上方落語協会志演義⑤〜繁昌亭の事件簿~【ゴシップ編】
天満天神繁昌亭は、突然現れた寄席小屋です。
「繁昌亭ができる前の時代は落語会しかない」のです。”落語会”と”寄席”は全く違うものです。ある意味、”毎年文化祭で屋台を1回やって売上を出す”のと、”店舗を構えて商売を継続していく”のとの違いがそこには存在します。
突然、屋台を1人でやってたオッサンが、200人のバイトを雇う店舗経営に乗り出すぐらいの大事業です。
落語会しか知らない師匠方、あるいは、そもそも落語会のこともイマイチわかっていない芸能人の師匠方が寄席を運営していきます。
(まあ私も落語会しか知らない噺家の一人でした)
そして落語にそんなに興味のない(とご自身でも言う)噺家もたくさんいた時代です。(※以前、新聞記者の人にそんな人がおるんですか?と聞かれて逆にビックリしました。そんな人はいっぱいいました、、、そんな話はまた今度。)
それぞれの先入観と将来の見通し、商売センス、矜持、生活スタイルが複雑に絡み合い、色んな出来事が起きます。
例えば、
●オープンするなり、いきなり支配人が辞める(参照:上方落語協会志演義〜復活•会長選挙!その②繁昌亭オープン前夜)
●繁昌亭の前に繁昌亭の説明が書いた黒い石碑が建ったが、その裏面の「上方落語協会歴代会長の名前」が一瞬で全部削られる(参照:上方落語協会志演義〜復活•会長選挙!その①)
●「上方落語協会にとって悲願の寄席!」みたいに言いながら、執行部がいきなり「非協会員」を出そうとしてモメる(参照:上方落語協会志演義〜復活•会長選挙!その②繁昌亭オープン前夜)
など、色んな事件が起きました。
過去の記事で書いてないバカバカしい事件=ゴシップ記事を今日はメインに書いていきます。
ゴシップ1【繁昌亭は落語をするところです!】
繁昌亭は寄席であり、開設した時=西暦2006年から新しい寄席文化を1から(?いや、ゼロから)皆で作っていったという状況です。いや、今も作ってる状況と言っても良いかもしれません。
繁昌亭ができるまでは、落語家の仕事は大きく分けて「落語会(落語の仕事)」と「メディアの仕事」と「余興(司会や漫談など)」の3つです。
このうち、余興はお金になるけど「落語ができない(かもしれない)仕事」です。どこか当時は「落語ができる時に落語をしない」のは、「卑しい・不届き」みたいな価値観がありました。
ですから、繁昌亭ができる以前において、単なる漫談をすることは「おねおね」などと呼ばれ、それをする芸人には否定的でした。もちろん、せざるを得なくなった時は自虐的に
「おねおねで降りるわ」
などと言うたりしました。ある意味、ライブの現場では、「落語会至上主義」みたいなとこがありました。もちろん、テレビメディアに出演していることが芸人としてのステータスという価値観も今以上に強く存在はしているのですが…。
多くの落語家はその時は既にメディアに出演しておらず、
バブル期においては「お金は沢山もらえるが、落語でない仕事」が沢山あり、バブル期が終わってからは仕事そのものが減ってる時代ですので、「落語をする」ことは「非常に尊い」時代だったのだと思います。ですから、落語が出来る環境にありながら、落語をしないというのは「けしからん」という風潮になったんだと思います。
しかし寄席は、落語会と違い、本数も多く、バラエティに富むことが大事なので、漫談があっても問題ないです。それに漫談と地噺(ナレーションで進むネタ)の区別はつきにくいですし、長尺のマクラの後の物凄い短いネタと、最後に小噺をした漫談との区別もつきにくいです。その意味で、別に繁昌亭においては漫談であっても問題ないと思われます(実際、先輩がビックリするぐらい時間オーバーして、その時間を後輩が縮める場合、本当に短い漫談をせざるをえなかったりするのですから)。
↓
しかし、繁昌亭ができた時は、「落語会至上主義」ですから、
「繁昌亭は余興やなしに落語をするところです!」
と、総会で、当時の執行部からキツくお達しが出るのです。
(※お達しを言う係は、四代目春団治師匠=当時の春之輔副会長or幹事長)
↓
ここで難しい問題が起きます。
↓
桂文福師匠の「大相撲ほのぼの噺」です。
これは、「相撲の話」や「相撲甚句」「河内音頭」などでお客様を満足させる内容で、東京なら普通に落語の演目としてカウントされますし、今の大阪でも落語にカウントするはずですが、当時の大阪では、これは「漫談」にジャンル分けする人が結構存在してしまったのです。
→いわゆる古典に存在する「地噺」はギリギリOKなのですが、新作の地噺なども大阪は「漫談」にカウントする傾向にありました。それこそ今の時代なら、「落語」にカウントすると思うのですが、当時は微妙な感じでした。
毎年、M-1グランプリで「あれは漫才か?」みたいな論争がよくありますが、そもそも、どうでもええ議論です(笑) エンタメで、お客様が喜んでたらそんでええんで。本格古典落語をして面白くないと言われる方が問題です。
当時は、「これは落語か」という話を議論をするぐらい平和な世界だったのでしょう・・・。このあと、どうなったかと言うと、、、、
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