「OLD ROOKIEs」 第12話 -真逆の二人から生まれるもの-
インターネットがもたらす未来の足音が聞こえ始めた2005年。
この年は、“ブロードバンド・コンテンツ元年”とも呼ばれ、「YouTube」や「iTunes Store」、USEN の「GyaO!」などのインターネットサービスが日本で次々に登場した。
インターネットの急速なブロードバンド化とコンテンツのリッチ化の流れは、森と永田の両社にとって大きなチャンスだった。
森の会社、フューチャーワークスには、各クライアントからwebサイトや動画コンテンツを活用したプロモーションの依頼が殺到。
永田の会社、スマートイメージはもともとコンテンツ作りにおけるリッチな表現力や技術力を得意としていたので、時代の波は確実に二人の方へと近づいていた。
しかし、それぞれの受託型&少人数でのビジネスは限界に達しようとしていた。
同じオフィスで過ごすうちに、相談しながら協力して仕事を進めることも増えていた二人。そんな二人が、一つの会社を立ち上げようと考えるのは自然な流れだった。
二人は、共同代表で会社を創業し直そうという結論に至った。
「絶対にうまくいかないよ」
二人が真逆の性格であることを知る共通の知人の中には、否定的な声をあげる者もいた。
だが、正反対だからこそ互いの強みはかぶっていない。事業をやる上では、非常にバランスが良かったのだ。
こうして、2005年11月、株式会社フューチャーワークスと株式会社スマートイメージは合併。新しい会社は、永田の発案でショーケース・ティービーと名付けられた。
「一見、普通に見える商品でも、デパートのショーケースに飾られているとつい欲しくなる。さらに、店員さんの丁寧な説明に納得し、幸せな気分で購入する。僕たちは、そんな魔法の箱(ショーケース)をインターネット上に提供する会社なんだ」
永田が言うに、ショーケースとは、商品を最も魅力的に見せるための“箱”。
ティービー(TV)は今はテレビ局だが、数年もすればインターネットがTVに代わるものになると二人は確信していた。
こうして、株式会社ショーケース・ティービーが誕生した。
森は、すぐに社名を気に入った。自分たちの存在意義を絶妙に表した言葉だと思った。
「そうだ、魔法の箱と接客による“おもてなし”。僕たちは、人とIT、リアルとネットの間を埋める“おもてなし”を提供していこう」
商品の魅力を最大限に引き出し、分かりやすく伝え、商品がたくさん売れる仕組みを作る。
それこそが、真逆な二人の団結によって生まれる新しい価値だった。
新たなギアを入れ直した森と永田。
“豊かなネット社会”に向けた二人のマラソンがいよいよ始まろうとしていた。
つづく。
株式会社ショーケースの「これまで」と「これから」を描くノンフィクション小説『OLD ROOKIEs』は、毎週1話ずつ公開中!
第1話 -卒業- https://note.mu/showcase/n/nd305564958cc
第2話 -挑戦- https://note.mu/showcase/n/n2b1a8afc07fc
第3話 -犬のウン- https://note.mu/showcase/n/nfb96f0b7d7ee/edit
第4話 -予感- https://note.mu/showcase/n/nb2813ef9f60d
第5話 -スタートライン- https://note.mu/showcase/n/nebefa72c6269
第6話 -スタイル- https://note.mu/showcase/n/n4b6d5391be52
第7話 -ヒットの方程式- https://note.mu/showcase/n/ndae846cd3747
第8話 -受託制作の限界- https://note.mu/showcase/n/n2f1f6ada2a6c
第9話 -ひとり旅のはじまり- https://note.mu/showcase/n/nc9a4700f699f
第10話 -二人の距離- https://note.mu/showcase/n/n59476c24920b
第11話 -親父の背中- https://note.mu/showcase/n/n4d0bae05c470