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「空の発見」(渋谷区立松濤美術館)

「空の発見」と聞いてこんな歌を思い出すのは昭和世代。

空の上にはシドがある〜♫

この歌、空の上かと思ってた。縦書きだと下だけど、音階的には上か。それに作詞井上ひさしさんだったのか。


にしても暑いこと。この残暑はまさに異常。渋谷から歩ける距離だが一駅だけでも神泉駅まで電車に乗って正解だった。ほんの5分程度歩いただけで汗が吹き出している。

渋谷区民は今日無料なのか

金曜日は夜8時まで開館している。そして今どき全面撮影禁止。

目についた作品をいくつか

二人の画家の手によるそっくりな風景が並べられる。

岸田劉生 (明治24-昭和4)年 
《路傍初夏》1920

柏木俊一 (明治27-昭和46)年
《道》大正時代(としか書いてなかった年代不明?)

段差の下に果てしなく続く細い道の絵とでも言えばいいのか。いわゆる「完全に一致」状態。立体視でもして欲しいのかと思ったよ(実際してみたがあんまりおもしろくなかった。後の展示でほんとに立体視作品もあったから予告?)

比べてみると柏木さんの絵の方がずっとおもしろい。色も多色で緑が心地よい。片や岸田劉生さんのはクソ地味なただの草むらを縫う細長い道。茶色ばっかしで気が滅入る。

でも岸田劉生さんの名声は今でも輝かしいのに柏木俊一氏なんて悪いけど誰も知らないよね。なにが違ったんだろうな。柏木氏は岸田さんより40年以上長生きはしているが。

米倉壽仁
《早春》1940年
割れた卵?の殻の中にいる女性の図。ダリっぽい絵。板橋の「シュールレアリスム展」で見たかもと思ったが違うみたい。ただ、このひとの作品自体はあったようだ。割れた卵はこのひとの持ちネタなのかな。


Chim↑Pom
《BLACK OF DEATH》
ビデオ作品。インスタレーションだ。カラスを引き連れて国会議事堂をクルマで箱乗りして回る。なんと悪趣味な。ちゃんとロックしてるぜ。

館内ツアー(この建物を設計した建築家白井晟一さんの話)

実は展示作品よりも「館内ツアー」の方が興味深かった。

今日がたまたま開催日だったようだ(毎週金曜日の夜にやっている?)。せっかくなので参加した。

普通なら展示されてるものの解説をするものだが、この美術館の建物について解説してくれると。

この美術館の設計は白井晟一(しらい せいいち 1905年ー1983年)という建築家の手によるものだという。ここは白井氏晩年の建築物だそうだ。

まず外に出て、美術館の外観を改めて眺める。城壁のような石積みの建物である。

誰でもひとつ気付くのはあそこに水飲み場かあること。

ここは実際に水が出て、その蛇口はなんと白井氏の手作りらしい。ガイドの学芸員さん曰く「建築家は設計図を書くだけで実際の建築には手を付けない。ところがこの建物のここだけは建築家が建築に関わったところでとても貴重」だと。

建築家は重い石ひとつ運んだわけでもなし、「ワシの記念じゃ!」と手形付けたようなものかな。それはともかく、蛇口の周りにラテン語の文字が彫られていると。

《清らかな泉》という意味らしい。ここはメメント・モリじゃないんだな。

ほとんどチ●コだよねえ?

そして改めて館内に入る。チケットを買う受付のところ。

まずは天井を見上げて欲しいと。オニキス 天然石を薄くして張っているそうだ。この模様は木目かと思ってた。天板は光っていて裏からLED照明で照らしていると。

階下の噴水⛲️

この先に円形の建物の吹き抜け中央を通る橋がある。下には噴水。当初の計画ではここを順路にするつもりだったらしい。しばらくそうしていたのかボツったのかは聞きそびれた。

吹き抜けから星も見えた
この景色をいつも見ていて今回の企画展思いついたんだろうな

地階へ降りる。展覧会としては第二会場だ。ここは天井が高く音が響き冷たく荘厳な感じにしてある。本来は窓から日が差す設計だった。今はほとんどブラインドで遮ってしまってある。作品保護のためだったかな?

二階の展示室へ。ベルベットの壁紙とフカフカの絨毯に包まれている。音の響かない静けさを求めたそうだ。ソファとテーブルがある。昔はここでお茶が飲めたらしい。厨房の名残が展示室入口のそばにある。

天井にある何本もある太い梁はただの飾りで梁としての機能(建物を支える)はない。細長い穴が空いていて、それは空調の送風用だそうな。まさにハリボテ。

同じフロアに館長室があり、実際使われている執務室なのだが見せてくれた。入口からそっと覗くだけだが。撮影も不可。

入口から覗いた瞬間ものすごい熱気を感じた。もちろんそういう仕様ではなく空調を入れてないので超残暑の室温が残っていただけ。思わず「あっつ!」と呟いたよ。

見た感じよくある会社の役員室だな。そういうとこは私もよく見る機会がある。長テーブル&少し離れたところに短テーブル。応接椅子数脚。重役デスクがドーンと。どこもそんな感じ。

いずれにしろ豪奢な部屋だ。区立美術館なのに贅沢だ?! 昔は会議室だったらしい。なんで館長室になったのか話していた気もするが忘れてしまった。

最後に白石氏についてあれこれエピソードが語られる。ドイツ留学して(建築学ではなく)哲学を学び、途中ロシアも訪れ共産主義に目覚め政治活動に手を染めた時期も密かにあったらしい。そしてその思想はこの建築のここかしこに実は込められている痕跡が認められると。

ん?それって村上春樹『騎士団長殺し』に似てない? あっちは日本画家だったけどモデル? ググった限りではそうではなさそう。当時「共産主義こそ理想国家だ!」と感化されたインテリはたくさんいただろうしね。

ここたまにおもしろい企画展をやってくれる。また寄ろう。白井晟一さんの建築も探してみよう。

 🌑🌑🌑

そういえば井の頭線下北沢駅で中秋の名物にちなんだイベントやってる(行ったのはこの日じゃないけど)。



これも空の発見🌚


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