アリの行列があったから
飼っているミドリガメの水を換える時に、エサの食べ残しやフンを網で水の中からすくって庭の土の中に埋める。
ゴミ箱に捨ててもいいのだが、この時期はたった数日でも強烈な匂いを放つようになってしまう。今の季節は土の中の微生物も活発なので、自然の分解力にお任せした方が匂いも出なくていいだろう。
土に埋めたカメのエサやフンは、庭に出没する虫たちにとってご馳走のようだ。エサを埋めたところには、たくさんの虫が寄ってきて、土の中に潜ったり出たりを繰り返している。
家で与えている市販のカメのエサには、水棲ガメの健康を維持するために必要な栄養素とカロリーが全て含まれているとのこと。
厳しい自然の中で生きる虫たちにとっては、突如現れた高栄養価かつ高カロリーで動くこともなく捕まえやすい格好の獲物になるのだろう。
ふと気がつくと、そこにアリの行列ができていた。女王アリと幼虫に捧げる食料として、私が土に埋めたカメのエサは最高だろう。
でも、もうすぐ、リハビリ施設に入っているおばあちゃんが家に戻ってきそうだ。おばあちゃんはアリの行列が大嫌いだ。家の周りに発見すると、顔をしかめながらアリ退治の殺虫剤を家の周りにまいていた。
家の庭にアリの行列があるなんてことは絶対に我が家では許されない。
そういえば、アリの巣コロリが1つ余っていたことに気がついた。
不思議なことに、アリの巣コロリなどの、巣を全滅させる系のアリ退治を使うと、しばらく本当に庭にアリが出没しなくなる。本当にアリを巣ごと絶滅させる効果があるようだ。
私は、カメのエサを埋めたところに続くアリの行列の途中にアリの巣コロリを置いた。
しばらくすると、アリの巣コロリの中にもアリが群がって、美味しいエサを見つけた歓喜に沸き立っている。それが、地獄への扉になるとも彼らは知らずに。
ムムムムム、私もワルよの~、アリンコどもの命、懸命に命をつなぐために毎日自分の体重の何倍もの卵を生み続ける女王アリの身を削る努力と、それを支える働きアリたちの献身を、たった1個のアリの巣コロリで無に帰してしまおうというのだから。。。
なけなしの文明人としての矜持をわずかながらに保つのに、厳しい自然に生きる彼らの命さえも、ためらわずに毒餌を置くことで踏み潰すのであった。。。。