「お前だ!」 ヨハン・ハインリッヒ・フュースリー作「三人の魔女」より【詩】
「お前だ!」
振り返ると三人の魔女がいた
異形と呼ぶほかない醜貌だが
鷹のようにとんがった眼には
一点の曇りもなく
まるで魂の裏側まで見透かしそうな
鋭い眼光を放つ
思わずたじろぎ
後ずさりする
魔女たちには
何が見えるのか
捻じ曲がった唇をさらに歪ませ
地獄から吹く風のような
震える声で囁く
「お前だ!」
節くれ立った枯れ木のような指先で
指される
魂を掴み出されまいと
胸をかばいつつ
さらに後ずさる
そんな姿をあざ笑うかのように
さらに唇を歪め
邪悪な笑いは激しさをます
「お前だよ!」
「他の誰でもない」
「お前なんだ!」
これは地獄への魂の召喚だろうか
なかば諦念の色を浮かべた
表情に
魔女たちは呆れかえったような
口調で詰る
「だからお前だってば!」
「今 財布落としたのは!」
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