米国市場:10/16週の振返りと10/23週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、4,224.16と前週比-2.39%で終了しました。NASDAQは12,983.81と前週比-3.16%で終了しました。
先週の株価は、先々週に下落傾向を見せた長期金利が一転し、上昇傾向を見せ大台である5%に迫る展開となったため、これに反応して株価は下落しました。また、ガザ紛争も拡大の様子を見せておりこちらも株価を下げる要因になっています。
先週1週間は、いろいろな面で困難が続きました。この先も不透明な状況が続くと思われます。その心理を反映して、Fear&Greed IndexもFearの方に再度戻ってきており、VIX指数も徐々に上がってきています。
19日にFRBのパウエル議長はニューヨーク経済クラブでのスピーチにおいて、「近夏のインフレ鈍化に満足しており、堅調な経済活動がインフレ抑制の進展を危険にさらす明確な証拠がない限り、FRBが追加利上げを実施する可能性は低い」ことを示唆しました。これにより10月31日~11月1日に開催されるFOMCにおいて利上げがないと市場は判断したようです。CMEFed Watch toolにおいても11月1日の利上げ可能性は0%となりました。ただ、これまでの経済指標からは経済活動が予想以上に堅調であることが示されており、利上げ終了を表明するには至っておりません。
ただ、AAAが示す全米平均ガソリン価格は3.5ドルと徐々に下がってきており、経済指標にはまだ現れていませんが経済活動が若干弱まってきているのではないかと見ております。
国際情勢に目を移すと、先々週より発生しているガザ戦争にメディアの注目は集まっておりますが、ウクライナでの戦闘はまだ続いており、台湾情勢の緊張もなくなったわけではありません。世界全体として、不安要素が強まってきており10日にIMFより発表された24年世界経済見通しは2.9%の成長を見込まれていましたが、こちらを更に押し下げる要因になるのではないかと思います。
19日木曜日に、中古住宅販売件数が発表され、400万件と予想390万件を上回りました。しかし、20年後半から続いた600万戸超からは大きく下がってきており、長期金利が上がっていることによる逆風を示す結果となっております。長期金利が長期安定していることに消費者が慣れるまで、もしくは長期金利の下落が確認され住宅ローンの金利が下がるまではしばらく住宅市場は低迷したままと考えています。
各企業の決算発表も本格化しており、その中でプロクター・アンド・ギャンブル、ペプシコ、チポトレ、クリーブランド・クリフス、そしてヌコールは、いずれも値上げの旨を伝えています。この値上げにより売上高は増えていますが、販売数量自体は減少が続いており、消費者の値上げ疲れが見える結果となっていました。
S&P500指数は4,224.16で週を終えて、200日移動平均の4,233を下回っています。S&P500は8月下旬の高値から約8%下落しており、まだ反転の兆しは見えていませんが、4200でとどまるのか、更にしたに行くのかは観察しておきたいです。ただ、経済活動が弱まってくるという兆しが見えてきており、賃金上昇、インフレプレッシャーが和らいでくると考えると今後の長期金利の上昇は限定的でありこのあたりで底をつけて反転し、11月~1月の例年のラリーを行ってくれることを期待してます。
株式
S&P500構成企業の第3四半期決算シーズンは、現時点では平均的なスタートとなっています。予想を上回る結果を出した企業の数とその規模はともに10年平均に近い状況です。しかし、ヘルスケア・セクターの2社のEPS予想の下方修正により、過去数週間に報告されたポジティブなEPSサプライズは相殺されてしまいました。その結果、S&P500種株価指数は、先週末・四半期末と比べ、第3四半期の業績を下方修正されています。S&P500種指数は現在、4四半期連続で前年同期比減益を報告しています。
全体として、S&P 500構成企業のうち17%が2023年第3四半期の決算を発表しています。これらの企業のうち73%が予想EPSを上回る実績を報告しており、これは5年平均の77%を下回り、10年平均の74%をわずかに下回っています。企業が発表した収益は予想を6.6%上回っており、これは5年平均の8.5% を下回りますが、10年平均の6.6% と同じとなっています。 しかし、ヘルスケア・セクターの2社でEPS予想が下方修正されたことで、先週各社が報告した好業績サプライズは相殺されています。その結果、同指数は本日、先週末および四半期末と比較して第3四半期の業績を下方修正しています。第3四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定結果を合算したもの)減益率は-0.4%で、先週の増益率0.3%、第3四半期末(9月30日)の減益率-0.3%と比較して下方修正されています。仮に-0.4%が実際の第3四半期の減益率であれば、同指数による前年同期比の減益は4四半期連続となります。
売上高に関しては、S&P500構成企業の66%が実際の売上高が予想を上回ったと報告しており、これは5年平均の68%を下回ったものの、10年平均の64%を上回っています。売上高はアナリスト予想を0.7%上回っていますが、これは5年平均の2.0%、10年平均の1.3%を下回っています。第3四半期の混合売上成長率は1.8%で、先週末の1.9%より低くなっていますが、第3四半期末(9月30日)の1.6%は上回っています。エネルギー・セクター企業の売上高予想の上方修正が、第3四半期末からの指数全体の売上高成長率上昇の最大の要因となっている。仮に1.8%が今四半期の実際の増収率であれば、11四半期連続の増収となる。
今後の見通しとして、アナリストは2023年第4四半期の収益成長率(前年同期比)を6.7%と予想しています。CY2023については、アナリストは(前年比)0.7%の増益を予想している。CY2024については、アナリストは(前年比)12.2%の利益成長を予想しています。
12ヵ月予想PERは17.7で、5年平均(18.7)を下回っていますが、10年平均(17.5)を上回っています。来週はS&P500種構成企業160社(ダウ30種構成企業12社を含む)が第3四半期決算を発表する予定です。
来週の主な決算発表(予定)
10/23(月):
<寄付き前>
<引け後>Celestica (CLS), Crane (CR), Hexcel Corporation (HXL), Logitech (LOGI) Packaging Corp. (PKG)
10/24(火):
<寄付き前>3M (MMM), Coca-Cola (KO), Corning (GLW), General Electric (GE), General Motors (GM), Halliburton Company (HAL), Kimberly Clark (KMB), Nucor (NUE), Spotify (SPOT), Verizon (VZ)
<引け後>Alphabet (GOOGL), F5 Networks (FFIV), Microsoft (MSFT), Snap (SNAP), Teladoc (TDOC), Visa (V), Waste Management (WM)
10/25(水):
<寄付き前>Boeing (BA) General Dynamics (GD), Hilton (HLT), MSC Industrial (MSM), Norfolk Southern (NSC), T-Mobil US (TMUS)
<引け後>Ameriprise Financial (AMP), IBM (IBM), KLA Corp. (KLAC), Meta Platforms (META), United Rentals (URI), Whirlpool (WHR)
10/26(木):
<寄付き前>Altria (MO), American Tower (AMT), Bristol Meyers (BMY), Comcast (CMCSA), Hasbro (HAS), Hershey Foods (HSY), Honeywell (HON), Keurig Dr Pepper (KDP), Mastercard (MA), Northrop Grumman (NOC), Southwest Airlines Co (LUV), UPS (UPS), Vulcan Materials (VMC).
<引け後>Amazon (AMZN), Chipotle (CMG), Deckers Outdoor (DECK), Digital Realty Trust (DLR), Ford Motor (F), Intel (INTC), Juniper Networks (JNPR).
10/27(金):
<寄付き前>AbbVie (ABBV), AutoNation (AN), Booz Allen Hamilton (BAH), , Colgate Palmolive (CL), Exxon Mobil (XOM), Newell Brands (NWL), Stanley Black & Decker (SWK).
米国の主な経済指標
10/23(月):
10/24(火):リッチモンド連銀製造業指数
10/25(水):新築住宅販売件数
10/26(木):個人消費、GDP、耐久財受注、新規失業保険申請件数
10/27(金):個人所得・支出、PCEコアデフレータ
今週の着目点
今週は300社強が四半期決算を発表しました。来週はその数が3倍以上に増え、GAFAなどの大型ハイテク株の決算も発表されます。指数に占める割合が大きい企業の発表が相次ぎますので、これらの結果によって指数も動くと思います。アナリスト予想数値との差異、Callでの経営者の今後の見立てについても注意を払っていきます。
また、先週にパウエルFRB議長の見解が発表され、11月の会合のコンセンサスは形成されましたが、12月のFRB政策決定会合に向けても引き続き指標の確認を行っていきます。来週注目される経済データは、10月フラッシュPMIと9月個人所得・支出報告、それにPCE指数になります。この2つの経済指標は、FRBが好んで使用するインフレ指標と同様、今四半期の景気ペース、インフレ、賃金圧力、雇用創出について何を示すかが注目点となります。
国際情勢に押され気味ですが、下院議長もまだ選出されておりませんのでこちらの推移も見守りたいと思います。