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バレンタイン・ハンター~片思いで終わった私の猟期

こんにちわ。皆さん、お久しぶりです。
猟期終わりましたね!私の猟期は2月14日をもって終わりました。猟期間中は何かとプレッシャー感じちゃうのでTwitterはお休みしてたんですね(笑)。
ヘタレです。自分のペースが狂って来るので、逃避してたんですね。現実逃避というか、SNSからの逃避。
で、猟果はゼロでした。ゼロ。そうゼロなんですね。
バレンタイン・デーにちなんで強いて言えば!(別に強いなくてもいいのですが)、片思いで終わった恋!といったところでしょうか。
発砲したのは2回。その2回も、最終日の14日、半ば無理やり撃ったものでした。
「キスしたのは2回、それも無理やり奪いました」などとここで無用な読み替えをしないように!

実は今年に入ってから猟場を変えました。男を変えたわけではありませんよ?
最初通っていた猟場は鹿さんがいないわけではないけど「なんか少ない」感じがしたのです。
(くどいようですが、なんかあいつ魅力がないからふった、みたいな話ではありません、はい)
この少ない感じというのは、獣道歩いていても、糞が少ないし、小さいとか、あと寝屋っぽい場を見つけても地表の跡から頭数がいるように見えないとか、そういった体験から来るあくまで「感じ」、「印象」に過ぎないのですが。

猟場が遠いと、前調べで「どうもここには沢山いそうだ」ということが判っても、高速を使わないと行けない、それでも時間がかかるとか、何かと通うのにコストがかかると避けたくなるじゃないですか。
でもですね、楽に通えても何回も行かないと鹿に遭遇出来ないなら、コスト的には結局同じかむしろ浪費していることになっちゃいます。
なので思い切って変えてみました。そうしたら、そこはけっこう鹿さんがいるところだったのですが、ちょっと今までとノリが違っていたんですね。まず山のスケール感が大きいというか、全体的にロケーションが開けていました。

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で、だいたい日に2~3回は鹿さんに遭遇するのですが、比較的フラットなところに3~4頭の群れでいることが多いんです。
この「群れ」に近づくのはちょっと難しくて、私には無理でした。
「群れ」でいる状態は、動物にしてみれば、代わり番こで多方角に見張りを付けているような状態です。それなりのスキルがないと近づかせてもらえません。
それに射場では50mで練習してますが、射場だから的に当たるので、実際のフィールドだと自分の今の実力では、せめて30mくらいまで近づかないと、とても当たる気がしません。
で、鹿さんの群れに出会ったら観察して、いったん降りて別の斜面から登るとかしていました。
それでもちゃんと遭遇出来るんだけど、やっぱり距離が縮まらないんですね。

近距離で遭遇する時もあったんですが、こういう時は向こうから音もなく駆けて来て目の前を通り過ぎて行く…みたいな感じなんです。
尾根を昇って行くと、ブッシュの中に休憩してたり、草を食んでいる鹿さんがいる…という感じとはナンカ違うというか。
この「音がしない」というのも奇妙でした。ガサガサとかパキパキとか、予兆みたいなのがなくないですか。
すごい速さで移動してるのに音しないんですよね。幽霊がサーっと横切るみたいに通り過ぎていくという。
うっかり足元を見ていたり、別の方角を注視してたらたぶん自分気付かないんじゃないかと思います。
そういう体験を何度がするうちに、なるべく顔を上げて視界の全体を見るようにしました。
一点を集中して見ないというか。

それはいいんですけど、というわけで、最後の方は、山に登って鹿さん見て、チョコレート食べて、写真撮って降りて来て、カップ麺食べて帰って来る…みたいな、猟なのか何なのかよく判らない、奇妙な趣味?になってました。なんじゃこりゃ。
どれくらい出猟したかな。休みが取れる日に一泊二日、車中泊で続けてました。でも途中、銃所持許可の更新や実技講習、ドットサイトの微調整や練習などで休みが潰れて、結局、十回も行けてないかな。

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2月14日、事実上の私の猟期の最終日となった日は、他のハンターがあちこちで銃声を鳴らすわ、鹿は飛び出してくるわで、山の中がちょっとしたお祭り状態でした。
この日、私は20頭ぐらいの大群が林の中を駆け抜けて行くのを目撃しました。
こんな大群を見たのは初めてだったので、もの凄く感動しました。
離れているというのもあると思うのですが、素晴らしい速さで音もなく移動する鹿の大群は、まるで宙を飛んでいるようです。美しい。
「鹿って大群になるとこんな風に見えるんだ…!」
これには感動して、追いかけても無駄だと判っていましたが、つい私は鹿の群れが消えて行った林に方へ歩いていました。
歩きながら「ああ、もうこれで猟期も終わりなんだな」という想いが胸に込み上げてきました。
半ば諦めモードになりかけていた私ですが、しばらくすると遠くに鹿さんらしき影を発見したのです。
慌てて望遠鏡を構えて確認しました。すると立派なメスの鹿が一匹だけちょこんと立って私を見つめているではありませんか。
こんな形で鹿さんと遭遇するのはこのエリアでは初めてでした。
「え? 見間違いじゃないよね??」。
確かに鹿さんです。あれは鹿じゃない、実は鹿によく似た顔のおじさんじゃないのか?と時々怖くなることがあるのですが、確かに鹿さんです。うーん、可愛い。
私の一方的な思い込みですが、鹿さんはきょとんとして、「撃ってみる?いいよ?撃ってみる?」と言っているような顔付きでした。
この距離で撃ってもきっと中らない。ため息を付いたところで、あれ?と思い直しました。
でも、自分は何をしに来たんだろう。中るか中らないか、獲れるか獲れないか、そういうことが問題なのかな。
猟をしに来たんだから、ちゃんとやって、ちゃんと終わろう。

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深呼吸して銃をゆっくり構えました。リブの上に鹿さんを乗せます。この時、私の銃は照星が取れ、ドットサイトもマウントが折れ曲がってしまったので取り外していました。はい。私がよく派手に転ぶので色々なものが壊れていったのですね。今期は本当によく物を壊しました。
鹿さんですが、リブが作る小さな地平線の上でさらに小さくなった彼女は、微動だにしません。
それはまるで、私が銃を構えるまで待ってくれているようでした。
「ふうん。そうなんだ…」

私は引き金を引きました。銃声が轟き、青い空に溶けて行きました。
もちろん中りません。
鹿さんは私を一瞥すると少しだけ間を置いてぴょーんと後ろに飛ぶと、あっと言う間に視界から外れました。

何か夢から覚めたようだったんです。
「終わった…!ああ、これ終わりだ。今、確かに私の猟期が終わった…」
その時、本当にそう思いました。この出来事は私にとって「今終わった」という意味でした。
もしかしたら鹿さんがちゃんと終われるように撃たせてくれたのかもしれません。などとこれも一方的な私の思い込みなのですが、そんな気持ちになりました。

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同時に、今期体験した様々なことが思い出されました。山で出会ったハンターの人たちや、何度も通っているうちに知り合いになってしまった林業の人たちとか、地元のおばさんたち。深夜に起きて出かける時の辛さとか、車中泊で過ごした夜とか。
今回は豚コレラでホームグラウンドの岐阜で出来なくなり、長野に来たのですが、一から猟場を探してやるのも初めての体験で、考えてみたら、今まで自分は恵まれていたのかもしれません。
色んな感情が混じって少し泣けて来ました。

何も獲れなかったけど、私は何かを獲ったのかもしれないかな…。
あの人は何も獲っていません!いいえ、ヤツはとんでもないものを獲っていきました。あなたの心です!
ハッ…!
と、これもまた思い込みに過ぎないのですが、帰り道、気付くと私は一人カリオストロ状態で、なんだか少しだけ「清々しいヤツら」の気持ちになっている自分に気付いたのです。

なんちゃって。
ハンティングは不思議なゲームです。
辛い事も、悲しい事も、失敗も、後悔も、一発の銃声と共に森や土や空に染み込み、消えていくのです。

こうして、まるで一つの人生が終わるように、一つの恋が終わるように、私の猟期は終わったのでした。

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来期、もし岐阜の禁猟が解除されても、また来るのかな?
いや…終わりじゃない。これで終わりじゃない。バスターマシンがあるとかないとか、関係ないのです!
きっと本当のディアハンターは心に「鹿さんの気持ち」を持っているのだから!!(知らんけど)

よく分からない感じですが、そういうわけで、
では、また皆さん、よろしくね!
(※文中の画像の鹿、猪は地元の猟師さんたちが獲ったものです。さすがですね。大抵は犬を連れているか、巻狩りっぽい狩り方でした)

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