読書メモ:『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』たまたまAmazonで高評価だったのを見つけ、その場で購入(電子書籍です)。先日読了しました。

前情報

「ヘイル・メアリー」とは、アメフトの試合で投げられるロングパス「ヘイル・メリー(メアリー)・パス」に由来します。ラグビーのように自陣を前へと進めるアメフトにおいて、試合終了間際に大逆転を狙って投げる、まさに「神頼み」のパス(バスケで言うブザービーターのようなものでしょうか)。自分はこの用語を漫画『アイシールド21』で知っていました(余計な知識はだいたい漫画から仕入れているという、、、)。

上記のヘイル・メアリーの由来、そしてSF小説というジャンルから、「うーん、地球存亡の危機に、神頼み的にロケットが発射される?」ぐらいの予想を立てて読んでみました。逆に言うと前情報はそれくらいです。

読んでみて

少々ネタバレにはなってしまいますが、結果として予想は大当たり。しかし、物語の切り口はまったく別のところからはじまります。

とある部屋の中で主人公は目覚めますが、自分がそこにいる理由も、あげく自分の名前すら思い出せないほどに記憶が混濁した状態。そこから物語はスタートしますが、あっという間にその場所が「地球ではない場所」であること、を科学的に突き止めてしまいます。記憶を取り戻す形で物語は過去と現在を行き来し、やがて自分がそこにいる理由と経緯を思い出していく…というストーリー展開です。

物語の骨子自体は、決して目新しいものではないですが、過去と現在を行き来することで徐々に明らかになっていく「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の全貌と、深い科学的考察に基づいた展開は、非常にリアリティがありかつ手に汗握るもので、あっという間に物語に引き込まれ、読み切ってしまいました。

他の作品も例に

SF小説はそこまで多く読んでいないですが、好きな作品は『星を継ぐもの』シリーズ三部作、伊藤計劃の『虐殺機関』『ハーモニー』などです。

わたしはこれらの作品の魅力の共通点として、「設定の説得力」が非常に強いというところを挙げます。

SFである以上、どこかに嘘がないといけない。しかし、嘘を嘘と思わせない語りや、周辺を固める科学的根拠(これは嘘であることも、逆に本当のことであることもある)が、物語のリアリティを生み出し、読者を引き込むのではないか、といつも考えています。同じことは『鹿の王』を読んだ時にも感じました。

また、これは完全に個人的な好みですが、物語が全て主人公の一人称で進むことも、評価が高い理由の一つです。

第三者の神の視点ではなく、ただ一人の主人公の物語であること。これは作劇の上で難しいことであるようには思いますが、自分が主人公と同じ視点で物語を読み進められるという点、そして物語とは本来ただ一人の個人のものであるという思想から、わたしが好きな語り口の手法です。先に挙げた伊藤計劃の作品にも共通しています。

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