夏帯の面白さを熱く語る
1 意図して集めたものではない夏着物と帯
筆者の夏帯コレクション、意図的に集めた訳ではありませんが、絵柄や手法に面白いものが多数集まっています。その多くは著書「夏着物の文様とその見方」でご紹介しておりますが、一部をここで御覧いただき、その面白さを味わっていただこうと思います。
夏着物を着る人が少ない>>形見分けなどでもらったが使わない>>それなら保存会に寄贈しよう
そんな経緯でコレクションが増えていったような感があります。そのうちの何点かは、夏に使用された時の汗じみなどで展示は不向きですが、ほとんど使用されないまま残ったものもあります。そのいくつかをご紹介します。
2 それぞれの帯を解説する
この葡萄柄の名古屋帯などは、ほぼ未使用です。白の絽に垣根の竹、葡萄の蔓と実を染め、その上から金銀の刺繍をしています。刺繍は金駒糸による駒詰め刺繍です。葡萄の葉の一部も金で装飾されています。通常、絵柄の豪華さを出すための金糸刺繍ですが、金銀の併用・その上に顔料でも金銀を染めているところが凝っています。
百合は夏の人気モチーフです。保存会では百合文様の帯を少なくとも10点は保有しています。上は清楚な刺繍帯・下は華やかな織の帯です。いずれも厚い時期の薄物や単の着物を引き立てるデザインです。
いずれも波をモチーフにした名古屋帯です。上の帯は扇の上に夏草と青海波、下の帯は躍動的な波に朱色で源氏車と、面白いデザインに仕上げています。上の帯は金糸をふんだんに使用し、名古屋帯ながら礼装にも使用できる格調高い夏帯です。
水とくれば次は舟です。夏帯には水に浮かぶ舟の絵柄が多く、着物にも多くの舟文様がつけられています。この帯は舟の絵柄がデザイン化され、色も朱色に水色、背景に縦じまとポップな印象です。
夏の意匠の中で多く用いられている露芝は、それだけで涼しさを感じさせます。この帯は地紋にも動きのある草の文様を織り込んでいます。
えんじ色の邪縞に、丸で縁取りをし、風景と魚の文様を織り出した帯です。やや中国風のテイストです。ここでモチーフとして取り上げられている魚は、富の象徴です。中国では魚を「ユィ」と発音するので、同音の「有余(有り余る)」と共通していることから、演技が良いとされています。このような音による縁起担ぎは、いろいろな場で見られます。
3 深みにはまる夏帯
夏はそうでなくても着物姿の少ないとき。そんな時にこうした面白い帯をしていると、一層目立って注目が集まります。着物ファンがますます夏帯にはまっていく場面です。
似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
資料制作:大久保好江(いとへん・ぎん 主宰)
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