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【AIR】聖地巡礼で試されるまちのポテンシャル〜宇部市をめぐり、考えさせられる課題〜
アニメを切り口にした聖地巡礼は本当に各地で様々な形で展開されてきていますね。その効果は様々な形で評価されたりしますが、実際に行政などが透過する予算と実態経済とのリンクはどこまでなのか、など色々と疑問があったりするところも多いですね。
とはいえそこまでアニメとか映像作品にそこまで関心があるわけではない私。。。その検証にいってもよく分からないということがありましたが、世代的にエヴァンゲリオンを入り口に庵野作品についてはよく見ていましたので、庵野秀明展とセットで宇部市に久々に行ってきました。
私も講演で3度か4度くらい宇部市には来ているので、なんとなくの土地勘はあるのですが、今回は聖地巡礼視点で回ってみました。宇部市としては以下の「まちじゅうエヴァンゲリオン」という名の企画を予算をつけてやっているということでもあるので、そのあたりの実効性もみてきました。
実際にこの手のアニメとかの版権を活用して地域活動やることの難しさは、20代でアトム通貨という早稲田高田馬場地区から全国各地の地域通貨事業を展開する事業設計や契約関係をまとめる際に事務局長を務めたことでよく分かっています。そう簡単ではないことです。版元も地元向けに貢献しようと思ってくれたとしても、ビジネス的には全国に無数のライセンス先が存在し、それらの厳しい契約をしています。無形財産ビジネスというものはとても難しくて勝手に活用しているところを潰して成立するモデルでもあります。だから地域のことだからと適当に勝手に使うみたいなことをされるとそれでNGになるし、色々と許認可等とても大変なのです。
とはいえ、そのようなサプライヤー側の理屈はお客様には関係ないところでもあり、だからこそ聖地巡礼をプロデュースして投下資本以上の成果をあげるというのは難しいのです。
○ 世界観としての宇部市の価値
エヴァといえば昔から第3新東京市の設定地域である箱根とかでのコラボもずっとされたりしていますが、実際は庵野秀明氏の出生地でもあり、世界観としては大きな影響を受けただろう工業都市宇部での企画のほうがしっくりくるところでもあります。
シン・エヴァンゲリオンでは最後のシーンが、実写とアニメを組み合わせて演出されているので、そこに宇部新川駅が出てきたりするということでまさに聖地巡業に適した条件になったとも言えますね。
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やはりファンの方とかも回っていますね。
映画などに出てくるホームの椅子とかにでも表示を入れたりしているのかなと思ったけど、全くないですね。。。この構図で何か椅子とかにシールでも貼っていればいいのにとは思いますね。
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専用アプリで撮影すると何かデジタルスタンプがもらえる企画をJRでやっていましたが、それもうまく作動せず…。うーむ。(どうしてスタンプラリーにこだわるのかは不明ですが、もう少し駅内お金かけずにできる工夫あるように思いますね) ご覧の通り利用者は限られますので。
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その他も基本的に世界観的な意味で、宇部興産の施設が庵野秀明氏の世界観に強い影響を与えているので、それらのスポットがもっとピックアップされてよいのになーと思いましたが、そこはユーザーが勝手にいく感じですね。まぁそれがガチの聖地巡礼なのだと思いますが。笑
○ 連動企画の系譜
もともは昨年が宇部市市政100年ということで、その記念事業の数ある中の一つという位置づけで実行されて、さらにこの夏は庵野秀明展があるということで再度開催しているようでした。
市政100年当時の総予算は「市制施行100周年記念事業関連は記念式典など21事業計7751万円」という報道がありましたから、その内数のようで詳しい金額まではわかりません。とはいえ、内容面でもスタンプラリーとかフィギュア展示とかの企画が多く、それほど予算をかけた企画ではなさそうですね。数百万とかのレベルではないでしょうか。
○ 庵野秀明展
今回の庵野秀明展は県立美術館企画展ですので、市予算とは別ですね。入館料は1500円と、東京が2000円設定だったようですから割安になっていますね。実際庵野秀明の系譜をしっかり観ることが出来る企画展になってて、見ごたえありました。音声解説をぜひ利用するのをおすすめします。2時間ほどは回るのにかかると思ったほうがいいですね。
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実際に、庵野秀明氏の幼少期の話がしっかり解説されていて、特に実写である式日などは舞台そのものが宇部でもありますから、これをみて宇部市を回るというのは王道でしょうね。山口市内にはあまり泊まる理由もないところ…。
ただどうやら各美術館などによってスーベニアショップは異なるからMDは別なのでしょうが、正直山口の庵野秀明展のグッズ商品はしょぼすぎて買いたくなるようなものは一つもなかったですね…。これは総じて残念なところで、他の拠点などのアイテムも同様。まぁ私がそこまで関心がないというのもあるのでしょうがw それでももグッズがかなり雑でした。
今、同時開催されている常盤公園のホールのナディア展もまた別主体による開催のようで、セットチケットなどはなかったんですよね。実際はナディア展も全国キャラバンしている企画でもありますから、それなりのアーカイブで見たことがある人であれば楽しめると思います。1時間ほどは楽しめます。
ということで、庵野秀明展、ナディア展の2つは企画としては同時開催しているのが素晴らしいというところではないかなと思います。
○ 宇部市内を回り、改めて衰退を実感する
直前できたのがもう5年以上前でしょうか。会議所とかの招きで講演させて頂いたと記憶していますが、それよりもさらに進展して悪化している感がありましたね。
路地裏には新たなお店とかもできているので、入ったりしましたが、それ自体は悪くいけど、となりの同伴の男女かなと思っていたら、男がトイレに消えて、その後に出てきて一人帰っていくわけです。あれ、どうしたのかなと思ったら、注射針を拾って女性が店主に「トイレに捨ててると迷惑かかるから…」と小さな声で手渡すというリアルなことが起きたりして、なかなか痺れたところでございます。苦笑 客層大変。
以前区画整理事業で整備されたけど、無理やりやったことで市が借り上げ約束したことで完成度一度もテナントが入っていないんです、と案内されたところは未だに空き店舗のままでした。区画整理してできるのが、空き店舗と公営住宅という事例。10年くらい前ですかね。中国地方整備局の講演に呼ばれた時に、私の前に話しをした新任の担当者がこの区画整理事業を成功事例として紹介していたので、終了後に実態をお話したら「先輩の資料をそのまま読んだだけですみません」というお話をされていました。色んな意味で香ばしい出来事であったのを思い出します。
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さらに銀天街という日経一面を飾ったシャッター商店街はさらに衰退しており、一部がアーケードと隣接地が何らかの予算で再整備されていました。
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アーケード撤去事業とセットで行われたのかなとおもって調べたら、アーケード撤去だけでなく、このまわり土地自体も市が借り上げているのですね。絶対にやってはいけない活性化事業モデルの一つですね。駐車場代と同等程度で借り上げているとのことですが、そんなことやっても、結局地権者は何もせずに家賃が入ってくるだけ。本来の運用を自分でやる気もない地権者優遇しても、結局これ予算きれたら終わるもの。
さらに運営委託費までも市の予算にしていて、それをまちづくり会社が受託するというまぁ古臭いスキームですね。にぎわい宇部。。。シュールな名前です。令和3年度の予算書をみると4,331千円の予算が計上されています。
整備された年だろう平成27年に計上されている整備費をみる19,900千円とありますから、2000万円程度ですね。
で多世代が交流するなら仕方ないか、と思えば、日曜も月曜も2日連続でみにいきましたが、多世代どころか人がいない…。
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おーい、多世代ーーーー。にぎわい宇部、のロゴがシュール。
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ビエンナーレをしている彫刻企画の残骸もなかなかしびれる。
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と、まぁまちとして、聖地巡礼にいってもかつての繁栄から大きく変わってしまいすぎて、庵野秀明が大学で大阪に出ていくまでにみていただろう40年以上前の宇部市とはあまりに違いすぎる世界になかなか楽しむといわれても、宇部ラーメン食べて、宇部新川駅いって、宇部興産の施設をちょっとみたら終わる日帰りコースになってしまうくらいなのです。
○ 飲食店コラボは店主の方々と話してわかること
とはいえ、そこは担当の人も頑張ったようで、それではあかーんということでグルメ連動企画はやっていましたので、数件しはごしてみました。
試されるまちのポテンシャル!! なのですが、メニューが悩ましいものが揃っています。。。この中からbar ran-tanさん、アイリッシュパブ グラス ホッパーさんがとてもよかったです。写真からしてちゃんとしてそうだっただけあり、カクテルもビールもおいしく、デザインやコンセプトもしっかりしていました。
話を聞けば、市の女性の担当者が頑張って企画をやっているようですが、実際には入札案件になっているので受託業者がたんに公共仕事の精神でやっているようで、コースターのクウォリティも前回より下がったみたいな話をしていて、なるほどなーと。あとは理解が乏しい市の上層部を説得したり、議会に説明したり、色々と苦労も絶えないことを想像します。
○ 聖地巡礼にも問われる公民連携
そのあたり本来であれば公民連携でもっと攻められるだろう領域だと思うんですよね。数百万程度の予算なら市としてそんな単独予算つけずに、企画を固めて、ファン向けにふるさと納税を使えばあっという間に集まるでしょう。
あとは予算でなくても、クラファンにして民間連携で行うところに市として協力するとかすれば、入札にする必要もなく適切な業者と連携して行えるでしょう。実際公共でやらないほうがより少ない予算でよりよい事業ができるものです。公共関連事業単価は高いですからね。
シャッターにエヴァのイラストを、、、というのも悪くないけど、完成度が。ちゃんとクラファンでもやって、貞本さんとかの絵の使用権をもらうとかしてガチでやれば聖地になるけど、これだと同人誌レベルだから、特別感があまり。。。
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惜しい、もったいない、もっとやり方工夫したいよね、と思わされるところでした。とはいえ担当の方、参加している店舗の皆さんは熱心でもあり、もっといい形に伸ばせればいいのになーと思いました。
○ 物販はどうにかならないのか、はカラーの問題なのか、MDなのか。
でもって、空港、各展示会なども含めてみてまわって、前述のとおり物販部門があまりに弱かったですね。ただこれは新作からライセンスしているカラー側の問題なのか、それともグッズを選定するMDに問題があるのか。
この手の消費額においてグッズ販売ってとても大きいんですよね。音楽系のライブとかでも、グッズ販売がとてつもない金額になるわけです。大きな稼ぎ柱なんですね。韓流アイドルとかはこのあたりの攻め方も尋常じゃないといいますからね。
入館料が1000円、1500円でもグッズで10倍以上の売上を稼ぐことも普通にできるでしょう。
○ 聖地巡礼は自然観光に近いため、やはり三位一体の総合力が問われる
今更ですが、それにしても聖地巡礼ってのは総合力の世界だなと思わされました。単に舞台になっただけでは、訪ねてくる客がいても消費なんてしれているのです(経済効果みたいな計算の仕方はフェイクなので私はしません)。
以下参照。
重要なのは、宿泊、飲食、物販の三位一体なんですよね。歴史観光や自然観光と一緒で単に見に来てもらうだけでは駄目で、消費機会をしっかりシナリオに沿って作り上げるのが大切なわけです。
その点でいえば、宇部の施策ももちろんそのあたりわかっている感じではあるものの、もう一息って感じであります。うまくチームができてより向上するとよいのですけどね。とはいえ聖地巡礼ってのも賞味期限があるものでもあるのも確か。難しいものです。
それにしても宇部市の香ばしい中心市街地活性化の最新状況も併せて確認できたので大変得るものがありました。ぜひ宇部にいくことがあれば、回られることをおすすめします。
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