【大家はどこまで地震対策すれば良い?】新耐震基準でも半数が倒壊した能登半島地震
一級建築士 50代 賃貸物件4棟 資産8,000万円 を運用中の【建基法と不動さん】が、建築士の視点で不動産投資を解説します。
2024年1月1日に石川県能登半島を最大震度7の地震が襲いました。
被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。
新耐震基準でも半数が倒れてしまった。
金沢大学などの現地調査で、1981年6月1日以降に建てられた【新耐震基準】の建物でも半数の木造建築物が倒壊してしまっていることがわかりました。
応急危険度判定という仕組みがあり、大規模な地震の後に、建築士が現地の建物を調査しています。
阪神大震災の時は、新耐震基準の建築物で死者につながるような倒壊したものは少なかったです。なぜ今回は被害が大きくなったのでしょうか?去年にもこの地域で震度6強の大きな地震があったため、繰り返し受ける地震のダメージも影響していると思われます。また地震の揺れ方の影響も考えられます。
これまでの記事で、人が死なない建物にしなければいけない!と何度も言っています。それはなぜかと言えば、大家さんには借主に安全な住居を提供する責任があります。
ボロボロの今にも壊れそうな建物を新たに購入して外見だけ綺麗にして貸すのは、無保険の車を運転するようなものです。
大家さんの責任はどこまでなのか?
しかし、どこまでその責任があるのか?
これまでの地震では、新耐震基準の建物であれば被害はあっても倒壊してしまうケースは少数でした。それが今回の地震では半分が倒れてしまっています。
大家さんとしては、もちろん借主に死んでほしいわけではありませんが、どんな地震にも絶対に耐えられる建築物を提供するにはコストがかかり過ぎます。
現実的には、大きめな地震でも倒れにくく、ある程度安全で、例え裁判になっても負けない内容の建物にしたい。というのが本音のところ。
どんな建物なら裁判に負けないのか?
これは、その時の時勢もあるので、一言では言えません。しかし、今回のように想定を超える規模の地震が起きた段階で、新耐震基準の建物が敗訴リスクはそこまで高くないでしょう。
東日本大地震の時も、液状化被害が起きた建物でも裁判には負けていないケースがありました。想定できる対策をしていて、それを超える内容の自然災害の場合は、責任を問われないということです。
これからも【新耐震基準】で良いのか?
それでは今後も1981年の【新耐震基準】さえ守っていれば良いのでしょうか。
【現在】では、大丈夫だとしても、【今後】建築基準法が改正されたりして新たな基準、想定できる範囲、が変わる可能性があります。
その場合は、その新たな基準や考え方で判断しなければならなくなる可能性はあります。例えば2012年6月1日(平成12年)の現行法基準にするのが一般的な考え方に変わってくる場合は、それに合わせた建物にする必要があります。
建物を購入した時期って大切かも?
個人的に注意しているのが、大家として建物を購入した時期です。
物件を買った時に世の中がどこまで安全を求めているか?それによって敗訴するリスクは変わると思います。
2024年1月7日時点では、建築基準法は改正されていないため、今回の地震は想定を超える内容と言えるでしょう。そのため新耐震基準の建物であれば、敗訴リスクは高くないとイメージできます。
事実を知った時期を意識してみる
しかし今後どこかの時点で法改正などがあった場合は違います。
例えば、2025年に現行法基準(2012年)にしなければならないと改正があった場合は、それ以降に物件を購入する場合は注意が必要です。
法律は公開された情報のため、2012年の基準にしないといけないのは当然に知ることができますよね?となります。その場合に新耐震基準の建物を新たに買って賃貸住宅として貸し出すのは、大家さんの責任を果たしていない。と判断される可能性があります。
あの地主だってボロい建物貸してるやん!
その地主さんは、はるか昔に自分で賃貸用に建てて貸し出しています。だから、その時点では合法です。
でもボロ大家さんは、物件を購入する時期で考えないとリスクがあります。あなたが買う時点では知ることができるでしょ!って言われたらその通りです。
みんなで渡れば怖くないは間違いです。
みんなで渡ってもみんな死にます。
赤信号はしっかり立ち止まってください。
不動産投資をしているひとは、結構赤信号を渡っています。なかなか車が来ないので危険に気づかないだけなんですけどね。
リスクヘッジは重要です!
正直裁判で負けるかどうかはわかりません。しかし、敗訴リスクは少ない方が良いのです。FIREしたいのに、違う意味でファイアしないように、しっかりと見極めて行くことも大家さんには必要です。
そもそも裁判になること自体がかなりハードです。時間も体力も必要です。裁判以外に入居者の敷金返還、その後の保証対応や各入居者の利害関係者との調整などが一気にきます。
同じ地域にすべての物件を集めておくのはリスクの高い行為と考えています。