「野生の証明」(ネタバレあり)

実は俺、高倉健さんも大好きで…鉄道員とかザ・ヤクザとか大好き故に、健さん主演だから↑の映画作品を見たのだけれど、なんだろう…率直に、当時としては非常に破格のスケールと豪華すぎるキャストではあるけど、個人的に…途中までは面白かったけど、最終的な満足度はいまいちだった(笑)エンディングでの健さんはカッコいいけど、ちょっと狂人っぽい部分もあって怖いんだよね…ただ、原作はもっと救われない鬱エンディングらしい…例えるなら、昔のファミコンの「ガリバー旅行記」の主人公の最期みたいな状態になってっていう…(汗)

そういえば、鬱エンディングのゲームといえば「バトルゴルファー唯」という、ラストに再会を果たした2人の”友情”によって…最悪の結末を迎えてしまうものもあったけど、あれもかなり悲しいよね…。そもそも、世界の危機に直面しているのに解決策が「ゴルフ」ってのも奇抜すぎるけど…(笑)

話を戻して…まず、薬師丸ひろ子の雰囲気がさ…今で言うところの浜辺美波そっくりなんだよなぁ…あるいは、初期の長澤まさみもこの路線だった気がするけど、正直今でも十分通用するくらい…透明感が凄いのだけれど、なんだろう…まさしく清純派という印象の風貌だけど気合の入り方が違うというか、探偵物語を見たときにも思ったけど…あの作品でもアクションこなしたり、ディープキスのシーンもあったり…かなりアクティブで大胆な女優さんだよね(驚)

ちなみに、今の彼女の印象は非常に「強い」というか、その当時の印象と比較しても堂々たる感じで存在感もあるのだけれど…そういうオーラばかりは若き頃、あるいは作品中で表面的に感じられる雰囲気だけでは隠しきれないというか、改めて納得してしまったというかね…。ちなみに、この作品では中学生だったらしい…健さんと張り合ってるの凄いなマジで(恐)

物語自体は…巨悪(暴力団、マフィアのような描き方)が街を支配してて、それを暴こうとするジャーナリズム的な動きが封殺される中、その闇を元特殊工作員(集落の連続殺人に遭遇し1人の娘を救った)と↑のことで肉親を殺された女性新聞記者が暴こうとするっていう、まぁ割とワクワクするようなコンセプトだと思うんだけど…

なんだろう、これは映画版の話になるのだけれど、終盤辺りから健さん演じる元特殊工作員VS特殊工作部隊+自衛隊、みたいな感じになっちゃって…結局、巨悪が倒れるどころか途中から存在自体がどこかへ行ってしまうし(ドラ息子が殺害されるのを知るシーンで役目を終えてしまう)なんだろう…煮え切らないんだよなぁ(笑)決して物語に無理があるというわけではないのだけれど…ちょっと広げすぎちゃってそっちにまとめちゃった、といえばそうかもしれないし…あるいは、小説としての原作は展開が異なるらしく、まぁ映画版のほうは「ハリウッド」を意識した結果なんだろうなぁと(汗)

ただ、ヤクザのボスが現役の暴走族をOB(ここではボスの息子…)交えて半グレ的に間接的に利用したり、警察内部に腐敗した刑事がいて権力のパシリとして重宝される感じといい…確かに非現実的に救いのない町ではあるけど、割とありそうな話を織り交ぜてるのは興味深いというか…あるいは、ネットがなかった時代故の「新聞」の発信力を利用したアプローチ、って描写も非常に面白かったね。結果的にこっそり差し替えた新聞記事のことを、牛耳るヤクザにチンコロされてつぶされてしまうのだけれど…。あと、暗に新聞が持つ権力性の描写でもあるのだろうなとも感じたよね…今はネットに伴う新興メディアの台頭で既存の新聞社への疑念や不信故に、かつての力は持ち合わせないようだけれど…。

何より、キャストに「任侠映画」を盛り上げた俳優陣の非常に多いこと…(笑)そして、そういう俳優陣の顔を見ると誰が誰とかすぐにわかってしまう自分の性…梅宮辰夫(典型的な「ヤクザ」)、松方弘樹(自衛隊側)、田中邦衛(特別出演的な感じ)…いや、それ以上に成田三樹夫まで出演していたのは驚いたね…。まぁ、実は仁義なき戦いと日本の首領シリーズしか見ていないのだけれど、あの2つのシリーズはオールスター集めたようなものだし見たらほぼ網羅できるからね…。故に、この映画…基本的には「ヤクザ」と「自衛隊」相手にドンパチしたりする映画、といっても過言ではないかなと…(笑)なお、この映画はドンパチするシーンよりも、斧を用いたシーンのほうがグロテスクなので、ご覧の際はご注意ください…(汗)

ただ、肝心の自衛隊との戦闘シーンについては…何しろ自衛隊が「悪」として描かれているが故に(原作者の森村誠一氏は反戦思考が強いためなのか…)そちらからの協力は一切頂けなかったとのことで…調べてみたら、最後の戦闘シーンはアメリカでの撮影だったらしい…。とはいえ、恐らく反戦(というより反軍隊)思考も感じられる作品に、軍隊的ドンパチをこれでもかと見せてくる感じも…まぁ中々すごいよね(笑)

個人的に一番印象深かったのが、実の父親が脳を侵す伝染病か何かでおかしくなり、村中の人間を殺害してしまうのを目の当たりした上、元工作員でたまたまサバイバル訓練中だった主人公がその父親を(少女を守るために)殺すシーンまで目撃してしまい、半ばトラウマ的記憶喪失に陥り、主人公に(罪の意識も含めて)引き取られることになった少女が、結果的に主人公の父親殺害を刑事に証言して、それまで「お父さん」と呼んでいたのに拒絶するようになった一連の流れ…。

彼女も結局は流れ弾というか、自衛隊から隠れていたトンネルから抜け出して、主人公に会おうとするところで流れ弾に遭遇し殺されてしまうのだけれど…まぁ、とにかく救いがない…(汗)しかも、予知能力というか超能力的なものも先のトラウマの副産物として生まれ、なんというか…ちょっとオカルト的な展開も持ってくるという…。何より、これほど色々ありすぎる役を10代の新人女優が演じてしまうというね…スケールが違う(汗)

ちなみに、この作品で薬師丸ひろ子は高倉健という存在を知り、彼の「非常に腰の低い」姿勢に驚き感激したというエピソードもWikipediaに記載があったね…。Wikiに記載があり、婦人公論のインタビューでの抜粋になるみたいだけど…体調不良で医者からの運動を勧められ、健さんに「ジム通い」を勧められて毎日通ってたら

「ジムに毎日来る奴に、幸せな奴はいないんだ」

ある意味「孤独」を表現する印象もあるけど、向上することにストイック故に満足できない人間の集まり…つまり、幸せな奴ではない、という意味にも取れるし…深いね。いや、健さんが言って薬師丸さんが受け取るからこそ、深いのだろう…故に、「Youtubeを毎日見てるヤツに…」的な表現に代わったりすると、単に引きこもりで友達のいない…みたいな文脈に代わってしまうから、ちょっと切ないというか間抜けな感じもするよね…はい、俺のことです(笑)

とはいえ、見てよかったと思う映画ではあったかな。細かい部分では面白い箇所もいっぱいあるし…。ただ、鬱エンディングを知ってしまったので小説も読もう…ってちょっと思えなくなってしまったのは後悔している…いや、これが物凄く充実している時ならいいんだけど、今は社会復帰の段階で精神力を付けたい時期だから…(笑)

…書いてるときに思ったけど、よく考えればこの作品に出演する俳優陣の多くが既に亡くなられている、ことに気が付いた…そう思うと、ちょっと悲しいよね…。

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