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米国市場:24年10/14週の振返りと10/21週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,864.67と前週比+0.08%で終了しました。NASDAQは18,489.55と前週比0.80%で終了しました。
 先週の株価は、金融セクターの四半期収益が引き続き好調で、週初めは明るいスタートとなりましたが、United Health(UNH)とASML(ASML)が2025年のガイダンスを相次いで下方修正したことで、市場の勢いはいくらか削がれました。しかし最終的には、台湾セミコンダクター(TSM)とNetflix(NFLX)の四半期決算、そしてiPhone 16に関して中国での売上が好調との報道により、市場は先週も上昇しました。
 先週のUnited Health、ASMLの決算発表に対する市場の反応は、今後の決算シーズンにおいて、期待外れの決算を発表した企業は非常に厳しい状況に直面することを示唆しており、市場に関わるうえで厳しさを再認識する形となりました。United Healthはメディケイドおよびメディケアに関して再定義によって影響を受けており、ASMLは客先の発注の先延ばしによって影響を受けたとのことです。特に、ASMLの決算発表は半導体の需給自体がAI半導体以外は厳しいものであるということを示唆するような内容となりました。台湾セミコンダクターの決算が良かったため、半導体銘柄に買戻しが少し入ったようですが、好調なのはAI関連を扱う一部の半導体銘柄だけであり、その他大勢は苦しんでいるのではないかなと考えています。今後、それらの企業が決算を発表してきますのでこのあたりは徐々に明らかになってくると思います。ただ、S&P500のバリューションは高い位置にありますので、市場全体がどんどん上がるのではなく、良い決算を出した企業だけが上昇するという展開になると考えています。
 RealClearPoliticsによると、カマラ・ハリス氏とトランプ氏の支持率は拮抗しており、接戦となっています。カマラ・ハリス氏の勢いはやや弱まっているように見えますが、激戦州では依然としてどちらの候補も明確な優位性を築けていません。そのため、大統領選挙の結果がスムーズに確定すれば良いのですが、2020年の大統領選挙のように混乱が生じる可能性もあり、その場合は市場が調整局面を迎える可能性も考えられます。企業決算は、全体的に見ると好調とは言えないまでも、過去平均と同程度の水準を維持しており、大統領選挙後の混乱を乗り越えれば、市場は再び上昇トレンド(クリスマスラリー)に回帰する可能性があります。
 18日に発表されたGDPNowは3.4%と、アメリカ経済が引き続き好調であることを示唆しており、現時点では景気が大きく悪化する可能性は低いと考えられます。

株式市場

 現時点でS&P500企業の14%が2024年第3四半期決算を発表しています。これらの企業のうち、79%が予想を上回るEPSを報告しており、これは5年平均の77%と10年平均の74%を上回っています。しかし、決算発表した企業の収益は予想を6.1%上回るにとどまっており、5年平均の8.5%と10年平均の6.8%を下回っています。9月30日以降、工業、ヘルスケア、エネルギーセクターの企業のEPS予想は下方修正されました。一方で、金融セクターの企業はポジティブなEPSサプライズを発表しました。これらの結果、第3四半期のブレンド増益率は、本日時点で3.4%です。これは、先週の2.9%からは上昇していますが、第3四半期末(9月30日)の4.3%からは低下しています。もし3.4%が実際の四半期成長率であれば、5四半期連続の増益となりますが、2023年第2四半期(-4.2%)以来、最低の増益率となります。
 11セクターのうち、8セクターが増益となる見込みで、情報技術と通信サービスセクターが牽引しています。一方、3セクターは減益となっており、特にエネルギーセクターの減益幅が大きくなっています。
 S&P500企業の64%が予想を上回る収益を報告していますが、これは5年平均の69%を下回っています。しかし、10年平均の64%と同水準です。全体として、企業の収益は予想を1.1%上回っていますが、これは5年平均の2.0%と10年平均の1.4%を下回っています。9月30日以降、金融とヘルスケアセクターの企業はポジティブな収益サプライズを報告しましたが、エネルギーと工業セクターの企業の収益予想は下方修正されました。これらの結果、第3四半期のブレンド収益成長率は、本日時点で4.7%と、先週の4.6%からわずかに上昇しています。これは、第3四半期末(9月30日)の4.7%と同水準です。もし4.7%が実際の四半期収益成長率であれば、16四半期連続の収益成長となります。
 9セクターが増収となる見込みで、情報技術セクターが牽引しています。一方、2セクターは減収となっており、特にエネルギーセクターの減収幅が大きくなっています。
 アナリストは、2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の利益成長率を、それぞれ前年同期比14.0%、13.8%、13.0%と予想しています。また、2024年通年では9.4%の増益、2025年通年では15.1%の増益を見込んでいます。
 今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は21.9倍で、5年平均(19.5倍)と10年平均(18.1倍)を上回っています。このP/E比率は、第3四半期末(9月30日)に記録された将来P/E比率21.6も上回っています。
 今週は、S&P500企業の112社(うちダウ30構成銘柄7社)が第3四半期決算を発表する予定です。
(出典:FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

10/21(月):
<寄付き前>SAP SE (SAP)
<引け後>Nucor (NUE)
10/22(火):
<寄付き前>3M (MMM), Comcast (CMCSA), Danaher (DHR), GE Aerospace (GE), General Motors (GM), Kimberly Clark (KMB), Lockheed Martin (LMT), Logitech (LOGI)
<引け後>Packaging Corp. (PKG), Texas Instruments (TXN)
10/23(水):
<寄付き前>Boeing (BA), Coca-Cola (KO), General Dynamics (GD), Hilton (HLT)
<引け後>Celestica (CLS), IBM (IBM), Lam Research (LRCX), Lending Club (LC), ServiceNow (NOW), Tesla (TSLA), T-Mobile (TMUS), United Rentals (URI)
10/24(木):
<寄付き前>American Airlines (AAL), Dow (DOW), Honeywell (HON), Labcorp (LH), MSC Industrial (MSCI), Northrop Grumman (NOC), UPS (UPS)
<引け後>Boston Beer (SAM), Coursera (COUR), Universal Health (UHS)
10/25(金):
<寄付き前>AutoNation (AN), Booz Allen Hamilton (BAH), Colgate Palmolive (CL).

米国の主な経済指標

10/21(月):
10/22(火):リッチモンド連銀製造業指数
10/23(水): 中古住宅販売件数
10/24(木):新築住宅販売件数、新規失業保険申請件数
10/25(金):耐久財受注

今週の着目点

 今週は、既存住宅販売と新築住宅販売を含む、9月の住宅データが発表されます。住宅ローン銀行協会が木曜日(10月17日)に発表したデータによると、9月の新築住宅購入の住宅ローン申請件数は前年同期比で10.8%増加しました。これらの調査結果から、MBAは9月の新築一戸建て住宅販売を季節調整済み年率68万戸と推定しています。これは、8月の71万6000戸、7月の73万9000戸を下回りますが、四半期ベースでは堅調な販売が続く見込みです。9月の住宅データを分析する際には、レナー(LEN)とKBホーム(KBH)の最近の2桁の引き渡しガイダンスと、今週発表されるパルテ(PHM)の発言に注目する必要があります。また、好調な賃金上昇を背景とした住宅需要の動向も確認していく必要があるでしょう。
 &P500構成銘柄の約85%が今後数週間で決算を発表する予定です。好決算を発表した企業だけが株価を伸ばす可能性が高いため、各企業の決算内容を注意深く確認していく必要があります。
 半導体市況を確認するため、Texas Instruments (TXN)とLam Research (LRCX)の決算発表とカンファレンスコールでの発言内容に注目しています。特に、カンファレンスコールでは、今後の需要見通しや設備投資計画に関する発言が期待されます。また、防衛産業では、Lockheed Martin (LMT)の複数年にわたる納品スケジュールにも注目しています。

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