あの時の「ピンクハウスババア」と玉木のお相手「39歳の元グラビアアイドル」

▼ 電車通学の10代のころ、年に何回か見かけた彼女たち。地味なスーツや制服の乗客が多く、くすんだ色の中に突如現れる彼女たち。
 赤・ピンク・白を基調にかわいい柄がびっしり、たっぷりのフリル、ボリューム多めのスカート部分の服を着て、顔を上げて柔らかな笑顔で歩き、背筋を伸ばして立つ。

ピンクハウスを着た大人の女性だ。

 今よりもロリ系のファッションが奇異なものとして見られていた30数年前。当時、若すぎた私の目には「ババアのくせにあんな服を着ている」という嘲りの対象としてしか映っていなかった。若くてもとびきりのかわいい子しか似合わないようなブリブリの服なのに、凡庸な容姿の若くない女性たちがなぜ着ているのか。そんな、よくわからない小さなイラ立ち。
 彼女たちに直接何かイヤコト言うようなことこそしなかったものの、電車で彼女たちを見かけたときの私は、とても底意地の悪い目つきをしていたような気がする。さぞ醜かっただろうね、私が。

▼ 20代から30代前半、私は場面によって自分をかわいく美しく魅力的に見せることで利を得やすい服、要するに場面に応じて男ウケの良い服を好んで着た。
 …などと同性に言うと、若い時の私が好んだ「男ウケの良い服」を今の私が反省しているんだと早合点されたりもするのだが、そうではない。
 限られたお金で、生まれつき人よりはるかに少ない”媚び”で、最大限の利を得られる服は私が心から納得した、私のための私の選択だった。
 女性ウケ?そんなものを狙うのは非効率だ、というのが女性に生まれた私の今に至るまでの一貫した確信である。
 だから私はたくさん着た。とても矛盾しているようだが「人目を気にせず」に、利を得やすい「男目線で男が好む」ことに特化した服を。そうして私はあちこちでいろんな人たち(同性が多いめ)から底意地の悪い目を向けられ、陰口を叩かれた。
 私はしょんぼり頭を垂れてこそこそしたのか?いいえ全く。意気揚々としていた。敵視とも思える同性の目などはむしろ愉悦。

「これがわいの選んだ鎧や。どや?おまえより強そうやろが」

 そんな調子でも、徐々に若い子の服は確実に似合わなくなってゆく。性的目線を意識した服は一線を違えれば狂人の衣装となり、そのラインは年々厳しくなっていく。そうして歳を重ねるうちに思い出したのは、子供のときに見たあの“ピンクハウスババア”たち。

 彼女たち、顔上げていました。
 笑顔でした。
 背筋が伸びていました。

 彼女たちがどれだけのびやかで、いかにタフだったのか。自分自身が「ババア」になってやっと理解。ピンクハウスババアパイセン、まじリスペクトや!

▼ ところで、私は若い時から男ウケの良い服を好むと並行して、別の好みもあった。
 チープで色とりどりで変な柄でどこの国風かわからない意味がわからない組み合わせのファッション。「無国籍風」「エスニック風」とか言われるアレに近い。オサレなおばさん(ただしモードとはほぼ関係ない)のファッションの一大流派それはエスニック風である。下手すりゃ大地雷。
 
 加齢によって容姿は刻々と劣化してゆく。私はどうやら大自然の法則にとても素直だ。似合う服も大きく変化した。
 自分の外観の変化で服装によって得られる効果が大きく変わり、必要なウケもまた自分の生活とともに変わっていった。これは余談だが、容姿の劣化とともに女ウケは自動的に良くなっていった。女怖いでほんま。
 もはや男ウケを考える服の必要性は下がり、「楽」or「やばそう」 を好むようになった。エスニック風ですらないただただ意味のわからない大地雷な服で職質を受けてはネタにする。お上品な人たちが集まる場所でどこのブランドかわからない色彩感覚が狂い気味のシャツを着て過ごす。そうして日ごろはユニクロやワークマン、ディッキーズ等の服を愛用。今着ているのはユニクロのフード付きワンピースだ。昼に食べた肉のタレが飛んでいる。きちゃない。
 ピンクハウスを着ていた彼女たちはお金をかけて統一感のあるかわいい恰好をしていたのだから、私よりはるかに立派にオサレだったよなあ。

▼ さて、つい最近のこと。国民民主党の玉木雄一郎の不倫がスッパ抜かれて連日の話題となっている。そのお相手の元グラビアアイドルで「高松市観光大使」を務めるタレント・小泉みゆきさん。なんと39歳。

 写真を見ると、バランスの良いボリュームがあってスタイルがとても良く、猛者の雰囲気を漂わせている。しんぼうたまらんかったんやろな玉木。

 正面から撮られた写真、悠然と携帯を持って歩くその姿はボクサーやプロレスラーの入場のような迫力さえ感じる。面構えは死地に向かう武士のそれである。無駄のない白いピッタリとしたトップスは、彼女の素晴らしい武器を活かすシンプルな選択なのだろう。

 ところが、ネットでは彼女の行動や容姿だけでなく服装も叩かれている。投稿例として2つ引用する。


https://twitter.com/tenshicos/status/1855882172034699384

https://twitter.com/higureshuuen/status/1856022304431730692

 こういった服装へのディスが大量にあるのだ。1つ目のアカウント「天使」は過去に「日本は欧米と違って着たい服が着れない」と服装の自由を求めていたのにも関わらず、欧米を持ち出してディスっている。そのため炎上。

 2つ目なんかは、発達障害の略語的スラング「発達」という言葉を使ってまでディスっている。障害を持ち出してまで、一体なぜそんなに服装を悪く言いたいのだろうか。

▼ おそらく、ピンクハウス着た中年女性たちを見たときの私と同種の反応なのだろう。
 あの女はそんな歳のくせにそんなものを着ている。なのにあの女は顔を上げて堂々と着ている。

 表明せずにはいられないよくわからないドロっとした感情。

 子供のころの私がピンクハウスを着た女性たちを見ていた目つきはこうもドロっとしたものだったのだなあ…。そう考えると、過去に飛んでいってあの時の自分に目から火花出るほどの拳骨を食らわせたいような気分になる。

 小泉みゆきさんはどうかこのままのびやかにタフに好きな服を着続けてね、と私は願う。自分にとって一番の鎧を着続けてくださいね。

 

 







 

 

 


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