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(少しネタバレ感想)『プロジェクト・ヘイル・メアリー 』(アンディ・ウィアー)

*そのものズバリのネタバレはあまりしていませんが、かなり内容に触れています

🚀🚀🚀

『火星の人』の新作か。めちゃくちゃ評判がいいのでセールの時に早々にKindleで購入していた。とはいえ上下巻の大作にちとびぴり読み出すのを躊躇していたところ、Audibleに入ったので聴いてみた。

*あ!英語版も会員プランで無料だ!これは気が付かなかった。ちょっと聴いてみよう

結果としてよかったのかな。巷で「ネタバレじゃん」と物議を醸しているカラー挿絵も目に入らなかったし。

確かにおもしろい。リーダビリティは抜群。とっつきにくいSFの専門用語もスイスイ入ってくる。果てしなく続く主人公の長話は途中で少し飽きたところもあるが。

『火星の人』と基本は似ていて、つまりは「宇宙ひとりぼっち」の旅。“ひとりぼっちのあいつ” は数々の苦難を科学的なアプローチで解決していく。「Dr. STONE」みたいな雰囲気もあるかな。

ミッションを持って宇宙に旅立ち人類を救うアイテムを持ち帰る展開は「宇宙戦艦ヤマト」あるいは「西遊記」かも。

この作品に関して、ネタバレ厳禁みたいな雰囲気が世評にはあるがそんな大どんでん返し的なものはなかったと思う。もちろん、最初主人公が記憶喪失気味に目を覚まし、少しずつ思い出していく過程は何の予備知識無しに楽しみたいが。

あえていろいろツッコんでみる。

①読者は皆思うだろうがそんなに簡単に異星人とコミュニケーションが取れるもんだろうか? 異星人もほぼ地球生物と同じ思考回路を持っているのもどうなんだ。

(ちなみにAudibleでロッキーのしゃべる声は最初ピロリロリ〜♪ みたいな電子音にされていた。ひとの朗読ではない声がいきなり聞こえてきてかなり面食らったw)

ほぼ同じ有機体(重金属がたっぷり入ってるらしいけど)で同じ物理法則の中で進化してきたのだから精神も含めて同じような構造になることは自然だ、みたいな説明はあったかな。

ロッキーはかわいいが、主人公よりずっと歳上だ。なのにペット扱いされてるのも違和感だった。翻訳のせい?

②全体としては「センス・オブ・ワンダー」というよりもどちらかといえばだいたい先の展開がよめる予定調和じゃなかったか。

友情・努力・勝利が基本。実際今作は主人公と友情で結ばれるバディが登場した。週刊少年ジャンプだったら、更に第三の敵宇宙人が現れて共に戦ったりするんだろう。

そこまではせずとも最後に更にもう一波乱期待したがあっさり終わった印象(続編のために取っておいた?)。

③やっぱり主人公がヘイルメアリー号で旅している間、地球で何が起きていたのか知りたいね。最後にその辺描かれるのかと思ったけど。主人公の、観測事実に基づく推測でしか地球の復活の様子は説明されない。

特にあの氷のような女上司と再会して欲しかった。彼女の心の中は果たしてどうなっていたのか。この作品は主人公のひとり語りのため他の登場人物の心理描写がない。

彼女の予言と違い、食糧難からの国同士の争いは起きず地球が力を合わせ危機を乗り切った(?)様子も後日談(続編)として読ませて欲しい。

🛸🛸🛸

謎の宇宙物質の蔓延により、地球全体が生命の危機にさらされる。物語のこの背景設定にコロナ禍を思い浮かべる人も少なくないと思う。原作はそれを背景に書かれたものなのか?

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 原作“Project Hail Mary” は、2021年5月出版ということだ。執筆はやはりアメリカや世界中がコロナに苦しめられていた頃と重なる。

*ただ執筆に5年以上掛けたみたいな話もあるので必ずしもコロナを意識したスタートではなかったようだ

新型コロナという人類共通の危機に対して各国が宗教や人種問題を超えて私利私欲なしに協調し合うことが果たして出来ていたのかはわからないが、一応コロナ禍は終焉を迎えた。

小説では「人類、まだまだ捨てたもんじゃないな」という(推測)結論に至っていたが、コロナ危機を乗り越えた現実の世界はどうだろうか。

人類がコロナに勝ったのか、(病原菌等のすべての自然災害がそうであるように)勝手にコロナが何処かに行ってしまったのか私にはよくわからない。

そしてコロナ禍を経た現在、特に何も、いやまったく人類世界の様相は変わっていない気もする。むしろコロナ前の更に前に戻った感もある。よく言われる「新しい戦前」に。


💫💫💫

本来は書評ブログとしてネット投稿を始めたのにとんとご無沙汰だ。来年からはnoteにもう少し増やしていくようにしよう。書き出して放ったらかしのネタもいくつがあるし。


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