01-02 しゃうとの翼と自由の代償
初めまして。
いつもしゃうととアイツの話を聞いてくれているって聞いたよ。
ありがとね。
アイツ?んー、しゃうとがいうところのご主人だよ。
名乗るのが遅れたわね、私は空猫しゃるるよ。
しゃうとの姉貴分って感じかな?
今日はしゃうとに関しての昔話をしようと思ってね。
しゃうとがいっつも書け、書けうるさくてね。喋るのは好きでも書くのは、ね?
そう!あいつ猫なのにおかしいでしょ?翼が生えてるし、言葉を理解してるし。
少しその辺の理由を今回は話しておこうと思ってね。
しゃうとは知らないから語ることもないからね。
まず私としゃうとの出会いは前にアイツが語っているわね。
ネコが空の大地に倒れているのを見つけたのよ。
そのネコ、しゃうとはね、すごい煙と熱に包まれてたんだー。
翼が生えているし
「猫も来れるのか」
これが最初の感想だったなぁー。
保護した時は夜で月も空も気持ちが悪かったのを覚えているの。
その日の夜、しゃうとを拾う前、驚いたのは聞いたこともない叫び声と光だったの!
しゃうとを拾ってアイツに見せたら何も言わずに保護をすることを決めたのよ
「どうしたんだそのネコ?」
こう言われると思ったんだけどなー。
ここからは猫又で空の神のソラ様が教えてくれたんだー。
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空猫しゃうと。それは今の名前で昔は違う。
クロ、これがしゃうとの本当の名前。
クロは多頭飼いする裕福な家の猫だった。
飼われた当初クロは子猫だった。クロはとても可愛がられた。
しかし、日が経ち新しい子猫がやってくるたび愛情は新しく飼われた子猫に向けられていった。
飼い主は大人になった猫を次々と檻に入れていった。
檻は複数あり狭い檻に一匹ずつ入れられた。
飼い主は檻からぐったりとした痩せ細った猫をつまみ上げ、クロと交換した。
積み上げられた段ボールに投げ入れられるようにぐったりした猫は入れられた。
クロは後ろを向くことすら許されない狭い檻に入れられてしまった。
檻にへばりついたエサ、片付けられていない猫のフン。
クロは何日も何年も耐えた。
思いだしたかのように投げ込まれるエサとホースから浴びせられる飲水。
振り向けないため食べられるのは目の前のもののみ。
運動機能は低下し、不衛生で少ない食料にクロは次第に衰弱していった。
他の猫も衰弱し、死んでいった猫もいたがクロは違った。
ーたまに思い出すあの光景ー
飼い主と散歩したあの小川、あの風車。
(また自由に草原を駆け回りたい。)
クロは自由を求めた。
ただ強く願った。
檻の前に溢れた猫の餌をついばむ鳥が自由に飛ぶのを見て
(空高く飛びたい。)
地上を這いつくばらず空を飛びたいと願い続けた。
なぜ自由を奪われなければいけない。
ー生まれてきた意味ー
・・・このまま死にたくない。
飼い主は今日も死んだ猫を檻から出し新たに猫を檻に入れる。
クロは見ていた。
檻の仕組みを。
強い感情は具現化する。
何度もその光景を目の当たりにしたクロはとうとう発見した。
檻の弱点を。
いつものように飼い主が死体を檻から出している。
鍵を忘れたのか正面からは開けずビリビリという音と共に檻の上から死んだ猫を取り出したのだ。
少しあいている部分を引っ張って開けたのを見た。
それは覗き窓だった。
上部は布の網でできておりジッパー式となっていた。少しでもあいていれば押せば開くことを理解した。
しかし身動きの取れない狭い檻ではどうすることもできない。
弱った体では難しかった。
クロは願った。
残りの寿命はいらない。だから空を飛ぶ翼が欲しいと。
強い願いは0.1でも希望に近づける。
クロは背中に強い痛みと熱を感じた。
翼が光に包まれて現出した。
翼はあまりに大きく身動きの取れない狭い檻を破壊し、クロは翼を広げ羽ばたかせることができた。
指を動かすのと同じように理屈はわからない。
でもできるのだ。
クロはそのまま意識を失ったが体は空を勝手に目指し、寿命の大半を消費して空の大地に落ちた。
この世のものとは思えない大きな叫び声と眩い光が月夜に照らされた生き物から発せられた。
ここで拾ったのがしゃるるだった。
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あの鳴き声は本当に鳥肌が立つような感じで。
『僕はここで生きている!
ここにいるんだ!』
そんなことを訴えているような叫び声だったなぁ〜。
“Shout(シャウト)”って“大声で叫ぶ”って意味でしょ。
Screamだと悲鳴になっちゃうからね。
しゃうとは大声で存在をアピールしたかったんじゃないかなって。自由になってね。
ここに生きているんだ、僕はここにいるよ!って存在を知って欲しかったんじゃないかなってね。
猫だって死ぬ前にこの世に生きていたことを誰かに知ってて欲しいものでしょ?
それでしゃうとって名前にしたの。
苗字の「空猫」はアイツの家族になった証でついてるのよ。
アイツはアイツで空の神の猫又、ソラ様に拾われてるからきっとそこから来てるのね。
私もアイツに拾ってもらったのよ。
あ!私は人間よ!猫じゃないからね!
ここに飛んでくる時に気を失って記憶の大部分をなくすから地上にいた時に、自分がなんて名前なのかは知らないの。
うん、今回はまあこんなとこね!
空ビトの寿命が短いこと、しゃうとの由来と過去、猫又のソラ様、少しだけ私、しゃるるのことも知ってもらえたかな。
えっ!!!
もうこんな時間!
朝ごはん作らないと!
またね!
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