「OLD ROOKIEs」第7話 -ヒットの方程式-
永田がワークスコーポレーションとリクルートの2社を兼任し、約2年が経とうとしていた頃。
永田は編集長としてほとんどの時間をワークスコーポレーションに費やしつつも、なんとか時間を捻出し、リクルートの子会社・メディアファクトリーのプロジェクトを複数担当していた。
メディアファクトリーでは、永田が企画から関わってきた漫画プロジェクトが大きくヒット。さらなる追い風として、ポケモンカード・プロジェクトの人気が爆発し、社運をかけた一大プロジェクトへと成長していた。
しかし、何もかもが順風に見えていたなか、永田は徐々に限界を感じ始めていた。
それは、体力的な限界という意味ではない。
永田のなかで、クリエイティブの目利きに対する自信が薄れ始めていたのだ。
あれは、ポケモンカード・プロジェクトが始動してまもない頃。さまざまなポケモンキャラクターのイラストを見せられた永田は、ある1匹のキャラクターに目が留まった。
「これ、全然かわいくないですねぇ」
当時、あまりピンと来なかったキャラクター“ピカチュウ”が、その後、爆発的な人気を誇っていたのだ。
永田は、コンテンツにおけるヒットの法則に疑問を感じていた。
これまでさまざまなクリエイティブを創るなかで、たびたびヒットは出してきた。しかし、そこに明確な方程式はなく、最後の最後は感性に委ねられてしまう。
そして、永田は自分にはそのような感覚的な才能はないと思い始めていた。
「クリエイティブなコンテンツで、継続的にヒットを出し続けるのは難しい」
それが永田の答えだった。
一方で、ワークスコーポレーションで手がけていた情報誌の仕事は、いわば“事業”に近い感覚があった。
人が必要とする情報を集めれば、それは必ず価値になる。
永田は、自分の適性はクリエイターとしてコンテンツを“創る”よりも、世の中の流れやニーズを先読みし、新しい事業やサービスを“創る”方にあると悟った。
そして、2000年。
永田は、これまで籍を置いていたリクルートをとうとう退社。ワークスコーポレーション1社に注力することとなった。
幼い頃から、とにかく“創る”ことが大好きだった永田。
異なる“創る”の間を渡り歩き、自分の適性を本当の意味で理解した永田は、確信を持って次なる道へ進もうとしていた。
つづく。
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第1話 -卒業- https://note.mu/showcase/n/nd305564958cc
第2話 -挑戦- https://note.mu/showcase/n/n2b1a8afc07fc
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第4話 -予感- https://note.mu/showcase/n/nb2813ef9f60d
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