした。10月の雇用統計は、9月~10月にかけてアメリカを襲った2つのおおきなハリケーンの影響もあり一時的なものである可能性も高く今後の新規失業保険申請件数の推移にも注目が集まると思います。今回の雇用統計を受けて、CMEFedWatchはFRBの利下げの可能性を高めてはいますが、FRBが今後の利下げのペースについてどのようにコメントするかも重要なポイントになってます。
来週は、大統領選挙、FRBの次回政策決定会合、そして9月四半期決算の発表が予定されています。トランプ氏、ハリス氏の支持率は均衡しており、選挙当日に明確な勝者が決まらず、実際の結果がわかるまで数日かかるかもしれません。混乱が収まれば、今後の政策の方向性と2017年の減税の行方がより明確になるため、市場も落ち着きを取り戻すと思います。
従って、今のシナリオでは11月中旬ごろまでは、高いバリエーションと選挙結果をめぐっての混乱でS&P500は今期の高値より3から5%程度低くなり、その後は26年の期待に向けて上げてくるのではないかと予想しています。
株式市場
S&P 500(以下、S&P)の第3四半期決算シーズンにおいて、現時点でS&P企業の70%が2024年第3四半期の決算を発表しています。全体として、この指数は現在、先週末と比較して、そして四半期末と比較して、第3四半期の収益を高く報告しています。前年同期比では、この指数は5四半期連続で増益を報告しています。
EPS(1株当たり利益)に関しては、発表済み企業の75%が予想を上回る実績を報告しています。これは5年平均の77%をわずかに下回っていますが、10年平均の75%と同水準です。企業は平均で予想を4.6%上回るEPSを報告していますが、これは5年平均の8.5%と10年平均の6.8%を下回っています。
収益に関しては、S&P企業の60%が予想を上回る実績を報告しています。これは5年平均の69%と10年平均の64%を下回っています。企業は平均で予想を1.1%上回る収益を報告していますが、これは5年平均の2.0%と10年平均の1.4%を下回っています。
セクター別に見ると、通信サービスとヘルスケアセクターがEPSと収益の両方で好調な業績を牽引しています。一方、情報技術セクターはEPSでネガティブなサプライズを報告しており、エネルギーセクターはEPSと収益の両方で減益を報告しています。
第3四半期のブレンド型(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は、本日時点で5.1%です。これは先週の3.6%、第3四半期末(9月30日)の4.3%から上昇しています。もし5.1%が実際の四半期成長率であれば、S&Pにとって5四半期連続の前年同期比増益となります。第3四半期のブレンド型収益成長率は、本日時点で5.2%です。これは先週の4.9%、第3四半期末(9月30日)の4.7%から上昇しています。もし5.2%が実際の四半期収益成長率であれば、S&Pにとって16四半期連続の収益成長となります。
今後の見通しとして、アナリストは2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の(前年同期比)利益成長率をそれぞれ12.7%、13.0%、12.2%と予想しています。2024年通年では、アナリストは(前年同期比)9.3%の増益を見込んでいます。2025年通年では、アナリストは(前年同期比)15.1%の増益を予測しています。
今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は21.3倍で、5年平均(19.6倍)と10年平均(18.1倍)を上回っています。しかし、このP/E比率は、第3四半期末(9月30日)に記録された将来P/E比率21.6を下回っています。
来週は、S&P企業のうち103社が第3四半期の決算を発表する予定です。(出典:FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
11/4(月):
<寄付き前>Constellation Energy (CEG), Marriott (MAR), Yum China! (YUMC).
<引け後>Boise Cascade (BCC), Bright Horizons (HFAM), Cirrus Logic (CRUS), Hologic (HOLX), NXP Semiconductor (NXPI), Palantir (PLTR).
11/5(火):
<寄付き前> Builders FirstSource (BLDR), Cummins (CMI), DuPont (DD), Emerson (EMR), Globalfoundries (GFS), LGI Homes (LGIH), TopBuild (BLD).
<引け後>International Flavors (IFF), Lumen Technologies (LUMN).
11/6(水):
<寄付き前>American Electric (AEP), Kennametal (KMT), Shopify (SHOP).
<引け後>Arm Holdings (ARM), Coherent (COHR), Dutch Bros (BROS), Lyft (LYFT), Qualcomm (QCOM), Tanger Factory (SKT), Veeco Instruments (VECO), Zillow (ZG).
11/7(木):
<寄付き前>Air Products (APD), Ceva (CEVA), GoodRX (GDRX), Hershey Foods (HSY), Installed Building Products (IBP), Ralph Lauren (RL), Tapestry (TPR).
<引け後>Airbnb (ABNB), Alarm.com (ALRM), AMN Healthcare (AMN), Axon (AXON), Block (SQ), Fortinet (FTNT), indie Semiconductor (INDI), Insulet (PODD), Motorola Solutions (MSI), Synaptics (SYNA), Trade Desk (TTD).
11/8(金):
<寄付き前>Advanced Drainage Systems (WMS), CNH Industrial (CNHI), Lamar Advertising (LAMR), Sony (SONY).
米国の主な経済指標
11/4(月):
11/5(火):製造業新規受注、耐久財受注
11/6(水):ISM非製造業景気指数
11/7(木):FOMC、新規失業保険申請件数
11/8(金):ミシガン大学消費者信頼感指数
今週の着目点
2024年第3四半期のGDP、9月のPCE価格指数、ISMの10月製造業PMI、10月の雇用報告など、いくつかの大きな経済データが発表された後で、経済指標の発表は少なくなります。しかし、選挙とFRBの11月の政策会合のため大きく市場が動く可能性が高いです。
まず、大統領選挙は非常に接戦となっており、明確な勝者が火曜日の夜、あるいは水曜日でさえ発表されない可能性があります。勝者が発表され、同時に行われている議会選挙の結果が明らかになってくると政策状況、税率、市場、国内経済、保有資産に影響を与える可能性のある政策や、その他の項目の潜在的な変更に注目が集まってくると思います。
この選挙に伴い、FRBの政策会合とパウエルFRB議長の記者会見が通常の水曜日ではなく木曜日に開催されます。10月の雇用統計で示された非農業部門雇用者数を踏まえると、FRBは予想通り25ベーシスポイントの利下げを行う可能性が高いです。ただし、ハリケーンの影響を含む数字となっているため、その後に発表されるFRBの政策声明と、今後の利下げの道筋に関するパウエルFRB議長のコメントを注意深く分析する必要があると思います。FRBは会合ごとに決定を下し、引き続きデータに依存すると繰り返しますが、来週25ベーシスポイントの利下げを実施した場合、中央銀行はより慎重なペースで利下げを行うことになるかもしれません。FRBのコメントが予想よりもハト派的であれば、建築関連銘柄も視野に入れていく必要があるかと思います。
来週も四半期決算発表は引き続き大量に発表があります。ただ、AI関連で注目されていた大手ハイテク銘柄の決算発表が終了し、おおよそのAIの方向性は見えてきました。すでに発表が終わっている企業の決算発表やカンファレンスコールの内容も確認し、今後の市場の方向性を確認することになると思います。
来週注目される銘柄には、NXP Semiconductor (NXPI)、Palantir (PLTR)、LGI Homes (LGIH)、Arm Holdings (ARM) などが上げられると思います。特にArmに関しては、エンドマーケットに関する同社のコメントだけでなく、Qualcommとの関係について同社が何を語るかにも注目したいです。12月の裁判を前に、ArmもQualcommも来週の決算発表では特に大きなことは述べないとは思いますが、裁判が始まる前に和解の可能性もあると思っています。