「目的地になるレストラン」が地域を変える〜視座が明らかに変化してきているシェフたちの世界観/北陸で昨年から動き出している変化
地域活性化をしたいといえば、なんとなく行政の仕事っぽいし県庁、市役所に勤めてみようか、とか、はたまたゼネコンとか大手不動産会社で開発系にいってみようか、とかが従来の定番だったように思います。しかしながら、最近はそれもなんとなく変化してきているように思います。
というのも、全国各地にわざわざ高い交通費かけていってもいいと思えるような「目的地になるレストラン」が、続々と登場しているからです。さらにそれらは中堅若手世代が多く、その人達は「単に儲かる店をやるため」というよりは「自分の料理の世界観を伝えるため」「地域のもつ食材、文化の良さを料理を通じて人に伝える」という視点を持ち、地域での様々な取り組みにも積極的だったりします。つまりは地域をより良くしたいという視点を持ち、わざわざ不便な立地にとても力ある料理人が店をあえてだしている、かのように客から見えるけど、実際真剣にそこが素晴らしいと見込んで出店し、全国から人を集めていたりするのです。
さらに言えばそのようなレベルの高い飲食店が持つ、地域内経済循環での貢献モデルは非常に素晴らしいものであったりします。なぜならば、顧客が地元客だけでなく地元外の人たちがかなり多く訪れるものが多いのです。そして単価もしっかり3万-5万を食事や飲み物でとっていくので、稼ぐ力がしっかりとある。外貨獲得につながっているのです。
さらにその獲得している外貨の多くは、その立地で生産される食べものをベースに作られるメニューが多いわけでもあるので、仕入れを通じて地域全体に循環していくのです。
○ 地域経済循環に適切に寄与できるローカルの飲食店
地域経済循環の環がしっかりと作られやすいのが飲食店の強みであり、地元主義の強いバスクにあって世界一人口あたり星付きレストランが多いとされるサン・セバスチャンがなぜ地域において強いのか、はまさにここにあります。地元の飲食店が目的地となり世界中から人がきて外貨を落とす、そしてそれがバスクに流れていくのです。(昨今はあまりに商業観光化されすぎているというのはバスク人の知り合いから聞く苦言ですが...)太陽、雨、土は環境資産であり、それは地元だから活用できるものであると共に、大きな付加価値を作り出してくれます。土からとれたものが加工されて、地域外の人たちに提供されることによって外貨が獲得される。その金額が安くなければ、それによって賃金を高められる。賃金が高まれば地元の人たちは良い店にもいけるし、新たな体験を得に外に出ていくこともでき、その知見をさらにまた地元に活かすことができる。
目的地になる飲食店は大きな行政計画よりも、着実に地域に力を与えます。そしてそれが集積していくと、本当に地域産業構造すら変えてしまう力を持っていて、工業と違い「その地域から移動しない」ものでもあります。その地域でとれる農作物などを中心に提供されるものだからです。テロワールを無視した地元の素晴らしい飲食店というものは昨今有りえません。
ということで、目的地になる飲食店というものが、出張先における調査対象に昨今なっているのですが、これらの料理人の人たちの挑戦をもっと地元の人たちも知ってほしいし、さらに言えば彼らをもっと高く評価して良いのです。
いい大学に行く以上に、素晴らしい修行に出てくる料理人というものをもっと高く評価すべきであり、それらの腕をもって地元に戻るという料理人たちの視野をぜひ共有してほしいのです。
大きな行政計画よりも、良く分からないイベントばかりやる観光組織よりも、目的地になる飲食店、それを作り出す料理人たちのほうが大きな力をもっていると心から思うのです。
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