あなたはアドバイス・モンスター?〜The Coaching Habit
この本のポイントは「habit(習慣)」というところです。
(methodやskillでなく)
コーチングの重要性、必要性は組織においてリーダー的な役割にある人たちの多くが認めているところです。
なのに使えていない。
活かせていない。
結果が出ていない。
その原因はメソッドやスキルといったやり方に注目しすぎて実践につながりにくいからだと著者は言います。
であれば、逆に日常的に取り入れやすいレベルにおとして(やり方を極力シンプルに)まず実践、「習慣」としようということです。
難しく考えて使えないくらいなら、易しく使えるレベルにして、まず使っていこうと。
だから「The Coaching Skill」でもなく「The Coaching Method」でもなく「The Coaching Habit」なのではないかと思います。
(調べたら日本語訳もでてて、そっちではみごとに「メソッド」になってますね、ありゃりゃ)
まぁ、メソッド(というか7つの質問)も紹介されてるので間違いではないですが。
7つの質問をそれぞれ章分けして解説されてますが、そのうちのひとつ「Advice Monster」について。(Advice Monsterは質問についてではないです)
多くの人はついアドバイスを与えることに意識が向きがちです。そして実際にそのように行動します。
著者の会社ではそういう人を「Advice Monster」と呼ぶそうです。
1日でも、半日でも、いや1時間でも、自分がそういうモード(アドバイスしたくてしかたない状態)に入る回数を観察してみることをすすめています。
いろいろなところで引用されている、医師に対するある調査があります。
彼らが患者との会話において自ら介入(患者の話をさえぎって)するまでの平均時間についてです。
なんと、たったの18秒だったそうです。
これはこの調査対象となった医師たちだけではないだろうと。
数えきれないくらい多くのマネージャー職、リーダーといった役割についている人々にもいえるだろうと。
ようするに多くの場合、人は何が実際に問題となっているのか、当事者に何が起きているのかを把握していないのに、なぜか、求められている回答を持っていると「確信」(盲信)しているということです。(これがAdvice Monsterです)
アドバイスが悪いということではなく、実際に役に立つ、機能するアドバイスになっていないことがあまりに多いことへの辛辣な警鐘です。
機能するアドバイスには「観る」(事情、事態を観察する)ことが不可欠で、それをすっ飛ばして自分が言いたいことをただ開陳するだけでは害悪になりかねないということです。(自戒も込めて)
ということは、そこをクリアしていれば、もちろんアドバイスは有効、役に立つということでもあります。(アドバイス自体が悪いのではなく、観ずにしようとするのが問題)
そして、それをするつもり、意識がなければ、まずは傾聴に注力したほうがずっといい、ということです。
ここから先は私の解釈からの結論になりますが
ここで鍵になるのは「正直さ」かもしれません。
他者に書き込まれた見栄えのいいそれ(出処不明な価値観からのアドバイス)ではなく、取り繕った何かでもなく、
そもそも知らないではないか、ということを認める正直さです。
逆にそれだけのことを(知るための労力、時間を注ぎ、ときに痛みを共にする)経たうえでのアドバイスであれば機能するということです。
sympathy(同情)でもempathy(共感)でもなく(どちらも同じ階層での共有でしかなく、そこにとどまるならば現状打破にはつながらない)
「compassion」です。
(sympathyよりも深く、助けようとする気持ち)
compassion(慈悲)を抱く相手よりもひとつ高い階層に自らを置き、だからこそ引き揚げることが出来る。
だからそれが救い、慈悲、思いやりとなる。
(共感ではなく)
その覚悟(ゴール)のあるなしが、Advice Monsterか否かを分けるということです。
また、sympathyやempathyは「共感」ゆえにかぶりを受けてしまったり、burnout(共倒れ)になる危険性があります。
それは「共感」してしまうから。
compassionは共感からの慈悲ではありません。
(私も今回あらためて辞書をひいてその違いを知りました)
そもそも慈悲は共感ではない。
共感から慈悲は生まれない。
なにがそこ(共感と慈悲)を分けるのでしょうか。
これもまた「ゴール」次第ではないでしょうか。
瞑想に引き寄せていうと、上座部の瞑想法のひとつである「慈悲の瞑想」が思い浮かびますが、「慈悲は共感ではない」という感覚であらためてこの瞑想のマントラを読むと、それ以前とは違った世界が見えてくるかもしれません。